慶應大学 理工学部 | 2016年大学入試数学
2017/02/11
●2016年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は慶応大学(理工学部)です。
いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2016年 大学入試数学の評価を書いていきます。
2016年大学入試(私大)シリーズ。
慶応大学(理工学部)です。
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。
したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。
慶応大学(理工学部)
(試験時間120分、5問、ハイブリッド型)
1.全体総評~計算量が多く点数に結びつきにくいセット~
難易度は、昨年とほぼ変化なしですが、点数に結びつきにくいセットです。計算量が非常に多く、前半で挫折しそうなものも多くあります。第1問の(2)、第5問などは題材が簡単なかわりに、かなりの計算量です。
試験時間120分に対し、
標準回答時間は183分【134分】(←穴埋め考慮)
2015年:186分【139分】(←穴埋め考慮)
2014年:156分、2013年:180分
2.合格ライン
第1問の6個の穴埋めは後半が厳しい。時間との兼ね合い。
第2問も抽象関数なので(2)までとりあえず手をつける。
第3問の確率と漸化式は適度な難易度で差が付くと思われます。キー問題です。
第4問は感覚が鋭い人はラッキーです。こちらもキー問題。
第5問はやることは標準的だが、計算量が多い。前半の体積までは確保。
残り時間で、第1問(2)か第5問のどちらかに手をつけられれば、60%ぐらいはかき集められそうです。
3.各問の難易度
第1問(1)・・・【整数】約数の個数、約数の平均(A、8分【5分】、Lv1)
ここで落とすともう、後がないぐらい本セット最易問。まさか慶応で出るとは思いませんでしたが、2016の約数の個数、和です。2016=32×63を知っていれば、簡単に個数も和も出ます。
☆第1問(2)・・・【三角関数+極限+微分法III】、三角関数と極限、最大・最小(BC、40分【25分】、Lv.2)
(1)とは雲泥の差がある、非常に計算量の多い問題。(1)の勢いで行くと鼻をへし折られます^^;
単位円上の点を結んでできる図形の面積についてです。面積の式自体はすぐ出ますが、極限と最大値の計算が曲者。穴埋めを利用して、ある程度は端折らないと、下手すると試験時間の1/3ぐらい持って行かれます。
極限については、実はS1(θ)について、cos2θを変形してうまく因数分解すると、S_2(θ)で割れますので、簡単に出せます。ただし、次の微分では、その形では不便で、加法定理や半角などを駆使して、1次式にしていくのが最適でしょう。
式変形が穴埋めの場所でコロコロ変わるところがかなり意地悪です。変えなくてもできますが、どちらもかなり時間がかかります。
私は極限は、こちらの原則を利用し、形を保ったまま計算しました。
(拙著シリーズ(白) 数学III 極限 p.40~41)
分子には、sin2θとsinθがあるので、分母にxをつけ、分母にはsinθがあるので、分子にx をつけて帳尻を合わせます。 cosθーcos2θについては、強引に(1-cosθ)ー(1-cos2θ)とし、x^2とペアにしていきます。
最適な方法を知らなくても、原則を知っていれば多少の不利は簡単にカバーできます^^
最大値も、そのままcosθ=t とおいて、sinθ=√1-t^2 とし、強引に全面展開し、そのまま微分しました。結局、4次方程式を解くことになります。因数定理では-1/2を見つけなければならず、これも時間が掛かりそうです。候補の探し方は必須ですね。
(拙著シリーズ(白) 数学II 複素数と方程式 p.27)
求めるcosθの値は汚く、sinθを出すのに2重根号も外しつつ、まだまだ計算していかなければいけませんので、しょっぱなからかなり厳しいです。
(拙著シリーズ(白) 数学I 数と方程式 p.19)
本大学であれば、この程度の原則は、空気のような存在になっていないといけません。「2重根号?はいはい外します^^」ぐらいに。
※KATSUYAの解いた感想
2016来た!!^^ 慶応理工で出るとは思わんかったけど。(1)は楽勝。(2)はその勢いで読んだが、一気にだるくなる。最初P3とP4をひっくり返しており、極限もでなくて「あれ、やばいな^^;」となる。ミスに気づき、極限は強引に原則で終了。その勢いで最大値に。cosをtで置き換えると、√1-t^2も入ってくる。でもしょうがない、この関数を微分しよう。因数定理でなんとかcosは分かった。あ、最大値も出すのね。メンドくさ! でもここまで出たならやる。解答時間計21(3+18)分。
第2問・・・【定積分】定積分の最小値、抽象関数と論証(BC、35分【28分】、Lv.3)
証明記述とのハイブリッド形式になっています。(1)、(2)は地道に計算しましょう。「a=1/2f’’(0)とおく」という言い方も、わざと混乱を誘っているように見えます。2次の係数はaということです。普段「a」とおくことが多いので、余計に混乱しそうですね。最小値は平方完成です。
(3)、(4)は抽象関数です。h、gは2次関数、というか多項式とは限りませんので、注意です。h(x)やg(x)は残したままいくしかないでしょう。「I」の被積分関数には、(2)で出した被積分関数が含まれていますので、それを抽出して、それ以外と分けます。はみ出た部分に部分積分を使うと、f(x)の実際の式や、h(0)=h(1)=0などがうまく使えます。
(4)は、g(x)=f(x)+h(x)とおいても問題ないので、実は(3)がほぼそのまま使えます。Jの第2項は間違いなく正ですね^^
抽象関数の中ではましな方ですが、おそらく差の出た問題でしょう。
※KATSUYAの解いた感想
(1)、(2)はただの数IIの積分レベル。(3)は、、、何をするんだ、これ?とりあえず「I」から(2)の式を取り出すか。お、Jと似た式も出たけど、多い。ここを積分するとゼロになることが分かればいい、と。h(x)の積分はどうしようもないはずなので、それ以外を部分積分。お、なったなった^^。(4)は(3)をそのまま使い、終了。解答時間22分。
第3問・・・【確率+数列】確率と漸化式、コインの表裏(C、35分【26分】、Lv.3)
確率と漸化式の問題で、慶応理工、医学部の18番といえるでしょう。っサイコロの2個の数字に応じて、コインをひっくり返す場所を決めます。問題です。
最初の「コ」はいけるでしょう。36通りしかありませんので、いざとなれば書き出しです。
(拙著シリーズ(白) 数学A 集合と場合の数 p.20)
「サ」は、「コ」が使えます。2回とも「ひっくり返される」か、2回とも「ひっくり返されない」か、です。ひっくり返される確率が「コ」なので、余事象も使えます^^
「シ」はかなりメンドくさいと思います。先に(2)で漸化式を出してから、n=2を計算した方が早いでしょう。確率と漸化式については、3点セットの原則があります。
(拙著シリーズ(白) 数学A 確率 p.39~43)
pn、qnが全てではありません。どちらかが表でどちらかが裏の場合もありますこれをrnとでもおきましょう。
(拙著シリーズ(白) 数学A 確率 p.39~43)
なお、番号3と番号4の硬貨は対称ですから、1枚1枚は、ひっくり返るかどうか、対称です。こういったことも利用しましょう。
(拙著シリーズ(白) 数学A 集合と場合の数 p.20)
本問は演習をかなり積んでいないと、原則を言葉だけで覚えているレベルでは厳しいです。しかも、「ソ」「タ」から、p{n+1}+q{n+1}自体をまた置き換えて、特定方程式型の漸化式に直す必要があります。結構時間かかりますね。
(拙著シリーズ(白) 数学B 数列 p.33)
(※「4型」とは、拙著での呼び名です。一般的には通用しません。)
※KATSUYAの解いた感想
ルールからして、書き出しか。最大値2以下か、最小値4以上でOKか。「コ」「サ」は楽勝。「シ」は最初出そうとしたが、(2)を見て、先にこっち出して、1-q2で計算すればいいと判断。rnも設定し、遷移図。ここは命なので、多少かかっても36通り書いて調べ、漸化式を解く。やっぱり理工は全体的に時間がかかる。疲れてきている。解答時間20分。
第4問・・・【整数+複素数平面】互いに素、ド・モアブルの定理、整数解の存在(BC、25分【12分】、Lv.3)
複素数平面に整数問題を絡めた問題です。複素数平面全盛期には、背景的には似たような問題がよくありました。要するに、何乗かすれば、かならずまんべんなく単位円上を回るということですね^^
ですので、論証である(3)を除けば、実は答えだけならすぐに出そうです。感覚が鋭ければ、ここは時間を大幅に短縮できます。逆に感覚がないと、(2)(4)は全滅でしょう。
(3)は、ax-by=1の例の形に帰着されます。問題の流れからして、証明をすべきでしょう。「a,bが互いに素だから解がある」と書くのはさすがにダメだと思います。それだと、本質的なところが端折られているので^^;
(拙著シリーズ(白) 数学A 整数 p.38にあります)
第5問・・・【空間ベクトル】等面四面体、面積、垂線、体積、切り口の面積など(C、40分【28分】、Lv.3)
少し前に東大でも出た、等面四面体で垂線をベクトル表示させる問題。拙著をお持ちであれば、原則がたくさん使えることがわかります^^
(拙著シリーズ(白) 数学B ベクトル p.63)
内積ですが、3辺が分かっている場合は、余弦定理の利用がそのまま内積を求めるのに使えます。
(拙著シリーズ(白) 数学B ベクトル p.36-38)
これで準備をしたら、垂線の足を出しましょう。こちらも、原則です。
(拙著シリーズ(白) 数学B ベクトル p.75)
原則のオンパレードで点数の取りどころなのです、最後の問題なのにまた計算量が膨大で、どこまでこれにくらいつけたか、です。体積までは欲しいところ。
後半は、ABCだけを見ていますので、平面ベクトル。AHとBCの交点は、Aが入っているので、こちらの原則です。
(拙著シリーズ(白) 数学B ベクトル p.34-35)
これでPは出ます。PQの長さは三角比で、cosC→sinCとだし、PC×sinCと計算する方がいいでしょう。Pの位置ベクトルの係数から、BCの内分比はわかります^^
最後は切り口ですが、形を特定できたとしても、長さを出したりと、時間的にはかなりここまでたどり着くのは難しいでしょう。
※KATSUYAの解いた感想
お、等面四面体^^原則かなり使えるかな。計算は結構メンドウやけど、付き物やから仕方ない。体積まではコツコツ終了。後半は図を書いて、三角比で出すことにする。切り口を含め、最後まで苦戦を強いられる計算。解答時間19分。
4.対策~質の高い演習に加え、計算力の強化を~
標準問題を素早く解くには、入試の頻出パターンをなるべく早い段階で習得する必要があります。青チャートIAIIBは高2までに出来ればマスターしてしまいたいところ。分野的には、「微積分」に加え、「確率と漸化式」が頻出。
また、IIIの方も高3の夏までには一通り全分野が終了していないと、このレベルに対応できません。受験者層を考えると、高2までにIIIを終えている高校も多くあります。学校の進度が遅いような場合は、自分でやりましょう。教科書ガイドと青チャートがあれば進められます。
また、青チャートのようなものが終わったら、早めに入試演習に入りましょう。本学部の数学で点数をしっかり取るには、最終段階としては仕上げレベルまで必要です。こちらを解く際にも、本番の穴埋めのようにスピードを上げて解きましょう。
計算量が多い問題もよく出ます。多少拙いやり方で計算量が増えても、ゴリ押しする能力も必要です。
量をこなす演習:じっくり演習=7:3ぐらいですね。
以上です^^
■他年度の、本大学の入試数学■
>> 2010年度
>> 2012年度
>> 2013年度
>> 2014年度
>> 2015年度
■関連する拙著シリーズ■
★ 数学A 確率 (第3問)
★ 数学A 整数 (第1問(1)、第4問)
★ 数学II 三角関数 (第1問(2))
★ 数学B ベクトル (第5問)
★ 数学B 数列 (第4問)
★ 数学III 極限 (第1問(2))
★ 数学III 微分法の応用 (第1問(2))
★ 数学III 積分法 (第2問)
★ 数学III 複素数平面 (第4問)