東京大学 理系 | 2018年大学入試数学

      2022/05/29

●2018年度大学入試数学評価を書いていきます。今回東京大学(理系)です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2018年 大学入試数学の評価を書いていきます。

入試シーズン中は、コメントの返信が大幅に遅れることがあります。ご了承ください。未返信のものがこちらで分かるように一時的に承認しておりませんが、返信とともに承認いたします。

 

2018年大学入試(国公立)シリーズ。

東京大学(理系)です。

やっぱり最初はここですね^^

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。



また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。

※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。

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YouTube開設しました。 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を動画にしてみようと思います。





東京大学(理系)
(試験時間150分、6問、記述式)

1.全体総評~反発難化で質量ともに例年通り~

昨年からは反発し、例年通りの難易度です。後半の第5、6問は手がつけにくく、前半4つも罠が多めに用意されていますので、取れたと思って誘惑に負けて解答を見た受験生が、意外と出来てなくて凹んでしまうセットと言えそうです。

(8割ほど仕上げた下書きが消えてしまい、今年は更新が遅れました・・・。)



試験時間150分に対し、
標準回答時間は195分。

2017年:165分

2016年:205分

2015年:215分

2014年:205分

2013年:205分

2012年:205分

2011年:195分

2010年:200分

2.合格ライン

第1問は全体セットを考えると落とせない。
第2問は細かい部分の減点覚悟。(2)は発想力が必要で差がつくか。
第3問はキー問題。予備校にもミスっているものがあったぐらい(2/26 3:32時点)だが、場合分けが必要なことに気づいたか。
第4問は文理共通で最易問なのでおさえる。
第5問は複素数平面だが、かなり複合的で難しい。
第6問は立体。設定は単純だが、精度の高い考察力がないと(2)以降は厳しい。

第1、4問はおさえて40点。第2問で半分10点、第5、6問はあわせて10点ぐらいでも仕方ないか。やはり第3問が出来るかどうかがキーでしょう。

理III以外は6割(72点)ぐらいがボーダー。理IIIは第5、6問で20点ぐらい欲しい。7割(84点)ぐらいでしょうか。

 

3.各問の難易度

第1問・・・【極限+微分法の応用】増減表の作成と極限(B,20分、Lv.1)

ただの増減表の作成と極限で、東大にしてはかなり簡単です。

微分した式の分子は因数分解できます。sin2x-2xの符号が負になることは、ここだけもう一度微分すればわかりますし、東大受験者なら気付く人が多数でしょう。

微分は繰り返し行うことも効果的ですからね^^

Principle Piece III-38

 微分しても分からなければ、もう1回微分してみる

(拙著シリーズ(白) 数学III 微分法の応用 p.41-42)


極限はグラフの様子をつかむために必要なだけで、計算テクは特に必要ありません。

KATSUYAの解答時間8分。

第2問・・・【整数】二項係数の式が整数になる条件(BC、30分、Lv.2)

二項係数を含む式で、整数問題と絡んでいます。

(1)は比を計算しますが、多くが約分できます。気をつけたいのが、n(n+1)が偶数のため、2(2n+1)と一緒だと約分可能であることです。ここでひっかかると(1)で減点になります。

また、既約分数であることを示すには、2n+1とn、2n+1とn+1が互いに素になることも示します。ユークリッドでできますね^^

(2)は、文系の誘導を自分で編み出してやるか、(1)の式を用いるかです。私は前者でやりました。比の形を見たので、やはりこちらの利用が最初に思いつきましたね。

Principle Piece A-38

 確率の最大値 p_n+1/p_nと1の大小比較

(拙著シリーズ(白) 数学A 確率 p.27)

これにより、すぐに減少数列になることがわかりますので、1を下回るまでやればそこで終わりです。「早々に1を下回りそうだ」と気付くことが出来ないと思い浮かばない可能性がありますが、大小比較とn=3,4あたりで1を下回る望みが薄くないことは分かるかと。

 

※KATSUYAの解答時間15分。

 

第3問・・・【ベクトル+軌跡+面積+極限】動点の存在領域の面積と極限(BC、30分、Lv.2)

ベクトルと軌跡、その面積や極限を題材としてます。動く2点P,Qで定められた点Rがどこを動くかですが、P,Qが独立に動くことにより、こちらの原則を用いることが出来ます。文字でも点でも、独立に動けるなら使える原則。

反転に限らず、変換にともなう軌跡はこちらの原則で処理できます。本問は式も単純なので、気づくでしょう。

ULTIMATE Principle Piece

 2つが動く → 1つを固定する

 

1/kOPだけを見ると、軌跡はy=kx^2 とわかります。軌跡を求めたいときは、媒介変数の消去が基本。

Principle Piece II-52

 媒介変数表示 → 媒介変数を消去

(拙著シリーズ(白) 数学II 図形と式 p.48)

 

一方、kOQベクトルで線分OAをk倍した線分上を動くので、Rは頂点がこの線分上にあるように放物線をスライドさせればOKです。

あとはk→∞とk→0のときを考えればいいのですが、ここで落とし穴があります。予備校でもミスっている解答が見受けられました(2/26 3:32時点)ので、気づかなかった人も多いかと。

k→∞のときは、スライド幅が長いですが、放物線の開きは小さいので、真ん中に長方形ができます。逆にkが小さいと、スライド幅は短く、放物線の開きが大きいので、真ん中に穴が出来ます。これに気づかないと、同じ式で片付けてしまうというわけです。

実は私も最初やってしまっていましたが、k→0で面積が∞になることに大きな違和感を覚えたため、k=0.1で少し正確に書いてみたところで気づきました。具体的な数字で試してみるというのは、とても重要です。


※KATSUYA解答時間20分。途中で気づけたものの、場合分けがあるから時間はかかりました。

 

第4問・・・【微分法(II)+図形と式】3次関数と解の条件(B、20分、Lv.2)

本セット最易問で、文理共通です。ここが取れなかったら、理系は「もう他の科目で稼いでください」というレベルで落とせません。

3次関数の解の話です。定数も分離されており、a>0で極値も保証されていますので、かなり簡単に視覚化できます。

Principle Piece II-108

 解の個数を調べるときは定数分離で視覚化

(拙著シリーズ(白) 数学II 微分法(2冊目) p.4-5)

 

条件2も、そのままy=bをゆっくりスライドさせればすぐに分かると思いますが、b<0であり、かつ極値をとるx=aをはさんで、1<β<a<γ のようにならないとダメなので、1<aも出ます。あとは、f(1)>bですね^^

境界線で登場する3次関数と2次関数は、a=1で接することだけ注意して領域を書きましょう。領域では上下関係が大事なので、交点を出すのは必須ですね。

 

※KATSUYAの解答時間9分これはラクかな。2つの曲線が接するようにうまく書けずに、ムダにロス。

第5問・・・【複素数平面】円と接線、対称点、1次変換と軌跡など(C、45分、Lv.3)

複素数平面と図形が絡んだ問題です。2016年から連続で複素数平面の出題があります。そして、3年連続で円絡みとなりました。

今年はかなり難易度の高い問題で原則も使いにくく、対策をしてきた人も成果が出たかどうか怪しいレベルです。式的な処理だけでなく、図形的な処理も合わせていかないと、(1)も全くできずにほぼ全滅に近いでしょう。

まず、AQ、OPがともに接線に垂直であることから、AQベクトルを表す複素数が、OPベクトルの実数倍(=kz)で表せることに気づけるかどうか、そして、この「k:AQの長さ」を出すためにzの偏角を一時的に導入することです。

偏角θを導入すると、いろいろな長さが出ます。「cosθ」が残りますが、これをなんとかzに戻さないといけません。cosθが実部なので、z+zバー/2 で表せること、zバー=1/z などで直せたかどうか。典型的な式変形とは言えず、ここもネックでしょう。

逆にQが表せれば、(1)は全て抑えられますので、ここが出来た人はかなり大きなアドバンテージです。第3問で場合分け忘れても余裕で帳消しです。

(2)は(1)の最終結果を用います。w+wバーの式があるので、w=x+yiという成分表示がいいと思います。絶対値がついているので2乗でもいいのでは、と思いそうですが、w+wバーの式を見たら成分表示する方が優先と考えてOK。

変形すると放物線になります。放物線などの2次曲線は、明らかにxy表記の方が見やすいですから、結果論的にもx、y表示でよかったと言えます。

あとは範囲です。wバー/w=z^2 という結果がありますので、zの偏角とwの偏角は符号だけが違うとわかります。よって、zの範囲と反対側がwの存在範囲です。

全体的にかなり厳しい問題ですね。本セット最難問でしょうか。


※KATSUYAの解答時間31分。10分ぐらい、zのまま頑張ろうとして諦め、ダメ元でθ等を導入しまくったことが功を奏したみたいです^^;

 

第6問・・・【積分法の応用】空間座標、球の通過領域の体積、共有条件など(C、50分、Lv.MAX)

第5問にならび、最後は骨のある空間図形を持ってきています。東大の空間はいつも難易度が高いです。

(1)はなんとか行けるかと思います。y=tで切断してV1が現れるのはーr≧t≧r、V3が現れるのは1-r≧t≧1+r ですので、共通範囲を取るだけです。

断面図はどうでしょうか。V1の断面、V3の断面ともに運動場トラック型になりますが、どちらの円が大きいかで、若干形が違います。境目はもちろん、真ん中t=1/2です。なお、ここまで精密な部分が出来なくても、(2)以降の計算はなんとかなりますので、片方書ければ部分点もらったと思ってOKとしましょう。

(2)は難しいと思います。(1)のy=tの断面図に、V2の断面図も書きます。V2は実はラクで、点(1,0)を中心にもつ半径「r」の円です。これが入るためには、(1)で書いた共通部分のうち、(1、0)から最も遠いところが半径r以下の距離であればOKとなります。 1-r≦t≦r を満たす全ての「t」で、これが満たされないとダメです。特定の定義域での不等式条件なので、最大・最小の問題となります。このタイミングで数学Iの原則を持ってくるあたり、東大の難しさを感じます。

Principle Piece I-31

 制限有りの不等式成立条件は最大・最小の問題と同じ

(拙著シリーズ(白) 数学I 2次関数 p.38)

 

(3)は(2)の条件を使っていいのであれば、単独で答えられます。和集合の式にあてはめつつ、(2)の事実を用いれば3Sー2Tとすぐにわかります。

最後はS,Tを求めて終わりです。Sは瞬殺ですが、Tが難しいですかね。V1の一部は円柱面y^2+z^2=1、V2の一部は円柱面(x-1)^2+z^2=1 で囲まれます。多く現れる文字はzなので、z=tで切断するのがよさそうです。

 

時間的にも難易度的にもここまで辿り付けた人はほとんどいないかと思います。

 

 

※KATSUYA解答時間29分。複素数平面よりは楽やったかな。(2)で少し考えた。(4)は比較的よく見る断面なので、z=tでの切断はすぐに思いついた。

 

4.対策

頻出分野は確率、整数、微積。東大は複素数平面が昔好きだったので、今後はこれに仲間入りするでしょうから、6問中4問は分野が確定していると思えば、他の大学より勉強しやすいです。(今年は確率が出ず)ただし、原則習得はもちろんのこと、入試演習も数多くこなしつつ、質の高い問題演習は解説や別解の研究もして、本質的な理解と幅広い視点を養うことが求められます。

なお、今年はここ数年ではかなり簡単な方なので、今年レベルでの対策は少々危険です。早い段階で解かなくてもいいので数年分見て、難易度(到達しなければならないレベル)を肌で感じておきましょう。

お尋ね者の大学なので、対策本もばっちりあります。単科長年タイプは25年分、全科目タイプでも7年分です。

東大の数学は良問が多く、解法研究の格好の的にされていますので、他にもたくさん本があります。

 

量をこなす演習:じっくり演習=6:4ぐらいでしょう。

以上です^^

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