体系数学(教学社)の難易度、レベルは?使い方や勉強法など
「体系数学」は、老舗的な位置づけを誇るあの「体系物理」の数学バージョンで、2012年頃から他の科目からも同シリーズが発売されていましたが、ようやく数学もIA・IIBが同時に2017年10月に発売されました。
今回は、この「体系数学」について、難易度などを見ていきたいと思います。
1.体系数学 はどんな参考書?
「体系数学」は、以下のような参考書です。書店の参考書コーナーに行ったことのある人であれば目に留まる可能性が高い、「シンプル」なオレンジ(?)色をした本です。
なお、数研出版にも体系数学という参考書があります。こちらは中高一貫の私立などがよく使う教科書やワークですね。
2.問題数、レベル、解説の詳しさなど
体系数学がどのような参考書であるのかを知るために、基本的なデータを見てみましょう。本書のタイプは、入試標準演習~仕上げタイプです。
2.(1) 体系数学の問題数
体系数学の問題数は、以下のようになっています。IA・IIBで分かれているため、入試用の問題集としては多めです。
体系数学I・A・・・167題
体系数学II・B・・・186題
2.(2) 体系数学のレベル
本書のレベルは、入試基礎レベルが10%、中堅大レベルが25%、難関大レベルが40%、超難関大が25%ぐらいの配分と考えていいでしょう。単元ごとに、はじめの数問(1、2問だけかな)は基礎的なものが多いですが、後半につれて難しいものが多くなります。
標準演習タイプの他の問題集に比べると難しいものがあり、他の仕上げレベルに比べると簡単なものも含まれているという印象です。個人的には、「新・数学スタンダード演習」と似ていると感じます。
2.(3) 体系数学の特徴~名前の通り体系的な理解がしやすい~
体系数学の問題数が同タイプの他の問題集に比べて多いのは、一つのテーマについて1問で終わらせるのではなく、複数問用意されていることです。これによって、そのテーマをまさに「体系的に」理解しようという狙いがあるものと思われます。
また、体系的な理解のためのオリジナル問題も適所に配置されています。入試問題だけでは「その問題への解法」で終わってしまうようなものも、このオリジナル問題を解くことでつながりが分かるようになっています。個人的には、このオリジナル問題が秀逸で、配置場所やその問題の質などがかなりテーマにマッチしている印象です。
※著者に駿台予備校の先生方がおられます。オリジナル問題は、この予備校のテキストなどを作成する際に考案した問題なのかもしれません。
もう一つの特徴は、公式の証明を怠らずにしているところです。例えば、点と直線の距離公式や面積が積分で出せる理由など、おろそかにしがちな公式の証明を問題として収録しています。(なお、点と直線の距離公式の証明は阪大が出しています)。
2.(4) 体系数学 の解説
「体系数学」の解説については普通です。解答の最初に着眼、そのあとに答案という順番で、その後に解説や背景・類題などの記述は特にありません。しかし、本書に限っては、これで解説が不親切という意味にはなりません。
背景の理解のための問題は全てオリジナル問題として収録してあるということです。問題数が他のタイプに比べて多いのは、そのためであると考えていいでしょう。
解説が詳しい問題集は、問題は少ないですが、解説に類題があったりしますね。本書の構成は、類題も全て問題に載せているため、1問1問の解説自体は短いということです。
3.体系数学 の使い方、勉強法
体系数学 の使い方の前に、どのような人が使うと効果が上がるのかを見ておきましょう。
3.(1) オススメ対象
入試数学の掌握 のオススメ対象については、下記にあてはまる方です。上に書いてあるほうが優先です。
- 難関大以上の理系志望で、数学では合格点以上の水準を目指している。もしくは超難関大志望(文理共通)である。
- 青チャートなどで原則を7~8割以上習得している。
- 模試での数学の偏差値が60以上である。
- 入試基礎レベルを6割以上習得済みである。
- 入試標準演習タイプ、仕上げタイプを別々に2冊こなすのはきついと思っている。
取り上げている問題のレベルが仕上げレベルにまで達していますので、難関大以上が前提となります。また、難関大の場合は合格点以上を望める演習が出来ます。文系の学生さんは、超難関大志望でない限りは手を出さなくてもいいかと思われます。
原則の習得はある程度必要です。各単元に基礎的な問題はありますが、ちょっとだけです。既に習得している原則が、他のどんな問題に応用できるのかが、オリジナル問題などを通じて分かるようになると思われます。
上記の通り、問題の背景となるための問題も、オリジナル問題として収録されています。問題間のつながりは問題のタイトルからある程度は判断できますが、明記されているわけではありません。自らつながりを理解していくために必要な偏差値として、60以上としました。
3.(2) 体系数学 の使い方(勉強法)、購入時期
入試数学の掌握は問題集型の構造をとっていますが、テーマごとのオリジナル問題などの配置が秀逸なため、奇数番号で1巡、偶数番号で2巡といういわゆる「飛ばして1巡」の使い方は個人的にはオススメしません。
本問題集に取り組む場合は、同じタイトルの問題は、その日に全てこなすのがいいと思います。例えば「2変数関数の最大・最小①、②、③」は全て1日でやる(連続して演習する)といった感じです。このように一気に演習することで、大事なテーマについて深く理解をすることが出来ます。
「奇数番号→偶数番号」では、テーマごとにステップを踏めるように配置されている本問題集の利点を活かせません。
購入時期については、今すぐ(2017年10月22日現在)と言いたいところです。出版が10月中旬なので2017年はこれ以上早く買えませんが、入試標準レベル以上で、問題数が比較的多く、さらに「奇数番号だけやって1巡するのに不向き」という特徴まで持っていますので、早めに入手してコツコツやるしかないと思います。
1日2テーマぐらいのペース(5題ぐらいのはず)でいくと2ヶ月半ぐらい、3テーマぐらいでいくと(2ヶ月弱)ぐらいです。12月以降はセンターに時間をとられますので、やるなら11月に演習できるように手にいれておきたいですね。
4.まとめ~オリジナル問題の活用と「体系」的理解がカギ~
体系数学(教学社) について、まとめておきます。
- 「体系物理」でお馴染みの体系シリーズの数学バージョンである。
- 問題レベルの幅は広く、入試標準演習、仕上げレベルの両方を兼ね備えている。標準タイプと仕上げタイプの2冊を買うことに迷っている人にはオススメ。
- 入試問題を体系的に理解するためのオリジナル問題が用意されており、これが秀逸。
- テーマごとに一気に演習する方が体系的に理解できるが、「飛ばして1巡」には不向き。
オリジナル問題から実際に扱われた入試問題へのつながりを「体系的に」理解できるかどうかが本書マスターのカギになりそうですね。
※数学IIIが出るのかどうか分かりませんが、早く出て欲しいですね。