東京工業大学 |2020年度大学入試数学

   

●2020年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は東京工業大学です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2020年 大学入試数学の評価を書いていきます。

2020年大学入試(国公立)シリーズ。
東京工業大学です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。



また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。

※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。





東京工業大学
(試験時間180分、5問、記述式)

1.全体総評~ようやく少し落ち着く~

2018年、2019年と苦しい難易度の年が続きましたが、今年は少し穏やかになりました。相変わらず計算量が多く、発想力が必要な問題もありますが、本学受験者れあれば対策済みで取りやすいものもありますので、昨年に比べると点数には結び付きやすいセットです。

分野は数IIIが3問、整数、ベクトルです。いつも通りの印象ですね。




試験時間180分に対し、
標準回答時間は195分。

2019年:225分

2018年:200分

2017年:200分

2016年:170分

2015年:195分

2014年:165分

2013年:175分

2012年:243分

2011年:330分(制限時間150分) 平均計算にはのぞきました。

2010年:130分(制限時間150分) 平均計算時には1.2倍しました。

10年平均:192.4分

2.合格ライン

第1問は決して簡単ではないが、全体のセットを考えると欲しい。
第2問はキー問題。(1)は取れるはず。(2)の方は4乗和がとれるかどうか。
第3問は(1)止まりな気がします。(2)は総合的な考察力が必要で、手がつけにくいと思われます。
第4問も簡単ではありませんが、やることは明確なので、東工大受験者なら取りたい問題。
第5問は(1)は出来ると思います。(2)がキー問題。(3)は発想、計算力からしても捨て問でしょう。

第1、4問は押さえて、第2,3,5問も途中までは手がつけられるはずです。第2問を全部とれればかなり有利。取れなくても、残りでかき集めれば、合わせて3完ぐらいにはできそう。今年は60%弱ぐらいでしょうか。

3.各問の難易度

☆第1問 【整数】素数になる条件(B,25分、Lv.2)

絶対値の入った2次関数が素数になる条件について吟味する問題です。うまく練られている良問と思いますが、(1)があるおかげで難易度はかなり下がっています。昔ならいきなり(2)のイメージがあります。最初から難易度を上げてこなかったあたりは、親切さを感じます。

(1)ですが、たとえばー5と5では、3で割った余り(3を法としたときの値)が違います。従って、絶対値の中身が負のときと正のときでわけます。負のときはx=1~5のときだけなので、「調べればOK」と気づければ勝ちです。正のときについては、3で割った余りの問題なので、xを3で割った余りで分類しましょう。

(2)は(1)のプロセスからも、6以上だと3つに1つは3の倍数になり、素数になりません。従って、3つ以上連続しているとことがあればそれを探します。x=1~5のときも(1)で調べているはずなので、これで素数が連続して続く部分が分かりますね。

 

※KATSUYAの解答時間11分。整数問題か。(1)は正負でわけないとな。-23か。結構負になる整数多い?なんや自然数やんけ。ならそんなにないな。全部調べるか。正のときは上記原則に従う。(2)も(1)のプロセスが多いに使える。むしろ(2)のためにわざわざ作った感じするな。(1)のおかげでかなりラク。

☆第2問 【複素数平面】正三角形になる3点の性質など(C、40分、Lv.2)

複素数平面上で3点をなす正三角形について、式の証明と、長さの2乗和、4乗和を求める問題です。(1)はパターンだと思いますが、それを(2)にどう生かすかがポイントになります。

(1)は東工大受験者であれば経験済みのはずですので、迷うことなく正解してほしいです。∠BAC=60°(偏角が±60°)かつBA=BC(長さの比が1)であることから、γーα/βーα=cos60±isin60° になります。プラスマイナスもついているので、虚部だけ右辺に残して2乗すればiが消え、同値関係も保たれます。後は分母を払えばOK。

(2)は(1)の結果をどう生かすかですが、外心が原点にくるように置いても一般性を失いません。このとき、(1)の事実はもちろん成り立ちます(どこにあっても成り立つものなので)が、さらにα+β+γ=0も成り立つことに気づけるかどうかです。

これに気づかないと、2乗和も4乗和も途中で詰まってしまいます。また、4乗和のときは(1)の事実と、α+β+γ=0から、α^2+β^2+γ^2=0にも気づく必要があります。ここは差が出るところでしょう。

なお、(1)の結果を用いなくても、三角関数的にやる方法もあります。先ほどと同様、外心は原点に置いた状態で、A(R,0)、BとCは120°ずつ回した点としてOKです。また、Pも(Rcosθ、Rsinθ)とおけますので、前半は距離の2乗を全て求めることで出来ます。4乗計算は距離の2乗の式を全部2乗する必要があるので少しメンドウですが、θは消えると信じて計算すれば思ったよりは大したことはありません。

Kさんが(1)の結果を用いる方法と三角関数で、Yさんは(1)の結果を用いる方法と、ω利用(120°回転なので)でやっています。ω利用だとα+β+γ=0など、0になるものが見やすいので、いいですね^^

 

※KATSUYAの感想:解答時間24分。(1)はパターン問題なのでさくっと証明。(2)はとりあえず外心を原点におく。すると(1)以外に何が言えるか。とりあえず複素数を用いて2乗和を出す。α+β+γが出てくる。あ、今回の設定ならこれ0だわ。これに気づけるかどうかやな。4乗和も計算する。結構メンドイな。2乗和?とりあえず対称式なので基本対称式にしてみる。(1)も使えることに気づき、こちらも終了。(1)を使うのは後半だけなのね。

 

第3問 【空間ベクトル】4点が同一円周上にある条件(CD、50分、Lv.3)

空間ベクトルからで、平面と直線の交点と、④点が同一平面上にある条件です。(2)は思いついたかどうかと、そのための計算をどのようにするかがカギになりますが、難しめですので後回しでもよかったですね。

(1)は素直に交点を出します。平面と直線との交点ですが、ACとPQはともにzx平面上なので、Tは結局、直線ACと直線PQの交点です。zx平面上で式を立てて連立するのが速いと思います。ABとPRも同様。

(2)ですが、「空間上で4点の同一円周上」なので面くらったかもしれませんが、空間においては座標で攻めるのはまず無理でしょう。従って、円周上にあることで言える定理を探します。角度の情報はないので、ここで方べきの定理を思い出せれば第一歩。(1)の時点でPQとACの交点がTであることに気づいていないと、Pから伸ばすことも出来ませんので、この時点でハードルは高いです。

また、気づいたとしても、PQ,PTの長さなどを出さないといけません。ベクトルなので実数倍を設定して、PQ・PT=PQ・kPQ=k・PQ^2 とするのがいいでしょう。PQ^2は単純な式ですが、kはまあまあメンドウです。

PR・PSも同様にやります。実数倍の実数さえ正確に出れば、あとは落ち着いて計算するだけです。方べきを思いつけるかどうかも重要ですし、かなり時間はかかりそうですね。

Yさんの解答では、メネラウスの定理を使って比を出していました。結局平面上での交点の話なので、チェバやメネラウスは確かに有用ですね。


※KATSUYAの感想:解答時間28分。(1)交点か。切片型やから、PQRの平面の式は立てれる。AC、ABも切片なので式は簡単に立てられる。結局2文字の連立か。PQとACの交点がTになることには気づかず。(2)同一円周上?きついな。方べきか円周角でやるか。角はcosでやるにしても、さすがにツライ。方べきやな。どこから伸ばす?図を書いてみる。P,Q,Tって一直線上?書いた図的には怪しいが、座標を見直す。PQ、ACみんなzx平面上やから、いい切れるんか!じゃあPから方べきの定理使える。PQは簡単。PTは・・・うーんメンドウ。一直線上やから実数倍設定するか。結構しんどい。整理した式を図示する?いや、きついぞ。a=bのときは成り立つだろうと予想し、a-bの因数に期待して割ってみる。よしよし。a=bはともかく、もう1個は合ってんのかこれ。a=bで対称やから、まああってるやろ。

☆第4問 【積分法の応用】斜め回転体の体積(BC、30分、Lv.2)

y=sinxの上の、x軸より上の部分の山1個を、直線x+y=0の周りに回転させた立体の体積を求める問題。斜回転は決して簡単なパターンではないですが、本学受験者であればこれを落としたくはないですね。

斜め回転の原則は、以下の2つです。

1)回転する直線をL軸に設定し、∫π●^2DL のように定積分の式を立てます。

2)①積分区間をxに、②●をxで表し、③DLをdxの式にする

(1)では、先に●の部分をxで表すことを求めています。今回はドーナツ型なので(●^2ー▲^2)πとなります。この▲の値はそのまま(2)で使えます。

(2)で、積分に入ります。まずx+y=0をL軸にし、L軸での式を立てましょう。区間はすぐに分かると思いますので、あとはL(OQ)とx(Pのx座標)の関係式ですが、直線や垂線がx軸と45°の角度をなしていることなどから、直角二等辺三角形が見えますので、OQ=▲になっています。Lをxで表すことができれば、DLもdxに出来ます。

積分は部分積分になりますが、この程度であれば東工大受験者なら合わせられるでしょう。

※KATSUYAの感想:解答時間20分。斜め回転やし、軸も45°やからそんなにしんどくないな、上記の原則に従って手が止まることなく終了。斜め回転は答案で点の説明するのが一番メンドウ。計算はおもったよりラク。教科書とかに載ってる放物線の斜め回転の方が計算メンドウだわ。

第5問 【積分法(数式)+極限】定積分漸化式、極限(CD、50分、Lv.3)

最後は積分法の応用。最初は漸化式を作ります。(2)以降は極限を次々に求めていく問題です。どこまでくらいつけるかですが、(2)まで出来ればOKでしょう。

(1)n絡みの定積分で漸化式を作るときは、部分積分が基本です。三角関数の方を先に変形しましょう。

(2)まではなんとか出来たでしょうか。(1)の結果から、ka(k)=・・・の式が出来ます。0~1の区間でxのk乗なので、ak自体がそもそも0に収束しそうであることに気づければ、評価が可能です。siinも区間内で0~1の間を取るので、1に置き換えてしまえば積分もできます。

(3)以降はかなり難しいです。問題文自体もかなり遠回しな表現ですが、易しく(?)いいかえると、ka_kは1に近づくことは分かりましたので、もちろんka_k-1は0に近づきます。これが何乗のオーダーで0に近づくのかを考えてくれ(1/kのレベルなのか、1/k^2のレベルなのか・・・・)、という問題です。

ですので、kak-1が現われるようにk^nで括ります。m-n=1であることは、(1)の結果から分かると思います。あとは、nを求めます。ka_k-1は、定数倍は放っておいて、a_(k+2)/k+1です。ka_k→1なのでこの式を、(k+2)a_(k+2)/(k+2)(k+1)に変形する(分子・分母にk+2をかける)ことが思いつければ(3)は勝ちです。分子は1に収束。分母が2乗のオーダーなので、k^2を掛ければ1に収束することが分かります。n=2ということです。

最後の問題ですし、HPもMPも切れている(疲れているし気合いもなくなりつつある)思うので、ちょっと厳しいかもです。

(4)は(3)と同じようなことをもう一段階やってくれ、ということですが、a_(k+2)をもう一段階漸化式でa_(k+4)まで変形する作業も必要ですが、発想的にかなり厳しく、計算も煩雑さを増してきますので、(4)は捨て問でしょう。

※KATSUYAの解答時間32分。(3)までは上記の要領で比較的スムーズに。(4)はa_k+2のままいろいろ思考錯誤する。p、q、r(オーダーはすぐに)分かったが、このままではどうしても収束値が決まらない。このまま攻めるのはムリということか。もう一段階下げて、a_k+4にすれば何か見える?こっちの方が値は小さいし、見えると信じて漸化式をもう一回使う。いやーキツイかな。かなり煩雑。でも整理していくと0になる部分とそうでない部分に分かれる。出来た出来た^^ これは捨て問確定やろ。

4.対策~論証力、段階を踏んで解決していく能力が必要~

例年の傾向だと、数IIIからは微積(2問)+複素数平面、整数、確率、空間ベクトルあたりから5問です。今年は確率が出ず。微分がなしで積分が2つでしたが、この6分野からの出題がかなり多いです。

東工大の問題は例年、誘導を省いた問題が多いです。(ここ数年はまだまし)。普通なら小問になっているようなものを自分で見つけ出し、自分でそれを解くという作業を行わなければいけません。対策をするなら、誘導がない過去問のレベルに照準を合わせたほうがいいかもしれません。

原則習得段階では、小問になっているようなものについては、その手法をよく意識し、なるべく吸収していきましょう(増減を調べるのにこんな方法があるんだな、こういう立体のときは、x軸切断がラクなんだな など)。

その後の入試基礎演習入試標準演習の際にも、似たような問題と解法は常に見比べるようにしましょう。したがって、同じレベルの問題でも1冊だけ行うのではなく、複数行ったほうが解法の幅が広がると思います。

2018年の第5問のようなこと(ネタが同じ問題を11年越しに出題)が今後、起きないとは限りません。また、複素数平面は2005年以前のものでないと演習できないので、これらも10年分ぐらいチェックしておいてください。最新年から、20年分ぐらいはチェックしておきたいですね^^。

東工大の数学は単科長年のものがありますので、実力がUPしてきたらそちらで演習してもいいでしょう。

初期は、量をこなす演習:じっくり演習=8:2ぐらいがいいですが、少しずつじっくり演習にシフトすべきです。受験後期(秋以降)には、逆に試行錯誤を多めにし、4:6でもいいぐらいです。

以上です^^

 

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