東京工業大学| 2017年度大学入試数学

      2017/06/26

●2017年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は東京工業大学です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2017年 大学入試数学の評価を書いていきます。

入試シーズン中はコメントの返信が大幅に遅れることがあります。ご了承ください。

 

2017年大学入試(国公立)シリーズ。
東京工業大学です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。



また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。

※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。





東京工業大学
(試験時間180分、5問、記述式)

1.全体総評~質量ともに上がりやや難化 数学IIIの割合はもどる~

昨年より難化です。数学IIIの内容が第1問以外全てで登場し、計算量も昨年より増加です。5問で180分という設定にもかかわらず、目標回答時間をオーバーです。また、質的にも第2問の絶対値付き積分や第3問の図形はかなり時間がかかります。また、新課程の複素数平面が登場しました。



試験時間180分に対し、
標準回答時間は200分。今回はボリュームがあるセットですね。

(過去6年平均:184分)

2016年:170分
2015年:195分
2014年:165分
2013年:175分
2012年:243分
2011年:330分(制限時間150分) 平均計算にはのぞきました。
2010年:130分(制限時間150分) 平均計算時には1.2倍しました。

2.合格ライン

第1問は決して優しくはないが、セット全体で考えると落とせない。
第2問も典型パターンだが、時間がかかるためキー問題になりそう。最後まで耐えられたか。
第3問は残り時間で手を付けることになると思われますが、厳しい。
第4問はキー問題。か漸化式が作れたか。そして煩雑な数値計算に最後まで耐えられるか。
第5問は複素数平面。割と普通ですが、東工大ではあまり見かけないため、演習量で差がつくかも。キー問題。



1番は抑えて3問中2問をとれば6割あります。3番を捨ててでも、残り時間であと2問を考え抜くのがよかったかもしれません。5番はそこまで複素数「平面」が前面に出ているわけではないので、これを抑えたいですかね。

今年は60%あれば十分でしょう。



3.各問の難易度

☆第1問・・・【整数】約数の個数から整数を決定(BC,25分、Lv2)

約数の個数が12個、そして小さい方から7番目の約数が12 という条件を満たす整数を求める問題です。約数の個数からもとの数値を判断するための原則を用いれます。本学受験者層は出来て欲しいところです。

 

Principle Piece A-51

 約数の個数から整数決定 → 個数を因数分解する

(拙著シリーズ(白) 数学A 整数 p.12-13)

 

「素」因数分解とは限りません。12=2×6でもいいですし、3×4もありえます。 よって、12を2以上で因数分解する方法は2・2・3、2・6、3・4のいずれかになります。これらの場合について、条件を満たすように素因数とその指数を判断していけばOK。

12が7番目ということですが、12が約数の時点で1、2、3、4、6、12までは確実に約数です。12までにあと1個割り込むときってどんなとき?と考えればいいわけですね。

 

※KATSUYAの解いた感想
約数の個数か。12個ならよく見るパターン。2・6か3・4か2・2・3に分けて場合分け。12があるなら、2と3の素因数は入ってるので、そんなにないな。12の手前に1個割り込むように探せばいいか。2・3・●の場合は7と11だけ、2・3だけが素因数のときは指数の組み合わせがそこまでないので、全調査。解答時間11分。

 

☆第2問・・・【微積分総合】絶対値付き定積分の最大値・最小値(B、40分、Lv.2)

絶対値付き定積分です。典型パターンで関数も比較的簡単に見えますが、計算はかなり長く、それに耐えられるかどうかにかかっています。

絶対値付き定積分はこちらの原則に従いましょう。本学受験者なら大丈夫なはず。

Principle Piece II-111

 絶対値付き積分は中身=0と両端の大小で場合分け

(拙著シリーズ(白) 数学II 平面図形 p.47)

ただし、本問は最初に関門があります。定義域が全く指定されていないことです。三角関数なので周期関数になることは予想が付きますが、それをきちんと述べた(数式で証明した)上で、xを限定しないと場合分けが始まりません。

今回はπが周期になりますので、例えば0≦x≦π でやってみればOK。あとは上記原則に従うだけです。ただし、この積分はxの値が不明だと式にすることが出来ませんので、f(x)ではなくf’(x)だけを出し、先に最大・最小になるところを特定しから計算にはいるしかないでしょう。

なお、積分計算自体は比較的有名な形ですので、本学受験者なら出来るかと思います。

Principle Piece III-51

 sinの式・cosx or cosの式・sinx の積分 → 第2置換積分

(拙著シリーズ(白) 数学III 積分法 p.14-16)

1+sin^2x=2-cos^2x に式変形すればこれに当てはまりますので、第2置換積分となります。

最後までやり通そうと思ったら、40分ぐらい欲しいですね。 

※なお、K塾とS台は最小値が違っていますが、S台さんのほうが正しいと思われます。(2017/03/03 16:00現在)

※KATSUYAの解いた感想
定積分関数か。場合分けするだけやな。xに制限ないのか。この関数は、周期はπっぽうので、f(x+π)=f(x)を示し、0≦x≦πに限定して分ける。この関数はxのままでは積分できん。微分はできるから増減表で先に特定するのね。特定してから積分計算。絶対値もあって計算量は多い。解答時間23分。

第3問・・・【図形と式+微分法の応用】長方形の折り曲げと面積の最大値(C、80分、Lv.3)

長方形を折り曲げた時に、元の長方形からはみ出る部分の面積を求める問題です。状況によってどこにはみ出るのか、はみ出ないのかで場合分けもあり、定数a、xがあることで計算も大変です。なお、試験場ではこの問題のため(?)にA4の白紙が渡されているようです(何枚かは不明)。

紙を実際に動かしながら折っていき、はみ出る瞬間を判断して、それがどういうときかを数式で表すことを考えましょう。ポイントは、折り目を特定することです。折り目は。合わせる頂点の垂直二等分線になります。これがどの辺とぶつかるかで、折る形が変わりますね。

これに気づけたら、座標平面上において式をどんどん作ります。垂直二等分線の交わる点がAまたはCとなるときが場合分けの境目です。

最後の関門は、はみ出ているときの面積を求めることです。斜めの線が連続で変化するときは、角度をどこか設定すべきでしょう。それでも計算や説明にはかなりの時間を要し、(1)だけで1時間ぐらいはかかるでしょう。


(2)はa=1なので、(1)の場合からかなり限定され、式もすっきりします。微分して増減ですね。(2)だけでも十分試験にはなると思われます。(1)が加わるとかなりキツイですね。




※KATSUYAの解いた感想
なんじゃこりゃ?紙を自由に使っていいということなので、折ってもいいってことやな。(実際はA4が配布と知ったが)B5を1枚持ってきて早速折ってみる。場合分けは3つだな。折り目がどの辺とぶつかるかで分ければいいな。座標設定して進めるも、。文字が入ってるから計算がツライ。面積はさらにつらい。θをどこかにおくか。x軸、y軸の交点P,Qでなす角OPQにする。お、どっちもtan2θが現れたから、多分あってそう^^ (2)はa=1やから上にははみ出ないな。大分すっきりしたので微分して増減書いて終了。解答時間51分。めっちゃかかった。

 

☆第4問・・・【確率+数列+極限】条件を満たす重複順列、漸化式、条件付き確率と極限(C、40分、Lv.2)

重複順列の中で、条件を満たすものについて調査する問題です。確率で聞かれていますが、実質的には場合の数としての調査となります。

もちろん、場合の数としての調査でも、この原則がつかえます。

Principle Piece A-41

 n回目とn+1回目を詳しく見る 

(拙著シリーズ(白) 数学A 確率 p.39-43)

条件を満たす順列の個数をa_nとでもおき、a_n+1を加えることになりますが、末尾がa,bかcかで変わります。どちらかを別文字でおいたほうがいいでしょう。私はa、bで終わる方をb_nとおきました。

Principle Piece A-42

 必要のない部分もqnなどと置いてみる 

(拙著シリーズ(白) 数学A 確率 p.39-43)

これでa_nとb_nの連立漸化式を作りましょう。bnはすぐにan変えられますので、結局a_nの3項間漸化式となります。

なお、最初に着目してもつくれます。n+2文字の列のうち、最初がcなら次はaかb、それ以降はn文字と同じです。最初がaかbなら残りはn+1文字の場合と同じですね。

3項間はもちろん特性方程式の解を利用します。

Principle Piece B-18

 3項間漸化式 → 特性方程式を用いて等比型を2つ作る 

(拙著シリーズ(白) 数学B 数列 p.39-44)

ただし、特性方程式の解は汚いので、最後にたどり着くまでα、βで置いて計算したほうがいいでしょう。

なお、初項が関係する5+3√3 が(1+√3)^3/2 であることなどを利用して綺麗にしておくと(2)がやりやすいですが、かなり演習量を積んでいないと、そこには発想が及びにくいかもです。

(2)は(1)が出来ていれば、比較的容易に条件付き確率として式を作ることはできます。数値はごちゃごちゃしていますが、結局は(1+√3)^nが最も影響が大きいはずなので、これで割りましょう。他の項はゴミなので無視できますね。

Principle Piece III-5

 ○^nの極限 → 分母の(絶対値の最大数)^n で割る

(拙著シリーズ(白) 数学B 数列 p.39-44)

(1)で漸化式を作ること(3項間か連立に気づく)に加え、その一般項の式処理で(2)の計算量も変わります。両方できないと効率よく進めるのは至難のワザでしょう。

 

※KATSUYAの解いた感想
場合の数と漸化式かな。設定は単純やから漸化式はさくっと作れそう。末尾で分けて作り、片方を消去して3項間へ。解は汚いのか。α、βでおいて進める。5+3√3とかいう初項をなんとかしたいが、多分解の2乗か3乗あたりのはず。当たった当たった^^結構すっきりした。 (2)は条件付き確率ね。「7番目c」「7番目かつ10番目c」を出す。(1)ですっきりさせておかないと、これ結構厳しいのでは?? 極限はβ^nで割って終了。解答時間17分。3番のあとだと、あまり難しく感じない^^;

 

☆第5問・・・【複素数平面+図形と式+2次関数】方程式の解が単位円上にある条件、領域図示(B、25分、Lv.2)

最後は複素数平面です。東工大は複素数平面の出題が少ない(1956~2005年で3回)ですので、対策が薄いと差がつきそうです。

※なお、同期間で東大は14回、京大は19回あります。複素数平面が過程になっている期間は限られていますので、こちらはかなり多いです。

ネタとしては、方程式の解が複素数平面上で単位円上にあるための係数の条件です。複素数平面というよりは複素数と方程式の分野に近いですので、手は出せたのではないでしょうか。

(1)は単位円周上にあるなら、cosθ+isinθと置けばOKです。共役解も設定すればあとは解と係数の関係で容易に示せます。(2)もほぼ同様に示せるはずです。

(3)は(1)と(2)を利用します。a,bはともにc1とc2の対称式ですので、こちらの原則で領域図示ができますね。今回はどちらかというと、解の存在範囲に帰着させる形となります。ー2~2で2つの実数解をもつような条件を求めることに帰着できます。

 

Principle Piece II-61

 対称式絡みの領域は「暗黙の」実数解条件に注意

(拙著シリーズ(白) 数学III 積分法の応用 p.12-13)


かなりうまく融合しており、良問ですね。今年は全部良問でした。

 

※KATSUYAの解いた感想
最後が複素数か。東工大ってあんまり複素数出さんから、意表をつかれた受験生はいそう。レベル的には至って標準。(1)、(2)ともに共役解の設定と、絶対値が1であることを利用すればすぐに終わる。(3)は(2)を利用してa,bをc1、c2で表す。対称式やから2次方程式の実数解条件やな。(1)の範囲内にあるようにするから、2次関数も絡むのね。うまく融合したな。解答時間15分。 

4.対策

東工大の問題は例年、誘導を省いた問題が多いです。(2015年、2016年はまだまし)。普通なら小問になっているようなものを自分で見つけ出し、自分でそれを解くという作業を行わなければいけません。対策をするなら、誘導がない過去問のレベルに照準を合わせたほうがいいかもしれません。

原則習得段階では、小問になっているようなものについては、その手法をよく意識し、なるべく吸収していきましょう(増減を調べるのにこんな方法があるんだな、こういう立体のときは、x軸切断がラクなんだな など)。

その後の入試基礎演習入試標準演習の際にも、似たような問題と解法は常に見比べるようにしましょう。したがって、同じレベルの問題でも1冊だけ行うのではなく、複数行ったほうが解法の幅が広がると思います。

昨年の第5問のようなこと(ネタが同じ問題を11年越しに出題)が今後、起きないとは限りません。また、複素数平面は2005年以前のものでないと演習できないので、これらも10年分ぐらいチェックしておいてください。最新年から、20年分ぐらいはチェックしておきたいですね^^。

東工大の数学は単科長年のものがありますので、実力がUPしてきたらそちらで演習してもいいでしょう。

初期は、量をこなす演習:じっくり演習=8:2ぐらいがいいですが、少しずつじっくり演習にシフトすべきです。受験後期(秋以降)には、逆に試行錯誤を多めにし、4:6でもいいぐらいです。

以上です^^

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■関連する拙著シリーズ■

★ 数学A 集合と場合の数 (第4問)

★ 数学A 確率 (第4問)

★ 数学A 整数 (第1問)

★ 数学II 図形と式 (第3問、第5問)

★ 数学III 複素数平面 (第5問)

★ 数学III 極限 (第4問)

★ 数学III 微分法の応用 (第2問、第3問)

★ 数学III 積分法 (第2問)

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