共通テスト 数学I・A【2023年】最難の2022年の反動は?難易度、傾向、時間配分など
2024/01/13
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このエントリーでは、2023年に行われた共通テストの数学I・AをKATSUYAが解き、その感想や難易度などをアップしていきます。
【評価指標のみかた】
1.難易度 A(易)~E(難)
2.解答するまでの標準的な時間
の2点を中心に、各問題ごとにコメントしていきたいと思います。
※あくまで、KATSUYA個人の見解に基づく評価ですので、ご了承ください。
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2023年共通テスト数学Ⅰ・A(70分)
1.全体評価~最難の昨年からは易化だが、随所で差がつく場面はある~
易化です。といっても、昨年のあの最難セットとの比較です。やはり共通テスト特有の文章量の多さもあるので、これで例年並みぐらいでしょう。
相関係数の計算を精密にさせたり、整数問題で鬼のような計算をさせたりという場面はありませんでしたが、それでもちょくちょくメンドウな計算が必要な箇所もあります。
また、前半で誘導を与えて、後半で「よろしく」という丸投げタイプも健在でした。共通テストはやはりこの流れを意識していることがうかがえます。
第1問は、[1]数の計算、[2]三角比、の構成でした。どちらも普通か、少し易しめ。三角比は後半は誘導がなく、計算も少しメンドウなので差がつくか。
第2問は[1]データ分析、[2]2次関数で で順序が逆になりました。データはかなり簡単だったかと。ヒストグラム、箱ひげ図ともに視力検査のような感じではなく、比較的すぐに判別して答えられるものが多め。相関係数の計算も今回はかなり甘め。2次関数は文章量・計算量ともに多め。ゆっくりやっていると時間を持っていかれた可能性も。
第3問は場合の数からで確率はなし。塗り分けの問題にかなり近い。前半は言われた通り調べて計算するだけ。後半は誘導に乗れないと3問とも落とすので、差がつくと思われる。
第4問の整数は中学受験でも出そうな、長方形のタイル詰めの問題。最大公約数や最小公倍数の計算に加え、定番の1次不定方程式も解く。難易度はそこまで高くないが、結果が4桁のものが多く、計算スピードでかなり時間の差が出ると思われる。
第5問の平面幾何は、作図で、2021年第2日程のパターン。誘導に従って慎重に等しい角度を探していけば出来るはず。後半は丸投げタイプ。前半と全く同じ順序で落ち着いてたどれば出来る。最後の長さ2問は計算がほとんど不要で逆に発想重視のため、差がついたかと。
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> 共通テスト(2023年度数I・A)に関するYoutube動画も上げていますので、参考にしてみてください。(←下に動画が出ない場合ばここをクリック)
2.各大問の難易度
※緑色の表記は、数学を解き進める上でかかせない原則を表しています。
※青色の表記は、数学における超基本的な心構えを表しています。
難易度は、「8割難易度」と「満点難易度」を記載しています。途中までなら簡単だが、最後だけが非常に時間がかかったりするものや、後半ぐらいから結構メンドウなものなど、いろいろなタイプがあります。自分の目標点と照らし合わせて、参考にしてみてください。
☆第1問 [1](数と式:絶対値付き不等式、式の値、A、6分【4分】)
8割難易度・・・易 満点難易度・・・易
前半は絶対値付き不等式ですが、超基本です。途中、ごつめの式が入りますが、やることは-4とー8を1-√3で割るだけです。-4の方だけやれば、それを2倍すればもう片方も出ます。ここはうまくサボりたい。
後半も文章で「式を全部展開し」と親切に書いてあります。①②③を展開して項をにらめっこして、①と②をどうすれば③が出るかを見極めます。係数的にも、足すか引くかだと予想はつきます。
KATSUYAの解答時間2:29
第1問[2] (三角比:仰角の測定、B、15分【10分】)
8割難易度・・・やや易 満点難易度・・・やや難
前半は円周上の3点、後半は球面上の4点です。前半は数値の設定も易しく、計算がラクになっていますが、後半は空間になったうえに数値もメンドウ。逆にしてほしかった^^;
前半の最初のsinやcosはほぼ暗算で出来る数値設定ですね。円周上に2点A,Bを固定したときにCをどこにとれば面積が最大になるかですが、高さを考えれば垂直二等分線になるときだと分かります。OADが3:4:5の三角形になることもすぐにわかりますので、高さの最大値は半径5+4=9となります。
後半は同じ考え方を空間に応用します。最初は三角形PQRの平面の話。3辺が分かっていれば変形余弦、相互関係でsinにして面積公式の流れですね。面積はヘロンの公式で検算するといいでしょう。
(詳細は拙著シリーズ 数学I 三角比 p.46 参照)
球面上に3点ABCを固定し、4点目Tを取るとき、TからABCに下した垂線が中心Oを通るときが、高さが最大になるときです。このとき、垂線の足Hが外心になることがポイント。これを知っていると「ナ」が瞬殺出来ます。
垂線がO通るので、OA=OB=OCの等稜四面体が出来ます。この四面体を見たら、垂線が外心になることを用いる流れは原則なので、すぐに結びついてほしいところ。
(詳細は拙著シリーズ 数学I 三角比 p.62 参照)
これにより、HAがPQRの外接円の半径と分かりますので、面積のときに使ったsinを使えば、R=15/√11と出ます。これとOA=5から、OAHで三平方の定理を使えばOHが出ます。高さの最大値はOH+球の半径5となります。これに面積をかけて3で割ればOK。
最後にたどり着くまでの過程が長く、誘導もないので、最後はスルーでもよかったかもです。
KATSUYAの解答時間6:04 最後で時間の7割ぐらいもってかれてます。
☆第2問[1] (データ分析:ヒストグラム、箱ひげ図、分散、相関係数、A、7分【5分】)
8割難易度・・・易 満点難易度・・・易
今年はここにデータです。昨年のような、相関係数の厳しい精度での計算もなく、例年と比べてもかなり短い時間で解答できる問題でした。
最初の文章はスルーします。データの個数が52であることさえ押さえておけば十分。問題文の縦軸、横軸を見れば何のデータかは分かります。これも時短テクです。
(1)はヒストグラムを見てQ1、Q3、四分位範囲を調べます。データ数が52なので、小さい方や大きいほうから13個目、14個目と数えればOK。四分位範囲ですが、極端な例を考えます。Q1は1800かもしれませんし、2199かもしれません。ヒストグラムからはそれ以上のことは分からないので、1800~2200として考えるしかないです。Q3も同様。これでQ3-Q1の取りうる範囲も出ます。昨年もこの考え方をする問題、ありましたね。もっと難しかったですが^^;
(2)は箱ひげ図。正誤判定ですが、正解を1つ選ぶだけでしたし、それもほぼ明らかに分かるものだったので、かなり楽だったと思います。分散は偏差の2乗の平均です。きちんと定義を覚えていないと、こういう問題で足をすくわれるので要注意!
(3)は相関係数(=共/標・標)ですが、今年は選択肢があり、さらに数値の幅も大きいです。なので、かなり雑に計算しても答えは絞れます。
124000/590・570→1240/59・57→125/60・60→1/3強 ぐらいの見積もりでも十分でしたね。
KATSUYAの解答時間3:44 昨年の1/4ぐらい短い^^;これは落とせないですね。
第2問 [2] (2次関数:放物線の特定、頂点、軸の吟味、B、15分【10分】)
8割難易度・・・普通 満点難易度・・・やや難
2次関数の問題ですが、設定が長いことと、途中にある2次関数の式を見て、面食らった可能性もありますね。最大・最小すら聞かれておらず、2次関数の前半の単元だけで構成された問題です。全体的に聞き方が遠回しのため、結局何をすればいいかを言い換える力が必要。(数学的国語力などと私は呼んでいます)
「仮定」と書いてある囲み部分はきちんと読みましょう。ここは読まないと問題が解けませんので、素早く読みたいところ。要は、ボールが手から離れる瞬間の位置、ゴールの位置を通るような放物線を2つ考えるということです。このように言い換えれるかどうかがカギ。
(1)は、2人のボールの軌道の式(要は2点を通る放物線)を求めます。2次関数は係数が3つ必要なので3点を決めないと決まりませんが、2点まで指定されれば文字は1つで済みます。条件式の数だけ文字は減るんでしたね。
(詳細は拙著シリーズ 数学I 2次関数 p.39 参照)
問題文でaは指定されていますので、あとは(0,3)(4,3)を通るように残りの係数は決めなさいということです。定数項は3と分かります。あとはy=3との共有点が0,4であることを利用すると、簡単に「キ」=4と分かりますね。もちろん(4,3)代入でもOK。平方完成も簡単です。
花子さんの方は式が複雑になるため、与えてくれています。ごつい式ですが、使うのは軸だけなので2-1/8pです。上に凸の放物線なので、pが負であることに注意すれば2より大きいと分かります。プロの方はx=0,4で同じ高さなので、真ん中のx=2が軸です。
(2)はさらに文章が続き、図も追加され、ここでスルーした人もいるかもです。会話は基本的に無視しても大丈夫です。今回も、枠外の文章と図だけで答えられます。「よって、、、」の文章から読んでも十分です。
要は、P0とMの他に、Dも通るようにしてほしいということです。あとはDの座標だけ特定すればOK。すぐ上に、ADの長さが書いてありますね。最初にaだけ使って表されていますので、Dの座標を入れればaも出ます。計算はちょっとメンドウで、3.8×3.8の計算を避けるようにうまくくくるとラク。(解説動画参照のこと)
花子さんの方もMを通るようにpを決めて、頂点を出してますが、値が3.4と与えられています。どっちの頂点が上にあるかなので、要は、プロの放物線の頂点だけ自力で出してね、ということです。頂点は-4a+3と出てますので、出したaを使って計算します。これで最後まで答えられます。
√3の計算もあり、具体的な値の計算もさせるところが、数IAの傾向のようです。
KATSUYAの解答時間7:45 時間が迫っている場合は、後半3問をスルーするのも手でしょう。
☆第3問 (場合の数:塗分け問題、B、15分【10分】)
8割難易度・・・普通 満点難易度・・・やや難
今年は確率が出ず、最後まで場合の数を聞いてきました。塗分けを抽象化したような問題です。
最初から詰まると全滅になることを防ぐためか、計算例が書かれており、非常に親切です。これに従えば、図Bは楽勝です。5・4・4・4ですね。
(2)も5・4・3となります。ここまでは楽勝でしょう。
(3)は、赤の2ヶ所が{1,3}か{2,4}の2通り、残りの2ヶ所は赤以外ならOKで4・4通りとすればOK。
(4)は図が複雑に見えますが、赤の3つも青の2つも、下の2番~6番に塗らなければいけません。1番の球に塗ると、同じ色が他で使えませんので。なので、5か所中3か所の選び方の総数5C3と、1番は赤と青以外ならOKです。
(5)(6)の3問は差がつくかと。(5)では考え方が書いてありますが、これが理解できないと(5)も答えられず、「サシス」の結果を使うため、(6)も出来ません。
要は、図Fの場合から、4番と3番が同じ色になっている場合を除けば図Dの場合になるということです。それ(除く状況)が、どの図に塗る場合と同じかを考える問題。4番と3番が同じ色なので、「1-4のひもを1-3に繋ぎ変えてもいいよね」という考えにたどり着けば勝ちです。3つのサイクルの図Cの場合だと分かります。
これで320-60=260と出ます。
最後は、共通テストの特徴である「丸投げ」タイプです。(5)の誘導を自分で全部やってね、よろしく。という問題。昨年の整数ほど鬼畜ではないですが、意味が分からずやっていると手が止まるでしょう。
同じように4と5をちぎった場合は、一直線なので5・4・4・4・4=1280通りあります。ここから、4と5で同じ色の場合を除くことを考えますが、そのときは1-5のひもを1-4に繋ぎ変えたものと同じなので、さっき出した260通りを引けばOKということです。
KATSUYAの解答時間5:48 (5)の誘導がすんなり理解出来れば計算自体はかなりラク。
☆第4問 (整数:1次不定方程式、AB、15分【10分】)
8割難易度・・・普通 満点難易度・・・やや難
今年の整数問題は、タイルの敷き詰め問題。中学受験を経験している人からしたらラッキー問題でしょう。逆に高校の数学の問題集にはあんまりなさそう。
「アイ」を22と答えた人、どれくらいいますか?これは意図的にひっかけに来ていると思われます。素数なので11と答えましょう。正方形にするには、462と110の最小公倍数でOKですね。
次は、言い方が遠回しですが、462x-110y が取れる最も小さい整数(の絶対値)を聞いています。これが最大公約数22であることは知っておきたいですね。
22(21x-5y) となりますが、21x-5yの21と5が互いに素なので、この式から1を作れます。証明も含めて、この事実は記憶に値します。
あとは、21x-5y=-1となるx、yを求めれば「ケコサシ」も出せます。xの方に1,2,3,4を入れれば必ず見つかります(解説動画参照)ので、そのことを利用しましょう。どっちがどっちより長いのかを間違えないように。
後半は青の長方形を追加しますが、やることはあまり変わりません。縦の長さは110、154の公倍数でないといけませんね。最後に正方形を作るには、縦が770の倍数、横は462x+363yで、これは33(←462と363の最大公約数)の倍数となります。よって、770の倍数かつ33の倍数で2310の倍数ということです。
「ニヌネノ」はあまり誘導もなく、差がつきそうですね。2310の倍数ですが、462x+363y=2310となるような自然数x、yは存在しません。x=5、y=0は解となりますが、これだと赤のタイルしか使わないことになってしまします。
次の4620でも、x=10、y=0となり、こちらも赤のみです。6930になってようやくx=4、y=14が見つかります。
自然数解があるかないかを判断する操作が、1次不定方程式にかなり慣れていないと時間がかかると思われますので、時間的に最後はきついのではないかと思います。(素早く見つける操作については解説動画参照のこと)
KATSUYAの解答時間5:23 これも去年の1/4ぐらい^^; データと整数が去年のIAを最難にしたと言っても過言ではないですね。
第5問 (平面図形:作図と証明、長さ、B、18分【12分】)
8割難易度・・・普通 満点難易度・・・やや難
今年の平面図形は2021年第2日程と同じ流れで、作図をしたときに、その図形が持つ性質を証明するという問題。まずは手順にそって図に追加していきましょう。
前半は文章通りに丁寧に追っていけば出来るはずです。図から、文章以外にOC⊥ABであること、DF=FGであることも使えるので、ここがポイント。
これにより、OCHGは対角が両方90°となり、CHGO同一円周上です。すると対角の外角が等しいので、CHGをFOGに移せます。FOGの移り先が少しややこしめ。DF=FG、ODGは2等辺三角形であることから、FOG=FODです。DOGはFOGの2倍の角度ですが、これは中心角ですので、円周角DEGにすれば半分になり、FOGと同じになります。
DEGをCEGとみなすと、CEGとCHGが同じなので、4点CHGEも同一円周上ですが、CHGが入っているので、最初の円と同じ円というわけですね。その円はOHが直径ですので、円周角OEH=90°で接線ということです。
後半は、直線を円の外に引いて、ほぼ同じような図を作りますが、「丸投げ」タイプです。前半の証明の過程を同じようにたどることで、PTSがどこと等しいかを判断します。QSの中点をMとすると
PTS→SOM→QOSがその2倍→円周角QRSにして元に戻す
という流れとなります。
それにより、PSTO(対角が2つとも90°)とPSTR(PTSの対角の外角がQRSで等しい:ここがムズイか)が同一円周上にあることが言えるので、同じ円が5点とも通ると分かります。OTが直径になるためORTは直角でRTは元の円の接線になります。
なお、STも接線なので、RT=STです。これに気づかないとRTは出せません。また、OTが直径なので、求める円の半径はその半分です。計算不要で発想重視な分、最後の2問は難しいかもしれません。
KATSUYAの解答時間 9:44 流れ的にPSTRが同一円周上なのだろうとは思ったが、すぐには理由が分からず、そこでロス。
関連リンク
> 共通テスト 2023年 本試IIB 難易度評価 (アップ次第、見れるようになります)
お知らせ
> 全問実況解説動画も上げましたので、こちらも参考にしてみてください。(←動画が下に出ない場合はここをクリック)
3.対策
今年ぐらいの難易度が例年並みになっていくのかなぁと思います。
センター試験に比べると、テクニックを駆使するタイプの問題ではなく、比較的目新しい題材を見て内容を把握し、自分の知識と合わせて数学的に考察させるタイプに変わりつつあるのは昨年の感想と同じです。
「あ、これ軸分けの問題ね、はいはい!」のようなタイプは今後減っていくのかな、という感じがします。(2次ではもちろん必要なテクニックですよ!!)
また、数値を具体的に計算しない代わりに、一般化した場合にどのようになると思われるかを考察する問題も今後出てくるようになるでしょう。(2次関数の最後など)
「丸投げ」タイプにも要注意。さっと問題を見渡して、「丸投げされるな」と思ったら、少し丁寧に読みましょう。満点狙いでないなら、最後はスルーするのもあり。
2次試験の傾向がこれに追随するとは考えにくいので、2次でばりばり数学がいる人でも、共通テストのような傾向の問題に触れておく必要があると思います。センターよりもあなどれなくなってしまいましたね。
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