大阪公立大学 理系数学 講評| 2024年度大学入試数学

      2024/04/19

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●2024年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は大阪公立大学(理系)です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2024年 大学入試数学の評価を書いていきます。

2024年大学入試(国公立)シリーズ。
大阪公立大学(理系)です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。


解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。

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大阪公立大学 理系
(全4問、120分、記述式)

1.全体総評~相変わらず厳しい~

昨年並みです。昨年同様に、どの問題も発想力が必要であったり、計算がある程度必要であったりと、最後までたどり着くのは結構難しめ。傾向もいつも通りです。小問によって刻まれていながら、どの小問がをどこで利用するのか分かりにくい問題が多いです。

分野的には数III(C)から3問+整数という構成です。確率がないことを除けば、2022年とほぼ同じ感じでした。時間を多めに使って、入試演習問題としては解く価値のある問題が多いですが、試験では出くわしたくない問題ですね。

個人的には、旧7帝大理系と比べてもまったく遜色ない難易度だと思います。

試験時間120分に対し、標準回答時間は155分。発想寄りのもの、計算量が多いものがあり、キツイ。

2023年:155分

2022年:150分

 

2.合格ライン

第1問は(1)(2)は解答したいが、(2)がキー問題。不等式を自分でもう一つ必要なのでそこが思いつくかどうか。(3)はつながりが見えにくく、おそらく正答率は低い。

第2問は厳しく、(1)止まりになるかも。もし(2)を根気良く計算で切れば(3)(4)の方が全然軽い。

第3問は発想はあまり必要はなく、計算量もそこそこで唯一完答出来る問題。本セットを考えると完答したいが、実質本問の出来が合否を分けるかも。

第4問は(2)の1.までは取りたい。2.はたいしたことはないが、意外と思いつきにくいかも。3.は本セット最難問で捨ててOK。

第1問(1)、第2問(1)、第3問をなんとか完答、第4問(2)1.までおさえたい。これで半分弱ぐらいだと思われるのでなんとか第1問の(2)か、第2問(2)ぐらいを残り時間で手をつけたい。55%ぐらいでしょうか。昨年同様難しめ。

3.各問の難易度

☆第1問【微積分総合+極限】不等式の証明、定積分の極限、和の極限(B,30分、Lv.2)

今年はがっつり最初に数IIIの問題です。微積分、極限で単元は2022年と同じ。(2)は自分で不等式を導入する必要があり、(3)は(2)とは直接関係なく、それまでの何を使えばいいかが見えにくいので、発想寄りで結構正答率は低いでしょう。

(1)は差を取って微分するだけです。

 ULTIMATE Principle Piece 

 不等式の証明は差を取って微分する

(詳細は拙著シリーズ 数学II 微分法 p.48 参照)

三角、指数、対数と多項式比較のパターンは、数回微分すると単調性が見えやすいです。今回も2回微分すると単調増加が見えるので、そこから戻っていきましょう。

 Principle Piece 

 三角関数・指数関数絡みの不等式 → 微分と単調性の証明を繰り返す

(詳細は拙著シリーズ 数学III 微分法2 p.30 参照)

 

 

(2)は(1)を利用してΣ計算に持ち込むのは見えると思いますが、下からしか評価されてないので、sinxを上からも評価します。そこで、sinx≦xが思いつくかどうかです。超有名なので、出てきやすいとは思いますが、自分で持ち出す必要があるので差はつくと思います。

x-x^2/2≦sinx≦x の不等式を利用してx→k/nとしてΣ取れば、ハサミうちで終わりです。

 

(3)は何を利用すればいいのかわからず試行錯誤したかもしれません(その場合は飛ばすのが吉)が、実は(2)の結果は使わず、(2)を解くのに用意したx-x^2/2≦sinx≦xさえ使えば、はさみうちできます。sinxと√xの組み合わせなので、挟めばたしかに両端はともにx^●の形をしているて、積分可能ですね。

「はさみうちで求めるのでは?」と気づかないと厳しいかもですが、気づけば、定積分絡みで不等式を作るときの原則を意識します。

 Principle Piece 

 定積分絡みの不等式

 → 真ん中の関数との大小関係がすぐにわかり、積分可能な関数を探す

(詳細は拙著シリーズ 数学III 数列 p.68 参照)

 

両端は積分できるので、あとはそれにn^αをかけて収束する条件を求めます。nが少しでも分母に残れば0、ぴったし無くなれば0でない定数になるので、最後は場合分けが必要です。

なお、こちらの原則を知っていると、α=3/2だろうと予想できます。

 Principle Piece 

 ペアの項で置き換えてn^●のオーダーの見当を

(詳細は拙著シリーズ 数学III 極限 p.69 参照)

sinxがだいたいxの1次式ぐらい、√xで割って1/2次、積分すると1次上がるから3/2次ぐらいなので、1/nとか2/nを代入するから符号変わって-3/2次ぐらいなので、α=3/2ぐらいにすれば相殺できると見当をつける感じです。

※KATSUYAの解答時間21:16。(3)は(2)の結果をこねくり回すのかと思いきや、関係ないんかい^^;阪公大このパターン多いよなぁ。どれがどこにつながるのかよく分からん。。。

 

☆第2問【複素数平面】軌跡、直線に関する対称点、回転など(C、45分、Lv.3)

4次方程式の解と複素数平面絡みの問題ですが、複素数平面はほぼおまけで、ほぼ数II複素数の問題です。だたし、(2)の計算が2重根号なしという指定があり、これがかなりメンドウなので、(1)止まりの人が大半でしょう。

(1)はx^2=tと置いてtの2次方程式に帰着させます。その方程式がその時点でもう虚数解を持つか、異なる2つの負の実数解を持つかですね。

前者は判別式で終わりです。後者は両方負なので、解の存在範囲の問題です。数Iの2次関数の原則でも、解と係数の関係利用でもOK。

 Principle Piece 

 解の存在範囲の解法:2解とも負 D>0、軸<0、f(0)>0

(詳細は拙著シリーズ 数学Ⅰ 2次関数 p.72 参照)

 Principle Piece 

 解の存在範囲の解法(数II) D>0、解の和、解の積に着目

(詳細は拙著シリーズ 数学Ⅱ 複素数と方程式 p.19 参照)

いずれも最後の条件成り立っているので、残りの条件だけです。

(2)が本番です。ここをやり切れればかなりアドバンテージです。

簡単な方から行きます。t^2+bt+c^2=0でtが負の実数解●を持つ場合、x=±√(-●)iとすればxも出せます。

-●=b±√(b^2-4c^2)/2です。これが負の数であることに注意して、符号を変えてルートを付けて、iを書きます。

根号は2重根号になりますが、用いずに表せるはずなので、2重根号を外す原則に従います。

 Principle Piece 

 2重根号を外す → 2重根号の部分を2√●の形に

(詳細は拙著シリーズ 数学Ⅰ 数と式 p.42 参照)

√の前に2がないですがこれも数Ⅰの計算と同じ。強引に2をつくるだけです。

たして2b、かけてb^2-4c^2 → b+2cとb-2c

と出せば、2重今後は外せます。

t^2+bt+c^2=0でtが虚数解を持つ方が難しめ。実は上の2重根号の原則をちょっと応用すれば出来ますが(いつか動画で解説します)、さすがに知らないと思うので、素直に頑張るしかないです。

解はt=-b±√(4c^2-b^2)i/2 で、2乗してこの数字になるものを考えますので、素直にx=p+qi とでもおいて、2乗した式の実部と虚部を比較するという最も基本的な原則を使うだけですね。

 Principle Piece 

 複素数の方程式 → 実部、虚部で条件式は2つ作れる

(詳細は拙著シリーズ 数学Ⅱ 複素数と方程式 p.5 参照)

「2乗してiになる数値を求めよ」みたいな問題をやったことがあると思いますが、これと同じです。文字ばかりですが、カリカリ計算するだけです。こちらもまた2乗を置き換えるなど、計算量が多くてかなりしんどいと思いますが、やることはホントにただの計算です。

ウマく根号ははずれますので、無事に2重根号は免れましたね。

(3)(4)はほぼ一気に出来ます。まず、tが虚数解の場合のxとしての4解は、実部と虚部が全部符号違いなので、絶対値が等しいと分かりますので、原点を中心とする同一円周上にあります。

tが負の実数解の場合は4つとも虚軸上なので、こっちが(4)のパターン。図を書いてみれば簡単に2つの虚部の関係が1:3である必要があると分かりますね。

(1)(2)で原則を用いさくっと答えられるかどうかで第2問はall or nothing になります。原則の重要性が分かる問題ですね。

※KATSUYAの解答時間は29:11です。(2)がかなりキツイ。特に虚数の平方根はまともに計算するとかなりしんどいかと。私は2重根号の原則を応用して答えだけ書きました。この答案量であればさすがにそこは答えだけでもいいかと。

☆第3問【積分法(グラフ編)】不定積分の計算、媒介変数表示、面積(B、35分、Lv.2)

(問題文に書いてある通り)サイクロイド系の問題です。円を固定して直線の方を、円に接している状態を維持しながら滑らず転がしたときの線分の端点の軌跡を求める問題。

決して簡単な問題ではないですが、本セットでは最も完答が狙いやすい問題です。阪公大おそるべしですね。

(1)はただの部分積分です。部分積分の優先順位の原則により、先に三角関数の方を積分します。

 Principle Piece 

 部分積分の優先順位  指数=三角>多項式(>対数)  から変形

(詳細は拙著シリーズ 数学III 積分法(数式編) p.12 参照)

部分積分はミスしやすいので、結果をサクッと微分するといいでしょう。微分の方が計算は楽です。

(2)はサイクロイド系の原則に従うだけです。問題文に「サイクロイドの類似として」とわざわざ書いてありますので、原則は思い浮かびやすいと思います。

 Principle Piece 

 サイクロイド系の軌跡の求め方

 [1] ベクトルで辿る [2] 長さが等しい箇所を探す

(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 式と曲線 p.44 参照)

[1]の原則で接点T経由で、OT→+TA→とします。OTは-90°回転でTAの方向になることを利用するか、延長してx軸の正の向きとのなす角(符号付き)を求めましょう。

[2]は、(1,0)からTまでの円弧と、TAの長さが等しいことに着目します。これでTA→の成分が出せます。

(3)は(2)をが出れば、媒介変数の原則に従うだけです。x方向は増減がありますが、y方向は単調増加なので、y方向で積分するとラクだと思います。

あとは、媒介変数表示における面積の原則に従ってカリカリ計算するだけです。

 Principle Piece 

 媒介変数系の面積 → ∫xdy で「区間」「x」「dy」を媒介変数に置換

(詳細は拙著シリーズ 数学Ⅲ 積分法(グラフ編) p.11 参照)

置換した後の被積分関数は、sin^2θやsinθcosθがあります。三角関数は次数を1次にして(角度を上げて)積分するのが原則。

 Principle Piece 

 三角関数の積分は次数を1次に下げてから

(詳細は拙著シリーズ 数学Ⅲ 積分法(数式編) p.17 参照)

これで、(1)の結果が使える形になります。a=2を入れればOKですね。

※KATSUYAの解答時間は19:32です。セット全体を考えるとこれは取りたいので全体的に慎重に。

☆第4問【整数】整数、倍数であることの証明(D、45分、Lv.3)

最後は昨年同様に整数問題です。今年は有名な定理の証明とかではないので、知識の有無で差がつくタイプではありませんでした。途中までは取れると思いますが、特に一番最後はかなり難しいと思います。「全く見当がつかない」という状態の人も多かったと思いますので、解けた問題の見直しフェーズに、とっとと移行したほうが良かったでしょう。

(1)は真ん中の式を上の式に代入するだけです。

(2)の1.有理数なので(1)の結果が使えることをアピールしつつ、aを置き換えます。式の形からほぼ明らかですね。

(2)の2.は意外と難しいかもです。私は背理法でやりました。

もし倍数でないとすると、5m-2k/5k^2-m^2が整数にならないので、既約分数にしたときに分母が2以上で残ります。その数字がpだとすると、残ったmやkがpと約分出来て、pを1に出来ないといけませんので、mもkもpで割れることになります。これはm/kが既約分数であることに矛盾しますね。

最後は捨て問でしょう。121という数字が一体どこから出てくるのかも見当がつかないですね。おそらく5m-2k=L(5k^2-m^2) と出来るのはいいとして、5k^2-m^2と5m-2kを結び付けるために、ここから超強引に2乗ー2乗という差を作れるかどうかです。

(5m-2k)(5m+2k)とすると2乗の差になりますが、5k^2とするためにこの式を-5/4倍します。すると、m^2の方が-125/4 m^2となるので、調整で121/4m^2を足します。ここまで来れればかなり見えてきます。

121m^2=・・・になおすと、121m^2が5k^2ーm^2の倍数と分かります。あとはm^2と5k^2-m^2が互いに素であることを言えばOK文字式同士なのでユークリッドの互除法を使います。

 Principle Piece 

 文字式同士の最大公約数は互除法で 

(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数  p.35 参照)

を使うと、5k2^-m^2=(-1)×m^2+5k^2 と出来るので、m^2と5k^2の公約数に帰着されます。

mとkが互いに素なので、m^2とk^2は素因数を共有しません。mに5の素因数があるときはkにも5の素因数があることになり、既約であることに矛盾します。従って、mに5の素因数もありませんので、m^2は5k^2と互いに素となりますね。

※KATSUYAの解答時間は37:12です。最後ムズ^^;25分以上考えた。k、mはそんなに大きくはならないからそれで絞るのかなぁとかいろいろやるもうまくいかず。5m-2kと5k^2-m^2の形にが似て無さそうで似てそうで・・・うーんなんとか合わせられないかと考えた結果上のやり方になりました。これは捨て問かな。

4.対策

レベル的には7帝大レベルに近く。同じ大阪の阪大理系と比べても大きく劣らないと思います(年によっては阪大の方が簡単なことも)。分野は数IIIの割合がかなり多いので、ボリュームも多め。小問で刻まれてはいるものの、つながりが飛んでいたり、見えにくいものもあります。式変形をしながら、前問とは独立しているのか、どこかで使えそうな式が見えるか、常に意識する必要があります。完成された答案だけ見ると大したことなく見えますが、見かけほど易しくはないので注意しましょう。

原則習得タイプの問題集で早めに手法を一通りマスターし、次の入試基礎演習の段階まで終えたら、融合問題を多く解く演習をしましょう。医学部なら、仕上げレベルまでやったほうがいいかもしれません。

なお、拙著『Principle Piece』シリーズであれば「原則習得」「入試基礎演習」の両方の段階を兼ねていますので、この後にもう入試標準演習の問題集に接続可能です^^

量をこなす演習:じっくり演習=7:3でOK。

以上です^^

■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)

数学A Chapter3~整数~ (第4問)

数学II Chapter2~複素数と方程式~ (第2問)

数学B・C Chapter4~複素数平面~ (第2問)

数学III Chapter4~微分法2~ (第1問)

数学III Chapter5~積分法(数式編)~ (第1問、第3問)

数学III Chapter6~積分法(グラフ編)~ (第3問)

 

すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!

数学I・A ~原則のみ~

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■過年度の本大学の入試数学■

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2023年

 

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