東京理科大学 工学部 数学 講評 | 2021年大学入試数学

   

●理科大の数学シリーズです。今回は工学部(2021年)です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。今年度は理科大シリーズを追加していこうと思います。

理科大の大学入試は入試基礎演習および入試標準演習として非常に適切ですので、取り上げてみたいと思います。


理科大シリーズ

東京理科大学(工学部)です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。





知らなかった場合は、言葉を覚えるだけでなく、必ず教科書や問題集等で該当する類題を数題見つけ、演習することで定着させてください。自分で探して自分で解く。これが一番身に付きます。

★お知らせ★

YouTube チャンネルを開設しました 最初は試運転を兼ねて共通テスト数学について少しづつUPしています。

Twitter始めました こちらもよろしくお願いいたします^^

Principle Pieceシリーズの販売を再開しました^^ 原則習得のための参考書です。



東京理科大学(工学部)
(100分、4問、ハイブリッド型)

※ハイブリッド型・・・穴埋め形式と記述形式の混合型

1.全体傾向~質・量ともにかなり高く厳しい~

大問3問構成で、第1問が小問3つ、第2問と第3問が一部記述式です。第2問と第3問が難しめで、計算量も多め。特に第3問はかなり厳しかったと思われます。小問3つも計算量がかなり多い問題が散見されます。

全体的に入試標準演習レベルで、第3問はそれを超えるレベルです。

制限時間100分ですべて解き切るのは至難の業でしょう。

 

解答時間は170分【123分】(←穴埋め考慮)

 

2.各問の難易度

本文にある緑字(この色)は、大学入試数学を解く上で必要な原則を表しています。

☆第1問(1)…【複素数平面】偏角が最大・最小となる点、純虚数条件など(B、30分【20分】、Lv.2)

複素数平面に関する総合問題。円周上の点のうち、偏角が最大・最小の点を求める問題と、そのn乗が純虚数になる条件などです。ある程度知識を持った上で、穴埋めであることを最大限に活用していかないと時間をかなり持っていかれます。

(a)は円周上の点における偏角の最大・最小なので、接するときを考えるのが原則です。中心の偏角が45°、中心と原点、接点を結ぶと1:2:√3の直角二等辺になることに気づけば、βの偏角が75°、γの偏角が15°です。75°や15°のsin、cosの値はは私大受験者であれば必須ですのでこれを利用してサクッと答えたいところ。(絶対値も2√6とすぐわかる)

(b)はただの偏角比較です。純虚数条件は偏角が「π/2×奇数」です。あとは整数の個数に帰着されますね。

(c)は2021乗して純虚数になる条件。偏角θとでもおいて、2021θが「π/2×奇数」になればOK。あとは求めたθが15°と75°の間にある条件を求めます。端っこの15°、75°でない限り図形的に2個ずつあるので注意。ケタ的にも気づくと思います。

 

全体のセットではマシな方。(b)か(c)の片方を落とすぐらいなら。2ミス以上はキツイか。

 

第1問(2)…【三角比】面積、角の2等分線、内接円の半径など(AB、20分【13分】、Lv.2)

三角比からで、一部平面図形の問題がある感じの三角形総合問題。いろいろ聞いてきますし、答えも見た感じ繁雑ですが、本問がこのセットの中で一番マシです。

(a)は余弦の値と面積。3辺が分かっているので変形余弦です。あとはsinにして面積公式です。3辺が分かっているので、穴埋めならヘロンの公式でも素早く出せます。

(b)は角の二等分線です。角度が分かっている場合は面積を2通りに表す方法でもできますが、そうでないときは余弦定理を2回使う方法がいいでしょう。最初の変形余弦でcosBが出たので、あとABDで余弦定理を用います。角の二等分線なのでBD:DC=BA:ACを利用しでBDも出ます。

こちらも穴埋めなので、角の二等分線を一発で出す公式に入れれば一発で答えが出ます。これを知っているとかなり早かったと思います。

(c)内接円の半径は面積媒介です。PQRの面積は外側の面積を削るのがいいと思います。接点までの長さを出す問題は平面図形でよくありますが、どこかをxとおいてぐるっと一周すれば方程式が出来ます。

外側の3つの三角形なら全体との比率がすぐ出せます。Sの何倍かを求めて最後にSの値を入れるのが効率的だったと思います。難易度は決して高くないですが、計算の仕方次第ではかなり繁雑になり、差はついたでしょう。

 

 

拙著シリーズPrinciple Piece 数学I~三角比~では、ヘロンの公式はもちろん、角の二等分線に関する公式や活用も証明付きで扱っています^^

 

セット全体と考えるとこの問題は落とせない。裏ワザ公式を駆使したりすれば時間的にも貯金が出来る。

 

 

第1問(3)…【確率】玉に反対色を入れていく(BC、30分【20分】、Lv.2)

確率の問題です。赤玉と白玉において、取り出した玉と逆の色を追加していくルールです。こポリアのツボの逆パターンで大物の題材かと思いきや、ただ計算がメンドウなだけの問題です。慎重に場合分けしても、計算まで合わせられるかどうかです。

最初はカンタンです。「白赤」「赤白」のどちらかです。

赤が2個以下のときは4回中白は1回以下です。「白赤赤赤」「赤白赤赤」「赤赤白赤」「赤赤赤白」の場合を求めます。袋に玉を追加する場合、順番が変わると確率も変わるので単純に4倍しないように。あと、「赤赤赤赤」ですね。

 

(b)は全部2個ずつにした感じで、計算だけさらにメンドウになっています。2回試行して赤4個ということは、計2個白をとっています。なので、「赤赤 白白」「白白 赤赤」「赤白 赤白」の場合です。2回目を取り出すときの袋の組成に十分注意し、慎重に計算してここまでは正解したい。

最後はケタ数的にも捨て問でしょう。4個、5個、6個の場合ということですが、取り出し方のパターンも多く、まともにあたるとキツイです。パターンが多いと感じた時には、「対称性はないか」「余事象はどうか」と考えるのが原則。

今回は、この「対称性+余事象」の合わせ技に気づいたかどうかです。まず、余事象は赤3個か赤2個、あるいは赤7個か赤8個ですが、後者のときは逆に白3個か白2個なので、前者と後者では対称性で確率は同じです。

なので、赤3個と赤2個のときを調べて2倍し、1から引けばよかったというわけです。全部で6個取り出す中で、白が1個か0個である場合なので、パターンもまだラク。

「RR RR RR」「RR RR RW」「RR RW RR」「RW RR RR」の4通りです。ここまで気づけたなら、袋の組成に気を付けて超慎重に計算して正解までしたいですね。

 

 

ある程度時間をかけて正解するか、時間を節約するためにさくっと最後を捨てるかの2択。

 

 

 

☆第2問…【整数or数列】領域内の格子点の個数(C、40分【24分】、Lv.2)

グラフ(直線)で囲まれた部分の格子点の個数を求める問題です。直線上なので数列の知識はなくても解けますので、どちらかというと整数問題でしょうか。式はややこしく見えますが、きれいになるように設定されていますので、それに気づけば途中までは行けたのでは。

(1)ですが、最初に「う」で一般的に求めてから「あ」「い」を埋めるのもあり。意図としては、n=1,2で試させて、領域の境界の交点がきれいになることを予想してほしいのでしょう。

y=-nを入れるとx=nときれいに出るところがポイントです。3格子点で作られる3角形の中の格子点なので、2倍して長方形にして考えるのが原則。

あとは対角線上の交点の数です。結局領域の境界の2交点しかないことに気づけばこちらの勝ち。係数4n-1、2n-1が互いに素であることが理由です。記述で示す場合は、文字式どうしなのでユークリッドがいいでしょう。

答えは、長方形内の格子点を出し、対角線上の2個を引き、2で割ればOKです。

 

(2)は絶対値もついていますし、式も2つあるので見た目キツイですが、x,yが入れ替わっているだけなので、逆関数的な発想があれば、交点がy=x、y=-x上にあるはずだと分かると思います。ここが出来ないとこれ以降全滅なので、穴埋めであることを利用して、n=1,2あたりで試してでもムリヤリ正解したい。。

(a)の文章はかなり親切で、まさにy=x上に2点、y=-x上に2点あると言っていますなので、素直に代入すればanもbnも出ますね。ここは穴埋め形式であることを利用したいです。

(b)は(a)が分かれば、ひし形だと分かると思いますので、対角線×対角線÷2で出せます。

(c)は難問。(1)の結果も使えることに気づけるかどうか。(1)の領域がひし形の外側に4つあります。さらに、右下と左上に正方形が見えれば、大きな正方形から(1)の格子点の数を4倍引いて、さらに小さい正方形の格子点を2倍引けばOK。ここまで気づければ勝ちでしょう。ここは記述式なので、気づいたらそのことを述べるだけでも部分点はあるはず。

 

 

(1)(b)が無理だと厳しいが、(a)は数えてでも欲しい。(2)あとは(a)(b)が取れるかどうか。(c)は捨ててもいい。(1)の利用に気づけば答案で部分点。

 

 

第3問…【微積分総合(図形)】媒介変数で表されたグラフの斜軸回転体の体積(CD、50分【40分】、Lv.3)

最後は本格的な数IIIの微積分総合問題です。媒介変数で表された図形に関して、極値やら接線やらを聞かれ、最後にy=xを軸に回転させた体積を求めます。直計算量も全体的に多く、最後の体積の計算は計算量も発想のレベルも高めでかなりきついです。

(1)は素直に微分するだけです。傾きはdy/dθ÷dx/dθで求めます。-1になるときは、sinθcosθの項が消えるのですぐにわかるかと。この点(θ=45°、225°)が最後の(3)で関わってきます。接線の式はθが出れば公式にあてはめるだけです。

(2)(3)はセットで行きます。先に(3)まで見ると、(2)は(3)で斜軸回転するための準備だと分かります。斜軸回転体の基本式は∫π(垂線の距離)^2d(回転軸) です。本問の式にあてはめればちょうど∫Sdhとなります。このSとdhを、同じ変数(例えばtとdt)に置換積分することが基本の流れです。

(2)でまず垂線の長さ(円の半径)と、hを出すことになりますが、Cの概形がある程度イメージできないと手が付きにくいでしょう。自己交差するため、経験がないと概形もかなりつかみにくかったのではないでしょうか。x、yを微分した式は(1)の接線の傾きを出すときに出しています。それぞれがゼロになるタイミングを調べて、変化表を書いてようやくわかる感じです。

数式だけで押せなくもないです。まず、Sの半径は(X,Y)と直線y=xの距離ですから、点と直線の距離公式にあてはめます。

hを出すには、点Qの座標(θ=225°)と垂線の足の座標が必要です。y=xへの垂線なので、対称点が(Y,X)(←XとYを入れ替えたもの)と気づけば(X+Y/2、X+Y/2)と分かります。傾き1なので、座標の差を√2倍すればOK。

(3)は(2)の式のX,Yをすべてθに置換して積分します。そこまでは行けた人もいると思いますが、そのままθに置換しただけではかなりキツイ積分計算になることも分かったかと。ここで、sinθ+cosθ=tとでもおいて、もう一度置換できたかどうかです。この置換積分により、積分計算はかなりになります。

s+cの式やc-sの式が多いことや、積分区間などから気づくことになりますが、初見ではまず無理な置換積分だと思います。ほどんどの受験生がθに置換した積分式まで書き終えて手が止まったでしょう。

(3)は捨て問。そもそも時間的にも手がついたかどうか。(1)だけはせめて取りたい。(2)まで手がついていればOKでしょう。

 

 

3.対策~過去問を早めに~

理科大は独特の面倒さがありますので、まず1年分でいいので早めにやっておいた方がいいでしょう。チャート式(青)のような網羅的問題集はやり方が即出てくるように訓練した上で、入試標準レベル演習までやっていろんなパターンに触れておき、さらに解説をしっかり読んで、「穴埋め形式なら使えそう」と思ったテクニックは積極的に自分のものにしていきましょう。

理科大は過去問が良問で非常に優秀ですので、古いものも含めて出来る限りしておきましょう。

 

量をこなす演習:じっくり演習=7:3ぐらいでOKです。ある程度パターンが身についたと思ったら、早めに過去問演習に移行してもいいでしょう。

以上です^^

 

>> 他の理科大数学も見てみる

 

 

★お知らせ★

YouTube チャンネルを開設しました 最初は試運転を兼ねて共通テスト数学について少しづつUPしています。

Twitter始めました こちらもよろしくお願いいたします^^

 

 

関連する拙著【Principle Piece】シリーズ(Amazon Kindleにて販売中)

★ 数学Ⅰ 数と式

★ 数学Ⅰ 論理と集合

★ 数学Ⅰ 2次関数 

★ 数学Ⅰ 三角比 (NEW!!)

 - 2021年度大学入試数学, 東京理科大学入試数学 , , , , , , , ,