大阪大学 理系 | 2017年大学入試数学

      2017/07/13

●2017年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は大阪大学(理系)です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2017年 大学入試数学の評価を書いていきます。

入試シーズン中は、コメントの返信が大幅に遅れることがあります。ご了承ください。

 

2017年大学入試(国公立)シリーズ。
大阪大学(理系)です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。


また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。

※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。





大阪大学(理系)
(試験時間150分、5問、記述式)

1.全体総評~適度に融合された創作問題で演習量が反映される~

難易度は、昨年とほぼ変化なしです。数学IIIの割合が比較的高いですが、適度に融合されており、全体的によく練られているセットで、きちんと勉強した人が手堅く合格点を確保できるセットです。第5問の立体の体積の問題は2012年の立体と考え方が類似。本問の方が分量、難易度ともに上です。

なお、微分法からはまったく出題がありませんでした。


試験時間150分に対し、
標準回答時間は150分。

2016年:160分
2015年:165分
2014年:140分
2013年:145分
2012年:135分
2011年:170分
2010年:135分

だいたい制限時間前後ですので、阪大理系数学は適量と言えます。

 

2.合格ライン

第1問は最易問。必ず抑えたい。
第2問はキー問題。(3)を(2)に活かせるかどうか。
第3問もキー問題。(2)で(1)をうまく使えれば行ける。
第4問は方針は立ちやすい外、計算がかなり煩雑。
第5問は過去問研究度合いで差がつくと思われますが、方針がたっても計算はうまくやらないと膨れる。



第1問と第4問をなんとか確保。第2問、第3問のうち片方にくらいついて、第5問の(1)まで出来ればOKでしょう。2完3半で60%強ぐらいでしょうか。(医学部以外)


3.各問の難易度

☆第1問・・・【式と曲線+図形と式】双曲線の接線との交点(B,15分、Lv.1)

双曲線上の3点について、接線と直線との交点をどんどん出し、それが一直線上にあることを示す問題。3点のうち2点は非常に単純な点なので、交点を出す計算もほとんど膨れません。一直線上は、ベクトルで実数倍、あるいは傾きが一致で示せばOKでしょう。

 

 

※KATSUYAの解いた感想
特にコメントなし。ただ交点を計算するだけ。(2)はベクトルで実数倍を証明。傾きだと、存在しない場合とかに気を配るからベクトルの方が個人的には好き。解答時間8分。

 

☆第2問・・・【複素数平面+確率】1の5乗根、絶対値と確率(C、30分、Lv.2)

硬貨の裏表で、1の5乗根それぞれを足すか足さないかを決めます。こちら、うまく練られた良問で、適度に誘導もあるので差が付いたと思われます。

(1)は5乗根の因数分解の利用で瞬殺できます。

Principle Piece III-103

 1のn乗根絡みの方程式の活用式
 [1] 1+z+・・・z^{n-1}=0  [2] zz(バー)=1 など

(拙著シリーズ(白)数学III 複素数平面 p.27)

問題自体はかなり簡単ですが、実はこれが(3)にいきてくるので、わざと聞いているのでしょう。

(2)は、zとz^4の位置関係を書くとすぐに分かりますが、足すと2cos72°という実数になります。cos72°は必要ありません。cos60°=1/2より小さいことを確認すれば証明完了です。

(3)は、(1)と(2)がヒントになっています。まず(2)で5つのうち、係数が1のものが何個あるかで場合分けをすればよいと気づきたいところ。5つとも0、1の場合は0でOK。4つが0の場合は1つだけ残りますので、不適。ここで(1)です。全て足すと0になることから、「4つが1の場合」と「4つが0の場合」は状況が同じであると気づけば、方針は立ちやすいです。

ポイントは、「3個が0、2個が1の場合」です。(2)で、a1とa4なら|w|<1が分かりました。したがって回転対称性から、2つ離れているものを足せば大丈夫だと分かります。隣り合う場合はどうでしょう。これも回転対称性を利用し、計算しやすいa2とa3が1の場合でやれば、ー2cos144°<ー2cos120°=ー1となり、絶対値が1を超えることが分かります。これで、「3個が0、2個が1の場合」も終わりで、その逆も同じだけあるはずですね。

 

 

※KATSUYAの解いた感想
設定が無理矢理な印象をまず受ける。(1)はただの5乗根関連の問題。(2)も式を出して上記評価をして終了。(3)はどうやる?(2)のようなものの他に何があるか、ってことやな。(2)に倣って、0と1の数で分けてみるか。5個のときはOK。4個が0だとダメ。4個が1のときは、、、あ、足したらやから一緒なんか。(1)がある理由を理解する。じゃあと、1が2個のときだけやな。(2)みたいに2つ離れてないとダメなはず。隣り合う場合は、、、共役なところがいいからa2とa3で証明。変な設定だと思ったが、なかなか良問。解答時間18分。

☆第3問・・・【整数】√7の有理数近似、不等式を満たす自然数解(BC、30分、Lv.2)

√7という無理数を、有理数で近似する問題ですが、こちらも(1)の誘導があることで適度に差がつくと思われます。

(1)は、(A)を評価し、その後b≧2を利用するだけでできます。√7も与えられていますので、ラク。(2)は、(A)の式に加え、(1)で証明した式の辺々を掛け算すると見えてきます。和と差なので、かけて√7を7にできますし、ここは思いついて欲しいところですが、どうだったでしょうか

b^2・|a^2-7b^2|<12 という式が出ると思います。|a^2-7b^2|が整数であることを利用し、1以上(0でさえなければOK)であることが分かれば、bの範囲が絞れます。0だとすると√7が無理数であることに矛盾します。ここで用いるわけですね。

自然数(0でない整数の絶対値)なので1以上、という極めて当たりまえの事実なだけに、気づきにくいですね。なお、京大(文理共通)も今年、この事実を用いて範囲を絞る問題が出ました。

 Principle Piece A-65

 整数問題は候補を絞って全調査

(拙著シリーズ(白)数学A 整数 p.45)


普段から、いろいろな観点で絞れないかどうかを考えるようにしましょう。

※KATSUYAの解いた感想
近似系ね・(1)は√7もあるし、ただ評価するだけ。ここまで細かくはいらない気がするけど(2)は(1)がわざわざあるので、これを用いるだろうと判断。最初の式とかけるか。√7のままはジャマやし。途中からなぜかa/bをb/aと逆に書くという凡ミスを犯し、b^6が出てくる。あれ、こんな変な式にはならないはず・・・見直すが、くだらないミスほど見つからない^^; やっと気づき、修正して上記方針で絞って終了。そんなにかからないハズやのにかなりロスしてしまった。 解答時間22分。

 

第4問・・・【図形と式&積分】不等式条件下での最大・最小、面積(BC、35分、Lv.2)

数IIの関数問題で、(1)(2)は領域問題に帰着できます。(3)はただの面積で独立しています。やることは極めてパターンに当てはまっていますが、領域の吟味はかなり精密に行う必要があり、、特に(2)は図をかなり大きく正確に書いておかないと、非常にきわどい部分を見落とします。

まず、この問題を領域問題であると見抜くための原則です。

Principle Piece II-58

 不等式条件が多い時は領域図示。領域内と共有点を持つ条件

(拙著シリーズ(白) 数学II 図形と式 p.59-61)

条件をbc平面上で図示するといいでしょう。領域は割と煩雑で、(1)でも調査するのは見づらいです。(2)になるともtっと見づらいです。放物線なので、端点とともに接点も候補になります。接点は領域内の点になりますので、これを見落とさないように気をつけましょう。

なお、K塾さんの解答では秀逸な変数変換によって領域がかなり見やすくなっていますが、なんでその式、係数で変数変換するの?ってぐらい秀逸で、これを思いつくのは難しいかと。

Principle Piece II-59

 領域内の最大・最小

 [1] 直線で囲まれているなら端点(交点)

   [2] 曲線が入っている場合は接点にも注意

(拙著シリーズ(白) 数学II 図形と式 p.61-62)

(3)は(2)と関係ないです。q=6と分かったので、bだけの式にできます。2解をα、βとおいて6分の公式を使えばOK.bも消えますので、面積は数値で出ます。

 

Principle Piece II-117

 放物線とx軸なら6分の公式の活用

(拙著シリーズ(白) 数学II 積分法 p.29)


※ちなみに、学校で教えないのかどうかわかりませんが、数学を自分で勉強している学生さんにはこの「6分の公式」を知らない人が多くいます。知っている人からしたら、驚きを禁じざるを得ないと思います。やはり独学では、どれが重要でベンリなのかを見極めるのは難しいようですね。

※KATSUYAの解いた感想
数IIの問題かな。不等式やから領域やな。(1)(2)は両方領域の最大・最小で最初は直線、次が放物線か。領域は図示してみると思ったより複雑。(2)はキワどいな。端点も全調べるか。接点も調べて領域内があった。これ、丁寧に領域欠かないと見落とすぞ。(3)は(2)と関係ないな。6分の公式で終了。解答時間25分。

 

☆第5問・・・【積分法の応用】空間図形、回転放物面と円柱の共通部分の体積(C、40分、Lv.3)

最後は空間図形で体積を求める問題で、本格的で難しいです。2012年にも同じような考え方で出させる問題が出ていますし、東大や東工大でも数回、出題があります。類似問題の研究で差がついたと言えます。

立体自体は単純なので、断面図はすぐに分かるかと思います、半径√t の円と、半径1の円の重なった部分です。円の一部を求める場合において、怪しげな変数変換(t=cosθ、z=1-cosθなどが多い)がある場合はは、こちらの2点セットの原則を駆使します。


Principle Piece III-75

 円の一部の面積を求めるには、中心角の設定が必要

(拙著シリーズ(白) 数学III 積分法の応用 p.33)

Principle Piece III-76

 t=cosθなどが与えられている場合は、θがどこに現れるか探す

 中心と中心、中心と交点などを結んでみる

(拙著シリーズ(白) 数学III 積分法の応用 p.33)


今回はt=(2cosθ)^2 ということで、過去の類題よりも複雑ですが、どこかにθが現れるように設定してあるはずだと信じて考えていきましょう。θが見つかれば、断面積は出ます。この断面積の整理の仕方は様々で、答は1通りではありません。(θでおくか2θでおくか)

(2)はそれを積分するだけですがdtをdθに置換する際に、さらに8sinθcosθがかかります。次数がかなり上がりますので、面積の段階で角度を上げて次数を下げておき、2θで統一したほうがいいでしょう。

三角関数の積分計算は、角度を上げて次数を下げましょう。半角、積→和を駆使します。

Principle Piece III-50

 三角関数の積分は角度を上げて次数を1次に下げてから

(拙著シリーズ(白) 数学III 積分法 p.14-16)

 

いずれにしても計算量は比較的多く、面積は出せてもうまく処理しないと最後まではたどり着けないかもしれません。未来の受験生へのプレゼント良問になったことでしょう。

 

※KATSUYAの解いた感想
問題文より前に(1)の設定を見て、「あー、このタイプか」と確信。パターンやから原則を使えばやることは割とすぐわかるけど、計算が結構ミスしやすい。設定を確認し、2円の交わりのθを探す。だいたいどっちかの扇形の中心角。面積はだし終わる。不安なのでθ=π/2などを題入試て検算。積分計算は案の定一度ミス。3-π/4とか出て、感覚よりかなり小さい気がする。もうちょいあるやろ。計算し直したが、ちょびっと増えたぐらい。うーん、こんなもんなんかな。解答時間32分。K塾、S台と一致しているので、多分OKかと。

 

4.対策

阪大は良問ぞろいです。融合型が多く、分野はまんべんなく出ます。中でも確率、整数、微積は頻出なので、重点演習が必要。昔の傾向からすると、複素数平面は東大や京大に比べると頻度は少ないかもしれませんが、出てないわけではないので油断はできません。

阪大は微積で空間図形のことが多いので、空間図形の演習も必要です。図形的な感覚よりも、数式処理で考察できることを重視しましょう。感覚だけでは、積分計算に持ち込めませんので。

原則の習得は早めに終わらせ、早い段階で入試演習へ移行したいところです。阪大数学は下記のように単科長年タイプの本もありますので、傾向つかむ上でも早めに購入しておきましょう。本格的にやるのは秋以降でもOK。先に入試標準レベルまでは最低限行い、できれば仕上げ段階まで行いたいところです。

 

 

 

量をこなす演習:じっくり演習=7:3ぐらいでしょう。

以上です^^

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■関連する拙著シリーズ■

★ 数学A 集合と場合の数 (第2問)

★ 数学A 確率 (第2問)

★ 数学A 整数 (第3問)

★ 数学II 図形と式 (第4問)

★ 数学II 積分 (第4問)

★ 数学III 式と曲線 (第1問)

★ 数学B 複素数平面 (第2問)

★ 数学III 積分法 (第5問)

★ 数学III 積分法の応用 (第5問)

★ 計算0.9【IAIIB】 (計算練習帳です^^)

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