東京大学 理系 数学 講評| 2023年大学入試数学
2024/01/05
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●2023年度大学入試数学評価を書いていきます。今回東京大学(理系)です。
いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2023年 大学入試数学の評価を書いていきます。
2023年大学入試(国公立)シリーズ。
東京大学(理系)です。
やっぱり最初はここですね^^
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。
したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。
★お知らせ★
Principle Pieceシリーズの販売を再開しました^^ 原則習得のための参考書です。
YouTube開設しました。 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を紹介していこうと思います。
Twitter始めました こちらもよろしくお願いいたします^^
動画でも紹介していますので、お好きな方でご覧ください。(東大理系だけめっちゃ見てもらえてます^^;)
東京大学(理系)
(試験時間150分、6問、記述式)
1.全体総評~逃げ道がなく、厳しさがさらに増す~
昨年は少し逃げ道のある問題がありましたが、今年はそれすらなく、どの問題も完答できずに終わってもおかしくないセット。その意味では難化と言っていいでしょう。試験場ではかなり難しく感じたのではないでしょうか。
方針は立つ問題は多いのですが、とにかく最後まで解き切るのにかなりの計算量が必要になりますので、言うは易く行うは難しという感じでした。
分野的には、東大頻出の微積分、空間では2題(ベクトルと体積)、関数、確率など。なんと整数問題が姿を消しました。これは意外ですね。複素数平面は2年連続出ず。
試験時間150分に対し、標準回答時間は205分以上(第6問60分以上)
確かに時間だけ見ると、昨年並みという評価が出そうですが、今年は解きにくいと思います。
2022年:205分
2021年:205分
2020年:210分
2019年:210分
2018年:195分
2017年:165分
2016年:205分
2015年:215分
2014年:205分
2013年:205分
2012年:205分
2011年:195分
2010年:200分
2.合格ライン
第1問は数式の微積分。決して簡単ではないけど、今年のセットではマシ。取りたい。
第2問はキー問題。確率で文理共通。(2)は勘違いして通過した人もいるかもなので、差が付きそう。
第3問もキー問題。(1)は絶対取る。(2)は方針は一本道(やり方はいろいろ)だが、道のりが超長い。最後までやり切れればかなり有利。
第4問もキー問題。空間ベクトルですが、成分だけでごり押すと相当時間を持っていかれる。図形的なアプローチも合わせるとラクで、かかる時間に差が出そう。
第5問はまだパターン問題に近いため、まだマシな方なのでなんとかこれをおさえたい。全然カンタンではないですけどね^^;
第6問は捨て問でOK。無理です。
理I、理II:下手すると0完5半もありえる。どこか1つ正解して1完4半の半分ぐらいでいいのでは。
理III:第6問はおそらくキツイですが、3完2半弱で=合計で75~80点ぐらいですかね。
3.各問の難易度
☆第1問 【積分法(数式)】定積分と不等式(B,25分、Lv.2)
今年は最初から見た目がごつそうで嫌な予感がする数IIIの積分ですが、見た目よりはラクだと思います。
(1)は定積分を不等式で評価します。x^2を置換することは思い浮かんだと思います。あとは√tの部分で区間の両端と置き換えます。単調性が保たれる方を区間の端で置き換えると評価できます。
(2)は(1)が分かればつながりは見えやすいかと思います。(1)のAkをつなぎ合わせるとBnになります。An+kとして0~n-1とするといいでしょう。両端が区分求積になることは見え見えでしょう。
区分求積では、まずΣの前に1/nを出すことが原則です。それから、Σの中にk/nを作ることを意識しましょう。
区分求積自体は大した計算ではないですね。
見た目ほどの重量はありませんでしたが、それでも決して簡単ではないですね。
KATSUYAの解答時間は18:16です。最初からまあまあ重いけど^^;今年キツイ?
☆第2問 【確率】同色の玉が隣り合わない、条件付確率(B、25分、Lv.2)
今年の確率は久しぶりの条件付確率でした。設定がシンプルですが、あり得る場合をきちんと数える調査力も適度に必要で、適度な難易度でしょう。(2)は言われればなるほど、となりそうですが意外と取れない人も多いのではないかと。
なお、確率では同色のものも区別するのが基本ですが、本問の設定であれば同一視しても計算に影響はありません。
(1)は赤が隣り合わない確率で教科書レベル。隣り合わないタイプは、関係ないものを先に入れて間に割り込ませます。
(詳細は拙著シリーズ 数学A 集合と場合の数 p.23 参照)
(2)は条件付き確率です。条件付確率は「とき」の手前と前後に着目しましょう。
(詳細は拙著シリーズ 数学A 確率 p.27 参照)
分母は(1)で出しています。(2)は赤も黒も隣り合わせない確率です。ここで注意なのは、「白の間に赤いれて、さらに間に黒入れれば終わり」としてはいけないことです。これ以外にもあります。
例えば、「白黒黒黒白白白白」のように、黒が白の間にはいっていなくても、この後「白黒赤黒赤黒白白白白」のように、赤を黒の間に割り込ませればOKですよね。このような場合も考える必要があるので、ここで差がつきそうです。
個数の少ない黒で考えると、「3つ固まる」か、「2つと1つ」か、「全部あいだ」かの3つで済みます。(1)につられて赤でやった人も多いと思いますが、赤だと場合分けが増え、少しメンドウ。
※KATSUYAの解答時間は14:09です。以前自分で類題を動画で紹介したことがあるので、他にどういう場合があるかはわかっていましたので、サクサクいきました。
類題の動画はこちらです。(今回はこんなに簡単には出来ませんが^^;)
☆第3問 【図形と式+微分】放物線と円、接線が切り取る弦の長さ(BC、35分、Lv.3)
今年も第3問は図形と式からですが、一本道なのにメンドウなところも去年と負けず劣らずって感じです。去年の方がマシかな。
(1)は厚物参考書にも載っている典型問題。接するときを考えましょう。yの重解条件に持ち込みますが、yの解が正であることは確認しておきましょう。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 図形と方程式 p.84 参照 本書ではより具体的に紹介しています)
(1)はただの前座で(2)が本番。接線の式を立てたり、交点を出したり、弦を出すことは出来ます。出来ると「言う」のは簡単ですが、計算してみるとめちゃくちゃメンドウです。なので、まず弦の長さを正しく出すことが第1目標。
円周上の点を媒介変数で置いて接線を出してもいいし、傾きmを設定して中心(0,a)との距離=1で切片を出し、mだけで表してもOK。いずれにしろ、1変数関数になるはずです。私はx軸からの角度θを媒介変数で置きました。
それが等しくなるようなQ,Rが存在する条件をどうとらえるかです。まともにやると相当しんどいので、ここはうまく言い換えます。1変数で表した関数が、その変数の定義域内で単調にならなければいいわけです。極値(極大でも極小でもOK)さえもてば、その前後すぐ近くの2ヶ所で等しくなることはあるはずです。
従って、微分したものが解を持てばOKということになります。設定した変数や関数次第でここの計算量も増えると思います。私はsinの分数関数になり(2次/4次)、その時点で絶望感がありましたが、微分した分子が2次関数になるので、極値条件はラクでした。
※KATSUYAの解答時間23:56。Lp出したときマジで投げようかと思ったが、とりあえず微分してみたら意外といけた。今んところ逃げ道ないぞ今年。
第4問 【空間ベクトル】空間上における点と三角形(平面の一部)の距離の最大・最小(BC、35分、Lv.2)
空間ベクトルからです。成分が分かりやすく与えられているので、コツコツやるだけで最後まで行けますが、(3)は成分だけで計算すると相当時間がかかると思われます。うまく(1)(2)の結果を図形的に解釈できると難易度が下がります。
(1)は計算するだけなのでいいでしょう。3成分文字でおき、3条件を式にすればOK。
(2)も教科書にあるタイプです。空間上だろうが、直線(1次元)上の点は1文字で表せます。OH=(1-t)OA+tOBなどとして、ABとOHの内積ゼロを条件にしましょう。
(3)は図形的にアプローチしたいところ。OPやOA、OBの両方に垂直なので、OABを水平にした図を書くと良かったと思います。空間ベクトルでは、xy平面を水平に書くよりも、着目している平面を水平に書いた方が見通しやいい事が多いです。
そして、(1)の結果から、OPがその平面の真上に書けることに気づければ勝ち確です。したがって、QはOAの3/4倍すすんで、真上にOPと同じだけ上げたものになります。分かってしまえば当たり前のように、Qから平面OBHに下した垂線の足(Kとします)がOAの3/4のところだと分かります。
あとは、KとOHBとの距離が最大・最小になるところが、そのまま求めるべき場所になりますので、Qとの距離に変えるだけです。最後にもうひと踏ん張りです。最小はOHの3/4倍のところ、最大は頂点のどこかですので、全部出して大きいほうでOK。
位置関係を把握せずに成分でやることは勿論可能ですが、計算量はかなり多いですし、平面の一部のため、その後は結局図形的に考える必要があります。
※KATSUYAの解答時間24:17。私は何を隠そう、成分でごり押した人です。そして出した後に、(1)を見て「うわ、当たり前やんけ」となりました。もっと早くこれは出来たな。成分が分かりやすく与えられていると成分でやりたくなる^^;
☆第5問 【複素数と方程式】多項式で割った余り(B、25分、Lv.2)
第5問は複素数と方程式からです。合同式の多項式バージョンのような感じの問題です。
予備校さんは第3,4問よりもこれが難しめとの評価が多いですが、最もパターンに当てはめやすい問題だと思いますので、個人的には相対的にラクかと。拙著Principle Pieceシリーズの『数学II~複素数と方程式~』や『数学II~微分法~』にも、本問で思いっきり使える原則をがっつり収録してますので、使う手法は典型的で解きやすいと思います。
(1)は整数だと馴染みのある事実ですよね。
「15を4で割った余りは3なので、15^7を4で割った余りは3^7を4で割った余りと等しい」
みたいな感じです。これの多項式バージョン。証明はg=fQ+rとでもおいて、二項定理で二項展開すればすぐに分かると思います。多項式の割り算ですから、g=fQ+rの形で置くのは原則です。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 複素数と方程式 p.26 、)
(2)は(1)を使うと、結局h^49をf(x)で割った余りがhになるようにしなさい、ということです。
割る式f(x)=(x-1)^2(x-2)となっていますが、(x-●)^2のような因数が入っている場合は、微分した式も使うのが原則でしたね。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 複素数と方程式 p.48 参照(全部3通りの解法を紹介)、または 数学II 微分法 p.57 参照)
h^49=fQ+hとおいて、両辺にx=1,2を入れ、微分した式にもx=1を入れます。これらがすべて成り立たないとダメです。x=1,2だけで終わらないようにしましょう。
※KATSUYAの解答時間は16:39です。これは計算もそこまでしんどくない。これが気休めに見えるぐらい他が長い。
第6問 【空間図形と体積】線分OP、折れ線ONPの存在範囲の体積(DE、60分~、Lv.MAX)
最後は東大の十八番、空間図形と体積ですが、今年は捨て問でした。そもそも第5問まででもかなり疲弊しているところに、大物級の難問がきました。(1)からあることに気づかないと積分するための式をさんざん頑張った結果うまくいかず、絶望感に浸って他に戻った人もいるかと。そもそも捨てていればそれが一番いい^^;
本問については、動画の説明が分かりやすいと思います。言葉で説明するのキツイ・・・。お手数ですが上部の動画でご覧になってみてください。どんな図形になるのかも紹介しています。
(1)は球面から立方体を引いた部分をキレイに6等分したところが、はみ出ている部分になります。ただの回転体ではないんですよね。
(2)は(1)からさらに側面に少し横っちょに領域が追加されます。x軸かy軸に垂直に切ると、135°のおうぎ形になりますが、それに気づくのもキツイし、面積もメンドウだし、最後の積分もメンドウ。
※KATSUYAの解答時間は残り全部です。(1)の段階でタイムアップでした。まあまあ時間の貯金ありましたが、完全にここで貯金どころかすべて使い切りました。積分の式を、中心角θを設定したりして置換積分タイプかと思って頑張ったんですが、被積分関数が積分できないとなり、計算ミスなのか設定している場所が悪いのか、いろいろ試しましたが、うまくいかずでした。(1)は終わってから3分後ぐらいに気づき、(2)時間を測っていませんが、記述して20分弱ぐらいだったと思います。
4.対策
東大の頻出4分野である確率、整数、微積(空間系あり)、複素数平面です。今年は整数、複素数平面が出ませんでしたが、引き続き確率、整数、微積、複素数平面の対策は重点的に行ったほうがいいです。
分野的にはかなりバランスがとれているので、頻出分野以外にも苦手な部分がないように、演習量を積んでおく必要があります。
ただし、原則習得はもちろんのこと、入試演習も数多くこなしつつ、質の高い問題演習は解説や別解の研究もして、本質的な理解と幅広い視点を養うことが求められます。
今年、去年のレベルでの対策をとっておけばかなり万全でしょう。早い段階で、解かなくてもいいので数年分見て、難易度(到達しなければならないレベル)を肌で感じておきましょう。
お尋ね者の大学なので、対策本もばっちりあります。東大の数学は良問が多く、解法研究の格好の的にされていますので、他にもたくさん本があります。
量をこなす演習:じっくり演習=6:4ぐらいでしょう。
以上です^^
■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)■
数学A Chapter1~集合と場合の数~ (第2問)
数学A Chapter2~確率~ (第2問)
数学II Chapter2~複素数と方程式~ (第5問)
数学II Chapter3~図形と式~ (第3問)
数学II Chapter6~微分法~ (第5問)
数学B・C Chapter3B~空間ベクトル~ (第4問)
数学III Chapter5~積分法(数式編)~ (第1問)
数学III Chapter6~積分法(グラフ編)~ (第6問)
すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!
数学III~原則のみ~
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