東京工業大学| 2010年度大学入試数学
2017/01/31
※注 ヒントを見ないでこの大学の入試を解きたい人は、解き終わってから見てください。ネタバレがあります。
大学入試シリーズ。
国公立シリーズ。
東京工業大学です。
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
難易度の目安です。
A…教科書の練習問題、青、黄チャートの基本例題レベル
B…教科書の章末問題、黄、青チャートの重要例題、章末A問題、および中堅大学入試問題レベル
C…チャートの章末B問題、難関大入試レベル
D…難関大入試でも難しい問題のレベル
E…超高校級の難問、試験場では即捨てるレベル
☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの「標準的な時間」です。
したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい という目安にしてください。
東京工業大学数学
(試験時間150分)
1.全体総評~昨年比難化だが、易しい方~
昨年に比べれば難化しましたが、それでも例年に比べると解答しやすい問題が多く、易化傾向です。
第4問はかなり重いですが、そのほかは十分な演習をしてきた受験生にとっては楽勝だったかもしれません。
特に第3問はとても東工大の問題とは思えませんでした。
試験時間150分に対し、
目標解答合計時間は130分。
第4問をじっくり考えても、時間は十分ありそうです。
2.合格ライン
第4問が難しく、逆にここを諦めてしまえば、第1問~第3問に時間を取れますので、ここを制限時間をたっぷり使ってなんとか抑えたいです。70%ぐらい取れそうな感じがします。
3.各問の難易度
第1問・・・微積分総合(BC、25分、Lv.2)
こちら、東工大らしい問題ですね。方程式が持つ唯一の解を評価する問題。東工大は、こういった大小関係を問う問題が割りと好きです。
本問は東工大の中ではやさしいほうですが、いい問題だと思います。(2)は、交点がもとまらないパターンです。面積を2等分するときの問題に使いますが、絶対値がついた関数の積分なので、実質的には面積を求めさせており、原則が通用しますね。
(拙著シリーズ(白) 数学III 積分法の応用 pp.53-54)
(3)の大小比較については、コツがあります。頭の中の思考の順番と、解答用紙へ書く解答の順番は逆になることを認識しているとやりやすいです。
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①もし、J>√2だったら、何が言えるのだろう・・・と考えます。
式変形していくと、 sinα>√2/2 となります。
よって、三角不等式を解くと、 π/4<α<3π/4 となります。
(1)や(2)を解く過程で、グラフを書いているでしょうから、αは3π/4と近そうです。
大小関係を逆に仮定すれば、α>3π/4がでます。ここから、
αと3π/4 の大小がわかればいいんだな
とわかります。
②ではもし、α<3π/4だったら、何が言えるのだろう
①の仮定をさらに進めてみます。
グラフ上で、αは3π/4の左側にあるということです。
これとf(α)=0、グラフの形から、f(3π/4)>0 となります。
こちらも、①で大小関係を逆に仮定すれば、グラフ上で、αは3π/4の右側にあるということです。
すると、f(3π/4)<0 となります。
f(3π/4)の符号がわかれば、最終的にJと√2の大小が比較できる
と気づきます。
③ ②の下から①の上に向かって解答用紙に書く
解答用紙には、もし・・・だったら、、、などはいりません。
要は、f(3π/4)の符号を判定すれば比較できるわけです。
よって、いきなり
「f(3π/4)=・・・・ で符号は正だから、」
と書きます。
解答だけ見ると、
「なんでいきなりf(3π/4)が出てくるんだ??」
となりそうですが、思いついてはいません。
頭の中では解答用紙と逆の順番の思考過程があるだけです。
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大小比較は、これでほぼ100%対応できます。
ぜひ、覚えておきましょう^^
☆第2問・・・方程式、整数(C、25分、Lv.2)
難関大学が好きな、ガウス記号の問題。ぎょっとした人もいるかと思いますが、誘導過剰なため、解く過程で容易に一般性を推測できそうです。
ガウス記号については、こちらの原則を用いるといいでしょう。
(拙著シリーズ(白) 数学A 整数 p.48)
これを用いれば一般項a_nが予想できます。(1)である程度は予想が付くと思いますが、それを一般化出来たかどうかがポイントになります。
本学志望者であれば、ここはクリアしてほしいところ。
☆第3問・・・確率(B、20分、Lv.2)
カードを引く問題。東工大の問題とは思えないような、標準問題です。(1)は楽勝でしょう。(2)は、各事象が背反であることから、確率をΣで加えることができます。そこはきちんと抑えておきましょう。
(拙著シリーズ(白) 数学A 確率 p.44)
本来は、期待値の問題での原則ですが、確率でも使うことができます。(2)の場合は、小さい数字が3j のときに何通りあるかを出し、j=1、2、・・・、k でΣを取れば、全部で何通りあるかを求めることが出来ます。
簡単すぎて「ホンマにこれでいいん?」と思った人もいそう。。。
☆第4問・・・図形(CD、60分、パターンなし)
条件を満たす点Pの存在範囲を求める問題。問題の意味がなんともつかみにくい問題ですね。
条件を式にすることが第1ですが、解法によっては計算量がかなり膨れ上がります。
ベクトルでうまく条件を式にすることが一番すっきりするようです。
「半直線上に点をとる」といったときは、ベクトルだと、
AQベクトル=(定数)×APベクトル
などと単純な式で表せますので、
ベクトルがうまくいくことが多いです。
本問はベクトルで式はすっきりしますが、結局成分であらわして
条件を満たす(x,y)の存在範囲を求めることになります。
よって、ある程度の計算量は覚悟です。
今年の最難問でしょう。
ここでどれぐらい部分点を稼げるかです。
4.対策~過去問を中心に分野横断問題の練習を~
東工大はCレベル以上の問題が多く、レベルの高い対策が必要です。ですが、ひとつひとつの手法は決して奇抜なものではないので、まずチャート式などで重要な手法を一通りマスターし、その後は質の高い問題を演習しましょう。
チャートの重要例題の手法が幾重にもなって一つの問題になっていることが多いので、発想力も問われますから、Bレベルの演習を繰り返すよりも、C、Dレベルの問題をじっくり考えるということを行っておくと効果的です。
東工大の数学で安定して合格点をとりたい場合には、対策も仕上げ段階まで行う必要があるでしょう。特に、チャート式のようなタイプの参考書には載らない、分野横断問題を演習し、分野にこだわらない解法を使いこなす練習が必要です。
例えば、図形の問題でも、座標で押すのか、ベクトルを用いるのか、平面幾何の知識を用いるのか、複素数平面の回転を用いるのか、その全てか・・・などです。先に述べた仕上げ段階の問題集は、別解が多く掲載されているものも多いので、オススメです。
また、東工大に関しては、50年分ぐらいの数学の過去問を一挙にまとめた問題集が出ています。
数学に自信がある、あるいは数学を得点源にしたいなら、数ⅢCまで、一通りチャートの演習が終わったのちに、いきなり取り掛かってもいいと思います。
何せ50年分もあるので、きちんとやるにはそれなりに時間を要します。すると高3夏からでは最後までやりきれない可能性があります。その時期になると、勉強しなければいけない科目が他にもあるでしょうから。
数学ばかりやっていてもいいときにやっておきましょう^^
以上です。
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(記事の引越し・改善中のため外部サイト(姉妹サイト)と行き来するかもしれません。すみません。)
■関連する拙著シリーズ■
★ 数学III 微分法の応用 (第1問)
★ 数学III 積分法の応用 (第1問)
★ 数学A 整数 (第2問)
★ 数学III 極限 (第2問)
★ 数学A 確率 (第3問)
★ 数学B 数列 (第3問)
★ 数学II 図形と式 (第4問)
★ 計算0.9 (計算練習帳です^^)