大阪公立大学 理系数学 講評| 2023年度大学入試数学

      2024/04/17

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※拙著シリーズの発売情報など、最新のお知らせなどはこちらからどうぞ^^

●2023年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は大阪公立大学(理系)です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2023年 大学入試数学の評価を書いていきます。

2023年大学入試(国公立)シリーズ。
大阪公立大学(理系)です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。


解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。

※お知らせ

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YouTubeチャンネルです 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を動画にしてみようと思います。

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大阪公立大学 理系
(全4問、120分、記述式)

1.全体総評~昨年同様難しいセット~

阪公大として初めての試験はかなり難しいセットでしたが、今年も同じぐらい難しいです。傾向も昨年に似ており、小問によって刻まれており、そのつながりや利用の仕方を結構考えなければいけない問題も多め。特に後半2問は発想も必要で、このたりも昨年の傾向通りです。

分野的には数III(C)から3問、あとは確率、整数です。難関大の出題構成ですね。

試験時間120分に対し、標準回答時間は155分。今年もキツイ。

2022年:150分

 

2.合格ライン

第1問は全体のセットを考えると正解したいですが、(2)が計算がまあまあメンドウ。(3)は旧7帝大などであれば頻出のタイプですが、本学志望者が対策しているかどうか。

第2問はキー問題。第1問同様にただひたすら計算するだけだが、(2)が出来ないとほぼ壊滅状態。原則の習得が合否を分けたか。

第3問は難しめ。(1)だけは何とか取りたい。(2)は(1)を利用するが、右側がしんどい。(3)は(2)を受け入れれば進められるが、微妙な調整が必要。

第4問はキー問題。整数問題で勝つ有名な事実の証明なので差が付きそう。知っていれば(3)まではいける。単独で(4)は答えたいが、(5)は誘導を利用するのが難しい。(1)~(4)の出来次第。

 

第1問を(3)までおさえて、第2問も原則が分かっていればおさえられる。第3問、第4問で1完出来るかどうか。60%弱ぐらいでしょうか。昨年同様難しめ。

3.各問の難易度

第1問【確率+数列】じゃんけん、確率と漸化式(B,30分、Lv.2)

確率の問題で、最後に数列が絡みます。(1)は基本、(2)はしらみつぶしに頑張るだけです。(3)は漸化式利用のタイプ。小問に分かれてはいますが、特につながりはないです。こういう小問構成になることもあるのが、阪公大の特徴。

(1)はただの反復試行ですね。1回で1段上る確率とそのままの確率を整理します。

 Principle Piece 

 反復試行は1回当たりの確率を整理する

(詳細は拙著シリーズ 数学A 確率 p.18 参照)

今回は簡単にm回勝てばいいと分かりますが、回数不明の場合は方程式を立てましょう(勝ったら+3、負けたらー2の問題など)

 Principle Piece 

 回数不明の反復試行 → 出る回数を文字で

(詳細は拙著シリーズ 数学A 確率 p.22 参照)

(2)は若干意図を読みあぐねますが、試行回数が2回ですし、mによって確率が違いますので、全部調べるだけです。

グーチョキで勝つ、パーで勝つ、パーで負ける、それ以外の4パターンなので、ありえるmの値とそうなるためのパターンの組み合わせを選ぶだけです。どうせ全部考えるので、mによって分けるのではなく、先に4×4=16パターンについて全部書いてしまうのも手です。

(3)は漸化式と確率のパターン。このサイトの講評や私のYouTubeチャンネルをよく見ている人なら余裕で原則が思い浮かぶでしょう。

 Principle Piece 

 確率と漸化式の原則3点セット  [1]n回目とn+1回目への遷移を詳しく 

[2]関係のないところも文字で [3] 和=1、対称性を利用

(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 数列 p.78 参照)

今回はここまで意識しなくても簡単に出せます。n+1回目に0段目にいる確率ですが、0段から0段のときと、0段以外から0段のときがあります。0段以外は確率1-znですから、これで簡単に漸化式が作れます。

出来た漸化式は典型的な4型ですから、等比数列に帰着するだけですね。

※KATSUYAの解答時間は15:41です。(1)(3)ままあいいとして、(2)はさすがにただの作業にしか見えない^^;

☆第2問【複素数平面】軌跡、直線に関する対称点、回転など(B、30分、Lv.2)

複素数平面から。軌跡が直線になるタイプで、少しマイナーなタイプだったので、これだけガッツリ聞かれると出来ない人は壊滅だったかもしれません。

(1)はz、zバーの「1次式」なので、成分で置けばx,yの1次式に帰着出来ますから、成分置きが分かりやすいです。

 Principle Piece 

 軌跡の問題の方針[2] 一般の直線ならx+yiで置いて計算

(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 複素数平面 p.44 参照)

実部、虚部を比べると分かりますね。なお、方程式は2つ出来ますが、どちらも同じ式になるので、軌跡は直線になります。

(2)は経験があるかどうか(原則をしっているかどうか)で決まるでしょう。拙著なら原則とともに問題がほぼそのまま載っています。

 Principle Piece 

 直線に関する対称移動 →回転、共役、また回転

(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 複素数平面 p.18 、例題10なども参照)

(1)の直線がx軸に来るように30°回転させると、移動前と移動後の点が共役になるので、共役をとってもう1回戻せばOKです。

ここが出来ないと(1)止まりになるか最後まで出来るかです。こういう基本的な原則が合否を分けます。

(3)は原点以外を中心とした回転、原点を中心とした回転、そして(2)の直線に関する対象移動を複素数の計算で移していくだけです。ただの計算問題。

(4)は(3)のf(z)を代入すれば、(1)とほぼ同じような式が出ますので、もう一回x+yiと置けば関係式が分かります。

(1)(2)で原則を用いさくっと答えられるかどうかで第2問はall or nothing になります。原則の重要性が分かる問題ですね。

※KATSUYAの解答時間は21:30です。(1)(2)で原則知っているかどうかでほぼ決まる感じかな。(3)で計算ミスって(4)が怪しげになったので、(3)を見直して修正。

☆第3問【積分法(数式編)+極限】定積分に関する等式、不等式の証明、極限(C、45分、Lv.2)

がっつり数IIIの問題で、こちらも計算量は多め。さらに発想も必要なので、(2)(3)は正答率が低いでしょう。

(1)は等式の証明。経験がないと(1)から詰まるかもしれません。f(x)が具体的でないような場合の積分の等式の証明は、部分積分を行うと進むことが多いです。(ちょっと難しめのテクニック)

f''(x)は微分できるかどうかもそもそも分かりませんが、積分は出来ます。ということは、先にこちらを積分します。多項式は微分したほうが次数も下がるのでラク。部分積分の優先順位も確認しておこう。

 Principle Piece 

 部分積分の優先順位  指数=三角>多項式(>対数)  から変形

(詳細は拙著シリーズ 数学III 積分法(数式編) p.12 参照)

左辺を部分積分すると(2x-(a+b))f'(x)の積分が出てきます。もう一回部分積分を行えばお目当ての式が見えてきますね。

(2)は(1)を利用します。区間a~bはt~t+1でしょう。さらに、f(x)=\log xです。これで(1)を変形すると、不等式の中辺が(1)の左辺の符号違いの半分になります。

区間t~t+1内で0以上なので左側はすぐに示せますが、問題は右側。1/8という数値や、( )内の式と被積分関数をにらめっこして、さらにこちらの原則を意識します。

 Principle Piece 

 積分可能な関数の見つけ方

 [1] 積分区間と積分結果の式を見比べる [2] 大小関係が(すぐに)分かる

(詳細は拙著シリーズ 数学III 積分法(数式編) p.68 参照)

今回はこんな感じの思考プロセスです。

  1. 不等式右辺の( )内の式1/t-1/t+1は、明らかに[1/x]で上端から下端を引いた形をしている。
  2. ということは、積分前の関数は1/x^2のはずである。
  3. 中辺の分母もx^2があるので、分子にある式を定数で上から押さえればいい(ある定数以下とすればいい)
  4. 分子はただのxの2次関数なので、平方完成ですれば1/4以下と分かり、1/2と合わせて1/8もウマく出そう。

2022年にもこの原則を用いて不等式を証明する問題が出てましたが、その時も難易度は高めでした。阪公大を受ける人は対策を厚めに取りたいですね。この手の問題が出てきたら、少し時間を取って考えるようにしましょう。

(3)は(2)を利用しますが、こちらも難しめ。まず、-nlogn+nがlog xの積分によって出てくることに気づけるか。

積分区間は1~nなので、t=1,2、・・・n-1として辺々足せばいいと分かります。これで辺々を足すと不等式の中辺がかなりa_nに近づきますが、微妙に違います。

次の段階はこれの調整です。書き並べて足していくと分かりますが、log nにだけ係数に1/2がついてます。ですので、1/2log をさらに引き、さらに1も引くと、-a_nになります。

これでa_nに関する不等式が(2)から得られます。右辺は望遠鏡型で和が出せます。すでに部分分数分解されてますね。

あとはlogn で割ればはさみうちが見えます。lognがあるところ以外は、割ればゼロに収束します。

※KATSUYAの解答時間は15:35です。知識問題に近いので、コツコツ記述するだけ。

☆第4問【整数など】フェルマーの小定理の証明関連(CD、50分、Lv.3)

整数問題で、前半はフェルマーの小定理の証明、後半はその結果を利用した証明問題です。こちらも小問で刻まれていますが、(4)は単独で、(5)が気づきにくくかなり厳しい。本セット最難問でしょう。(3)(4)をうまく使いながらさらに式変形が必要です。

初っ端の(1)も下手すると結構厳しいかも。二項係数に関する等式がさくっと出てくるかどうか。(詳細は拙著シリーズ 数学A 集合と場合の数 p.33、p.67、p.68 参照。わざわざ、受験数学なら必須と明言しています。)

j・pCk=p・p-1Cj-1 が成り立つことを式変形でサクッと示し、jとpが互いに素であることを言えばOK。なお、二項係数が整数であることは前提としていいでしょう。

(2)は(1)と二項定理の利用です。ちょうど、j=0のときとj=pのときが引かれますので、うまくいきます

(3)は思いつきにくいかもしれませんが、(2)で(m+1)^p-m^p があるので、mとm+1という1ずれの関係式だと思えば、帰納法が思い浮かぶでしょう。自然数mに関する証明でもあるし、相性は良さそうですね。

 Principle Piece 

[1] 自然数に関する証明 [2] 結果が分かる(推測できる)  なら帰納法 

(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 数列  p.66 参照)

m=kの時の仮定と(2)のプロセスを利用すると、m=k+1のときに成り立つことが言えます。mでくくることで、mがpで割り切れなければ、その中がpで割れます。これがフェルマーの小定理です。

(4)もやり方が分かっている人にとっては瞬殺ですが、初見だと意外と厳しいかも。互いに素であることの証明は、背理法が無難です。

 Principle Piece 

 互いに素であることの証明は背理法で公約数の存在仮定 

(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数  p.68 参照)

a=4n^2+4n-1 と 2n+1という文字式の公約数を考えるなら、ユークリッドの互除法です。

 Principle Piece 

 文字式同士の最大公約数は互除法で 

(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数  p.35 参照)

aを2n+1で割ることで、余りが2だと分かりますので、2n+1と2の約数にもなりますが、2はあり得ないので1しかないってことですね。

(5)は(3)(4)をうまく使いますが、結構難しいかもしれません。第1段階は、pが2n+1と互いに素であることと、(3)によって(2n+1)^(p-1)-1がpで割れることを利用します。

もう一段階変形が必要。証明すべき式は指数がp-1/2です。ですので、2n+1^2=4n^2+4n+1として、これのp-1/2とします。ここで、4n^2+4n+1=(4n^2+4n-1)+2=pの倍数+2=Lp+2となります。これに気づけばほぼ勝ち確。

合同式を使えば、(Lp+2)のp-1/2乗と2のp-1/2乗はpで割った余りが同じです。どちらも1余るので、これで証明完了ですね。

※KATSUYAの解答時間は24:51です。有名事実の証明なので、知識やほぼ同じ問題の演習経験の有無でかなり差が出そう。(4)まではほぼ手が詰まることなく終了したが、(5)は結構悩んだ。答えの式だけを見て、2^p-1乗だけに目がいっていた。 (4)から確かに2n+1がpで割れないことはすぐに言えるが、2n+1のp-1乗に持ち込むべきだと気づかないとかなり厳しいと思われる。

4.対策

レベル的には7帝大レベルに近く。同じ大阪の阪大理系と比べても大きく劣らないと思います(年によっては阪大の方が簡単なことも)。分野は数IIIの割合がかなり多いので、ボリュームも多め。小問で刻まれてはいるものの、つながりが飛んでいたり、見えにくいものもあります。式変形をしながら、前問とは独立しているのか、どこかで使えそうな式が見えるか、常に意識する必要があります。完成された答案だけ見ると大したことなく見えますが、見かけほど易しくはないので注意しましょう。

原則習得タイプの問題集で早めに手法を一通りマスターし、次の入試基礎演習の段階まで終えたら、融合問題を多く解く演習をしましょう。医学部なら、仕上げレベルまでやったほうがいいかもしれません。

なお、拙著『Principle Piece』シリーズであれば「原則習得」「入試基礎演習」の両方の段階を兼ねていますので、この後にもう入試標準演習の問題集に接続可能です^^

量をこなす演習:じっくり演習=7:3でOK。

以上です^^

■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)

数学A Chapter2~確率~ (第1問)

数学A Chapter3~整数~ (第4問)

数学B・C Chapter1~数列~ (第1問) (←確率と漸化式はこちらに多数収録!)

数学B・C Chapter4~複素数平面~ (第2問)

数学III Chapter5~積分法(数式編)~ (第3問)

昨年とほぼ同じ分野ですね。

すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!

数学I・A ~原則のみ~

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■過年度の本大学の入試数学■

2022年

 

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