東京大学 理系 数学| 2010年大学入試数学
2022/05/29
※2010年度大学入試数学の評価を書いていきます。今回は東京大学(理系)です。
大学入試シリーズ第26弾。
栄えある第1弾は、東京大学(理系)です。
いきなり大物きましたね。
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、
典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また、☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。
したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい という目安にしてください。
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YouTube開設しました。 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を動画にしてみようと思います。
東京大学(理系)数学
(試験時間150分)
1.全体総評~難化傾向がようやく止まるが、難で止まっている~
ここ数年、難化傾向に歯止めがかからず、どうなることやらと思いましたが、今年はなんとか昨年なみに落ち着きましたしかし、相変わらず厳しいセットであることには変わりません。
オリンピックへ向けた浅田選手みたいなレベルです。なかなかレベルが高く、金メダル級でしょう。
試験時間150分に対し、目標解答時間合計は200分。
東大受験者であれば、160分と、若干多いか。
去年の第1問-3や第6問のような超大物はないですが、全体的に厳しく、点数を稼ぎにくいセットだったのではないでしょうか。
頼みの確率も(1)が出来なければ全滅、そのほかも最後まで完答するのはそれなりの計算力、発想力がいります。
しかも方針がすぐ立つ問題が第6問と、最後です。東大の第6問らしくない感じですが。
わからなければあきらめ、次の問題にうつる勇気も必要でしたね。時間が無くて第6問に手がつかないのは、もったいなさすぎます。
2.合格ライン~6割で十分~
第1問・・・(1)は答えて、(2)はできれば8割ほしい
第2問・・・(1)は答えて、(2)は気づかないと厳しい
第3問・・・(1)に気づかないと厳しいが、なんとか答えたい
第4問・・・(1)は答えて、(2)はなんともいえない
第5問・・・東大受験者であればここは解きたい
第6問・・・完答したい
6割とれれば数学では十分と言えるでしょう。(※他科目との兼ね合い、センター試験との比重などは考慮に入れてません)
理科2類は55%、理科3類は70%といったところでしょうか。
3.各問の難易度
第1問・・・空間図形、体積(C、35分、Lv.2)
直方体を、1辺を軸として90度だけ回転させた体積の最大値を、ある条件のもとで求める問題。体積がでなければほぼ0点ですが、メインは(2)です。まず、第1段階として
a、cに関して条件が対等である
⇔体積は(a、c)の対称式で表せるはず
⇔ac、a+cであらわせる
これに気づかないと、いくら式をいじっても泥沼です。
次にac=s、a+c=t と置くのは自然ですが、(s,t)の存在領域を考えると、2文字を同時に動かすとこれまたカオス。
とうぜん、一文字固定します。そこで、第2段階です。多変数関数の原則になります。
これに気づけば、あとはさくさく進みます。次数が高い方を固定するといいでしょう。すると一次関数は簡単に調べられますから。しかし、第1問にしてはなかなか難しかったですね。
第2問・・・積分と不等式(C、35分、Lv.2)
積分不等式を利用し、与えられた不等式を証明するもの。パターン問題ではありますが、一番解答までの時間がばらつく問題。おそらく15分で通過した人もいると思いますが、50分ぐらい考えても分からない人もいるでしょう。
右側は(1)の右側がそのまま使えますが、左側はちょこぉっとだけ変形しないと使えないです。
まあ右側が出来ればすぐに気づくでしょう。
なお、(2)の右側の不等式は(1)を使わなくても、面積を考えることで出来ます。
この手の問題は、一度離れてみて、戻ってくると「あ、分かった(^O^)」となることがありますから、試験場で完答するなら20分で通過しましょう。
逆に15分ぐらい考えて分からなければ、いったん離れましょう。
第3問・・・確率、数列(C、30分、Lv.3)
確率と漸化式。ルールを理解するのがちょっとめんどくさいですが、
ポイントは2つです。
・入っているボールが少ないほうの箱の玉の数だけ移動する
・どっちかに30個入ると、その後は移動しない
ってことです。
(1)が出来なければ、(2)、(3)も出来ず、これも危険な問題です。しかも(1)は漸化式っぽいですが、「yを適当なxで決めろ」という追加があり、難しかったのではないでしょうか。
こういときは、xを値を適当にきめ、実際にルールにしたがって動かしてみることです。
私も最初「これはやばい、ぜんぜんわからん」と思い、xの値を3,4回変えてやってみて(1)を得ました。
だんだんといろんなことが分かってきます。発想力とは言わないですが、(1)に気づくかどうかで
出来が分かれたでしょう。本受験者でも、30分でいいでしょう。
第4問・・・積分、面積(C、40分、Lv.2)
面積を求める問題。(2)は当然(1)を使いますが、とあることに気づかないと、
場合わけもいる上に、計算する前からいやになるような計算が待っています。てか、大学の数学の積分公式いります。
(いわゆるLv.3の知識持ってる人なら気合で計算していくでしょうけど)
積分はx軸に沿ってやることがすべてではない
y軸に沿ってやったっていい
ということです。これに気づかないと、x2とy1の大小(これは決まりません)で式が変わってしまいますし、
最後までたどりつくには途方も無い計算が待ち受けます。本受験者であっても、これに気づくかどうかで分かれますので、
40分としておきます。
第5問・・・点の移動、整数(C、30分、Lv.3)
今年の整数問題は第5問という解釈でいいのでしょうか。毎年整数問題が出ておりますが、今年はこれが整数問題です。
といっても整数問題としてのテクニックを使うのは後半だけで、それまでにきちんと問題文を満たす条件を式にしなければいけません。
要は、こーゆーことです。
円の中心をRとして、
・∠PCR=180度の奇数倍
・Qは弧PRの中点
たったこれだけのことなのですが、きちんと条件にするにはうまく文字をおき、きちんと範囲を調べておかないといけませんから、試験場ではまあまあ難しく感じたかもしれませんね。
本受験者であれば、整数対策はしてきているでしょうから、
条件をきちんと式にしたらちゃんと答えて、20分ぐらいで通過したいです。
第6問・・・空間ベクトル、切り口の面積(B、30分、Lv.2)
唯一のBレベル問題です。計算はうまくやらないとめんどくさいですが、本大学受験者であればここは完答しておきたい。
OABCというとO-ABCのように紙に書きがちですが、OABに垂直であることが多い問題であることを
考えると、C-OABのように書いたほうが見やすいですね^^
何よりもまず、空間ベクトルなので、3辺の基本ベクトルの長さだけでなく、それらの内積も出しておきたいところ。
(拙著シリーズ(白) 数学B ベクトル p.63)
内積ですが、3辺が分かっていれば、余弦定理として捉えれば簡単に出せます。
(拙著シリーズ(白) 数学B ベクトル p.37-38)
(2)は当然(1)を使うわけで、ただの相似利用ですが、計算は分数が多く、答案としてきれいにまとめるのは無駄にめんどくさい。
平面MにCHベクトルが含まれるときのP、Qを最初に別記号で定めておくと、きれいにまとめやすいです。こんなものを第6問にもってくるとは、傾向を固定しない東大らしいと思います。
本受験者であれば25分ですかね。
4.対策~表面的なパターン学習ではなく、根本的な理解を意識した学習を~
東大は出題分野が比較的固定されています。確率・整数・空間図形・微積分です。微積分と空間図形は絡む場合もありますが、そうでなれば6問中4問も、出題されるところが分かっていることになります。新課程の複素数も好きです。これでほぼ固定です。
ただし、東大の問題はどれも質が非常にたかく、かつよく考えられた創作問題といえます。パターンにはまった学習だけでなく、数学を本質から理解している人ほど点数が高くなるような試験になってます。
標準問題のマスターは前提で、加えて質の高い問題、かつ、さまざまな方面から解説を行っている問題集で問題を解くだけでは終わらないような勉強の仕方が必要です。
原則習得段階では青チャートを用い、その後は入試の基礎パターン、標準パターンと行きます。入試問題集や1対1対応、新数学スタンダード演習などのレベルです。まだ不安であれば、もう1冊はさめばOKです。プラチカ、理系標準問題集などがいいでしょう。
さらに、仕上げレベルの問題集を進められるようにするといいでしょう。やさしい理系数学、ハイレベル理系数学、Z会の核心シリーズなどがこれになります。
また、Z会の通信教育コースなどは、多方面から解説を行ってくれます。
予備校の東大模試の過去問なども、問題・解説ともに非常に質が高いです。
いずれにせよ、ただパターンを理解するだけでなく、状況設定をしっかり理解した上で、自分が知っている手法のパターン問題に帰着し、自ら問題を設定してそれを解いていく力が必要となるでしょう。
以上です^^
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