数学の参考書は何を基準に選ぶのか
2022/08/04
高校数学の参考書は、他の科目に比べて種類があまりに多いため、自分に合っている参考書はいったいどれなのか分からなくなることもあります。
「自分のレベルに合ったもの」というのはもちろんなのですが、自分だけでなく、選ぶ相手の参考書にもタイプがあります。そのタイプを知らずして、適切な参考書を選ぶことはできません。前者は他のサイトでもよく言われることですが、後者についてはあまり重要視されていないようです。
参考書のタイプは、数学の学習ステップに合わせて分けることができます。これから、学習ステップと参考書のタイプを紐づけて解説していきます。
大学受験までの数学の学習ステップ
高校数学において、大学受験までの学習ステップは、以下のように分けられます。
STEP0:高校数学を予習、先取りする(プレ学習)
STEP1:学校での教科書による学習・公式暗記・基礎練習・定期テスト勉強(日常学習)
STEP2:入試における典型的な問題とその解法の網羅的学習(原則習得)
STEP3:基礎的な入試問題を通して、単問と入試問題のギャップを肌で感じる(入試基礎演習)
STEP4:標準的な入試問題を通して、STEP2で習得した原則を組み合わせて解く(入試標準演習)
STEP5:総合的な入試問題を通して、最後の仕上げを行う(直前・仕上げ)
このステップを正しく行うことで、数学は効率よく勉強することができます。時間がない学生さんも多くいるかと思いますが、無理に段階を飛ばそうとするのはよくありません。
例えば、「定期テストだと取れるが、模試になると解けない」という人の多くはSTEP2が飛んでいる可能性がありますし、「入試数学になるとやったことない問題ばっかりだ」と感じる人の多くは、STEP3を飛ばしてしまっています。
今、自分がどの位置にいるのか、どの参考書がどのSTEPのものなのかを両方把握することで参考書選びがはかどります。
0.STEP0:「プレ学習」タイプの参考書
STEP0は、まだその単元が未習の段階のもので、学校で教わる前です。あるいは、完全に忘れてしまったけれども、もう一度勉強しなおす必要がある人は、この「プレ学習」段階です。従って、なるべく基本的なことが詳しく書かれており、最低限のレベルの練習問題だけが記載されているような参考書が、このタイプになります。
以下のように、「やさしい」という名前がついているものなどは、「プレ学習」タイプのものが多いです。(※やさしい理系数学は例外!!)
(これは数学Iですが、数学Aなどもあります)
→ STEP0:「プレ学習」タイプの参考書一覧(リンク先作成中)
1.STEP1:「日常学習」タイプの参考書
STEP1は、学校の授業で習っている段階を指します。授業を聞いて、教科書にある公式を練習問題を通して使えるようにする、基本的なその単元の問題を傍用問題集などを通して定着させる、定期試験で定着度合いを把握する、といったものは、全てこの「日常学習」段階になります。従って、参考書というよりは、教科書と傍用問題集が大体「日常学習」タイプの仲間です。
市販の場合、「日常学習」タイプの参考書(問題集)は解説が不親切なものが多いので、ここでは、「日常学習」タイプに当てはまり、かつ解説が付いている市販の参考書を1つ挙げておきます。
学校から配布される4STEPなどは、解説集つきなのでそれで問題はないかと思いますが、解説を配布されたなかったり、配布されたものが微妙で物足りないという場合には、このタイプのものを購入していくようにしましょう。
2.STEP2:「原則習得」タイプの参考書
学校で習い終わった単元について、その復習を兼ねて、さらに新しいタイプの典型問題についてその解法を習得していく段階です。長期休み中に、その学期に習った単元を復習したりする場合は、この「原則習得」段階になります。
STEP1よりも、さらに多くのパターン問題に触れていく段階なので、STEP1で習ったことのみをただ復習しているような場合は、ここに進んだことにはなりませんので、心当たりのある人は注意が必要です。
かの有名な青チャートや、Focus Goldなどをはじめとする各種網羅系参考書は、全てこの「原則習得」タイプの参考書です。
→ 青チャートのレベル等については、こちらを参照してください
「原則習得」段階の特徴は、STEP1までで学習したその基礎力を使って、自分の力で解法を身につけていく段階であるということです。従って、独学でも進められるような、かつ漏れの少ない網羅系の参考書が必要になります。そこで、青チャートのような参考書に白羽の矢が立つわけですね。
→ STEP2:「原則習得」タイプの参考書一覧(リンク先作成中)
>> 青チャートに代表されるような「原則習得」タイプと、その後に演習する1対1対応に代表されるような「入試基礎演習」タイプを合わせたような参考書もあります
3.STEP3:「入試基礎演習」タイプの参考書
STEP2を終えたら、実際の入試問題に触れていきます。入試問題のうち基礎的なレベルものや、STEP2で習得した原則を、そのまま用いれば最後まで解けるようなタイプの問題演習を行っていきます。おそらく、全STEPの中で、一番きちんとやっている人が少ない段階です。
しかし、よほど数学のセンスがある人でない限りは、この段階なしにSTEP4の「入試標準演習」へ移行するのは難しいです。チャートを一通り終えたとしても、模試や入試問題になると、まだまだギャップを感じてしまうでしょう。
この段階をきちんとできない人が多い理由として、数多くある参考書の中で、「入試基礎演習」タイプの参考書だけが異常に少ないことが挙げられます。例えば、クリアー演習IA(受験用)などはこの段階の参考書なのですが、学校採用専門で市販ではありません。
あるいは、間違ったSTEPでその参考書に取り組んでいるパターンもあります。数学を2次で使う受験生(特に理系が多いかな)の間でよく知られている「1対1対応の演習」や、同じ東京出版から出ている「入試基礎演習」(名前のまんま)などは、「入試基礎演習」タイプの問題集です。これらの問題には、STEP2で手法を身に付けた後でないと、少しつらいでしょう。
また、1つの問題に対して複数の解法を学んでいくのも、この「入試基礎演習」の段階で行うことです。STEP2の段階でこれを行いたがる人が非常に多いですが、一通り習得し終えた後でないと、別解を見ても頭の中で整理されていきませんので、あまり効率的ではありません。従って、青チャートで学んでいる段階では、まずはそこに書かれていることを素直に受け入れるほうがいい、ということです。
先ほどあげた「1対1対応の演習」、「入試基礎演習」は、この「別解」という点で非常に優れています。別解ももちろんですが、答案の途中の過程においても、「この部分は別の考え方で出してもOKです」などの注釈が細かく書かれているので、問題のタイプとアプローチの対応関係がさらに整理されていきます。
STEP2に比べると飛ばされがちですが、STEP2と合わせて絶対に踏んでおきたいSTEPがこのSTEP3の入試基礎演習段階になります。
>> 青チャートに代表されるような「原則習得」タイプと、その後に演習する1対1対応に代表されるような「入試基礎演習」タイプを合わせたような参考書もあります
4.STEP4:「入試標準演習」タイプの参考書
「入試基礎演習」の段階で、入試数学と日常学習(単問)のギャップを埋められたら、本格的に自分のレベルに向けて演習を始めていく段階が、この「入試標準演習」のステップです。問題の文章が長くなったり、複数の分野にまたがったりした場合の入試問題を解いていきます。
この段階の参考書は、STEP3に比べると多く存在しています。数研出版の「入試問題集」、「重要問題集」は「入試標準演習」のタイプの問題集です。「入試問題集」と名前の付く問題集は、このタイプが多いです。下記のプラチカもこのタイプに当てはまります。
→ STEP4:「入試標準演習」タイプの参考書一覧(リンク先作成中)
5.STEP5:「直前・仕上げ」タイプの参考書
STEP4でこなした経験をさらに磨きあげるために、入試問題の中でも難しめの問題を通して、じっくり考える段階です。数学を得点源にしたい場合には、この「直前・仕上げ」段階まで行うべきでしょう。逆に、数学の配点が低いなど、数学が相対的に重要でない場合は、このステップを無視して過去問等へ移行してもOKです。
「直前・仕上げ」タイプの参考書としては、問題数が少なめ(150題前後かそれ以下)のものが多いです。これを超えると、よくいえば網羅系、悪く言えば玉石混合系なので、STEP4の問題集のタイプに近くなります。この段階では、難しめの問題に焦点を当てたいので、精選された問題集のほうがいいでしょう。
タイトルと難易度のギャップで有名な「やさしい理系数学」などは、このタイプの参考書です。「ハイレベル理系数学」もこのタイプですが、さらに難易度が上です。志望校に応じて、片方を選べばいいでしょう。
→ 「直前・仕上げ」タイプの参考書一覧(リンク先作成中)
まとめ~自分と参考書の「タイプ」を見極める~
数学の参考書のタイプを、学習ステップと紐づけて解説していきました。数学に限ったことではありませんが、参考書は自分の「パートナー」です。自分の性格だけでなく、相手の性格も重要なことは言うまでもありません。
参考書選びの際には、自分がどの段階にいるのかと、参考書がどの段階に適している「タイプ」のものなのかを、両方把握してから、購入を検討していきましょう。
>> 青チャートに代表されるような「原則習得」タイプと、その後に演習する1対1対応に代表されるような「入試基礎演習」タイプを合わせたような参考書もあります