慶應大学 医学部 | 2018年大学入試数学
2022/10/17
●2018年度大学入試数学評価を書いていきます。今回慶応大学(医学部)です。
いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2018年 大学入試数学の評価を書いていきます。
入試シーズン中はコメントの返信が大幅に遅れることがあります。ご了承ください。
2018年大学入試(私大)シリーズ。
慶応大学(医学部)です。
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。
したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。
慶応大学(医学部)
(試験時間100分、4問、ハイブリッド型)
1.全体総評~例年よりは手が付けやすいか~
2017年に引き続き微易化だと思います。説明しづらい問題はいくつかりますが、穴埋めを利用して計算だけして埋めていける部分もあります。どれも最後まで行くには質・量ともに厳しい問題が多いですが、それでも途中まではどの問題も手がつけられるセットです。
試験時間100分に対し、
標準回答時間は197分【124分】(←穴埋め考慮)
2017年:185分【128分】
2016年:200分【125分】
2015年:213分【115分】
2014年:165分
※本エントリーの【 】内は、慶応医学部受験者層のレベルを考慮していますので、その他の大学に比べて短めです。それでも、100分をオーバーしていますけど^^;
2.合格ライン(科目全体では60%)
第1問は「あ」~「お」までは抑える。「か」「き」は経験の有無で差がつく。
第2問の名物「確率と漸化式」は状況を把握できれば普段よりやさしいが、意外と把握しづらいのでキー問題。
第3問は言われた通りにやれば「く」までは行ける。「け」が出来ないとあとが厳しいが、「こ」だけは埋めたい。9問確保。
第4問は残り時間との勝負。これも言われた通りにやれば(4)「く」までは行けるはず。「け」以降は時間もかなりかかる上に題材としても難しく、厳しい。
第2問の出来次第かと思われますが、出来ないとボーダーには達しないかと。65%~70%ぐらいでしょうか。
3.各問の難易度
第1問(1)・・・【指数・対数】対数不等式の範囲(AB,10分【5分】、Lv.1)
とりあえず与えられた不等式を解きます、底はとっとと合わせましょう。
(拙著シリーズ(白) 数学II 指数関数・対数関数 p.9-10)
題意は(意図的に?)わかりにくく書いてありますが、不等式の解がx<ー4 の範囲に入るようなaの範囲を出せばOKということです。解の公式でよかったと思います。a>1に注意。
第1問(2)・・・【平面ベクトル】円周上の3点(AB,12分【8分】、Lv.1)
平面ベクトル(空間でもいいですけど)の問題で、典型パターンです。円周上の3つのベクトルについては、出したい内積に応じて1つだけ移項するんでしたね。a・b、b・c、c・a全て内積を出す必要があります。
本学受験者にとっては作業なので、スピード勝負ですね。
☆第1問(3)・・・【場合の数】同じものを含む円順列(CD,40分【25分】、Lv.3)
円順列です。設定は超単純ですが、数えるのはかなりメンドウで、演習では是非とも触れたい良問ですが、試験としてはやな問題です。
N1=2は瞬殺だと思いますが、N2、N3は意外と難しいと思います。最小周期に着目するのが一番効率的かと思います。なお、超高校級ですが、一応公式もあるようですので、知っていると割とすぐ解けます。(公式を覚えるのに苦労しますが^^;)
本問題についての解説動画を上げています。参考にしてみてください^^
☆第2問・・・【確率+数列+極限】確率、漸化式、指数の極限(BC、35分【21分】、Lv.2)
今年も出ました。慶応医学部の名物、確率と漸化式です。今年も割と穏やかですが、状況の把握を間違えると「あ」「え」「お」しか取れませんので、差がつきやすいです。
anの事象・・・A{1、2、・・・k}とB{0、1、2}で、これは間違えないかと。
bnは2つに分かれます。
bnの事象・・・A{1、1、2、・・・・k}とB{0、2}かA{1、2、2・・・・k}と{0、1}になります。Aにはk+1枚入っているので注意。
私は、A{0.1.2・・・・k}、B{1、2}の場合も考えてしまい、形にあわずにうろうろしていました。ルール上、0がAに入ることがないんですね。
n、kといろいろ入っていますが、状況が分かれば落ち着いて原則に従うだけです。
(拙著シリーズ(白) 数学A 確率 p.39-43)
3枚あるときは、その直前も3枚なので、「あ」は楽勝かと。2枚になるときは、直前は3枚か2枚です。2枚のときは上記のように2つの事象に分かれますが、そこから2枚を維持する確率は、どちらも同じなので、結果的にbn-1にその確率をかければOK。
確率で漸化式を考えるときは、与えられている事象だけでなく、有り得る場合を全て分解して考えておくことが大事です。
(2)はanだけ聞いています。ただの等比数列なのでいいですね。
(拙著シリーズ(白) 数学B 数列 p.31)
nのところもkに変えて極限をとることで、e絡みの極限になります。原則が使えますね。
(拙著シリーズ(白) 数学III 微分法 p.22-23 ※式は割愛)
(1+1/n)^n と覚えるというよりは、「(1+●)とあれば、指数には●の逆数が入れば基本形」と覚えておくほうがいいです。
bnはk=3を入れるので具体的になり、漸化式もパターンです。KO医なので、この程度はノーヒントで出させますね。
(拙著シリーズ(白) 数学B 数列 p.34-35 ※式などは割愛)
特性方程式型にするなり、階差型に直すなりして出しましょう。
☆第3問・・・【三角関数+複素数平面+積分】和積、面積、三角関数の対称式、7乗根絡み(C、40分【25分】、Lv.3)
三角関数と複素数平面絡みの問題です。面積はオマケ。一見関連がなさそうですが、(1)~(3)は全てつながっており、かなりうまく設定されています。
最初は積→和の項式を用います。角度が2x、4x、6xなので、両端のsinxsin3xで適用します。面積は和になおした式で求めます。三角関数の積分の原則ですね。
(拙著シリーズ(白) 数学III 積分法 p.14-16)
(2)も積和です。これは各項ごとにもちればOK。その式にπ/7を代入します。180°-θの公式などで0と分かります。
(3)の「け」は難しいかもしれませんが、Aは2乗するとCの項とsinの2乗の項が出ること、Bは倍角でsinの2乗の項が出ることなどが整理出来れば、調整できそうです。
「こ」、「さ」は複素数平面絡みです。1+z+z^2+・・・・z^6=0などのn乗根絡みの原則を用いましょう。
(拙著シリーズ(白) 数学III 複素数平面 p.27 ※一覧は省略)
Bは、z^2+z^(-4)+z^(-6)の実部です。これがz^2+z^3+zであること、共役複素数z^5+z^4+z^6の実部と同じであることなども、上記原則を用いて自在な式変形が出来れば「さ」も余裕です。Bが出ることで、Aの「し」も出ます。
「す」でf(x)に戻ってきます。和に変形したので、これに代入するとうまくいきます。
第4問・・・【積分法の応用】媒介変数表示と関数の凹凸、弧長、曲線の回転、軌跡と面積(CD、60分【40分】、Lv.3)
最後は、数IIIの総合問題で、昨年とちょこっとだけ似ています。容器型の曲線をすべらず転がす(傾ける)という作業がKO医はお好きなようです。
今年はサイクロイド系の媒介変数で、ひっくり返してx軸に置いたような形になります。(1)はx、y変化表を書けば問題ないでしょう。(2)は第2次導関数を考えますが、「単純にg、hを2回微分する」わけではありません。さすがに本学受験者ならやらないかと思いますが・・・
(3)の弧長、(4)の「く」までは教科書レベルで作業でしょう。
「け」からは難易度UP。この直線の傾きから、なす角がt/2になることが見抜けるかどうかです。式で攻めるなら、分子sint=2sint/2・cos2/t、分母 1+cost=2cos^2 2/t として約分です。QtPtベクトルの成分表示でも見やすくなります。
「こ」「さ」は経験がないとほぼ壊滅でしょう。直線の(3)で考える材料は出ているのですが、これで見抜くのは厳しいです。傾けるという作業を、「Qtを中心とした回転と平行移動の合成」と考えるということですね。
分かったとしてもa(t)、b(t)まで、さらには媒介変数表示の面積まで求めるのは時間的にも至難の業でしょう。
※今年は第2問でミスしたこともあり、全て終了したときには100分を十数秒過ぎていました・・・。やはりKO医はただものではないセットですね。
4.対策~癖と計算力の多さに慣れる~
傾向、形式ともに癖の強いセットです。確率と漸化式は名物で、微積と極限もボリュームの大きいものが出ます。計算力、演習ともに必要です。
高校2年生の段階でも、典型パターンの7割が習得済みであることが望ましいです。センターは余裕で9割とれるようなレベルにいないと厳しいでしょう。本学受験生の高2で、数IIIにまだ手がついていない人は、いますぐ独習してください。そんなペースでは本学部の試験には耐えれません。教科書ガイドと青チャがあれば進められます。
高3に入ったら、もう入試問題演習に入りたいところです。夏以降はさらにレベル高めの入試演習、を行い、仕上げ段階まで行ってから過去問、といった感じでしょう。理工学部もレベルや出題内容(確率と漸化式はかなり似ています)、形式が似ているので、使えます。
量をこなす演習:じっくり演習=6:4ぐらいでしょう。3年生になったらできる限りじっくり演習したいです。2時間でも考え込んでしまってもOKです。ただし、あらゆる手段(計算がかかると分かっていても、それで押し通してみる!)で手を動かしてみることです。答えにたどり着かなくても、計算力は着実にUPしていきます。
以上です^^
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■関連する拙著『Principle Piece』シリーズ■
★ 数学A 集合と場合の数 (第1問(3))
★ 数学A 確率 (第2問)