【後期】九州大学 理系| 2019年度大学入試数学

   

●2019年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は九州大学(理系)【後期】です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^
2019年 大学入試数学の評価を書いていきます。

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2019年大学入試(国公立)シリーズ。
九州大学(理系)【後期】です。



問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、
典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。



また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。





九州大学(理系)【後期】
(試験時間120分、5問、記述式)

1.全体総評~数IIIを中心に計算量の多い問題が並ぶ~

昨年とほぼ変わらずです。数IIIの割合が昨年は4問でしたが、今年は3問と減少。それでも空間ベクトルなどの計算量は多く、昨年よりも全体の計算量は多めです。誘導小問のおかげで手を付けやすい問題も多めなので、難しい問題さえ捨てれば今年もある程度は点数が取れるはずです。


試験時間120分に対し、
標準回答時間は150分。(複素数平面の後半などを捨てれば、そこまでオーバーな印象はない)

2018年:145分

2017年:140分

2016年:160分

2015年:125分

2014年:150分

2.合格ライン

1番は微積分総合。落ち着いて解けば合わせられるはず。確保したい。

2番は(4)がキー問題。とる順番が関係しないことに気づけばいけるか。

3番は(1)止まりでも仕方ないかもです。(2)(a)まで行ければいい方。

4番は(1)の証明が意外と難しいか。(2)は出来るはず。(3)はキー問題。a=1のときだけは発散しますが、その証明が出来たか。

5番はキー問題。平面や直線の方程式(一応課程外)をもろに聞いてくるあたりは、知識で差がでそう。

数IIIではない2番、5番で差が出るかもです。1番は押さえて、2番は半分強、3番は最初だけで4番で7割答案、あとは5番でどこまで食いつけるか。60%強ぐらいでしょうか。

3.各問の難易度

☆第1問 【微積分総合+極限】接線、面積の最大値、極限(B,20分、Lv.2)

グラフ系の微積分総合。接線や面積やら、最大値のための微分やら、極限やら、いろいろやらされますが、関数が単純なので計算はそこまで膨れません。合わせたいですね。

(1)は接線を求めるだけです。(2)も面積を出すだけです。(4)に影響するので慎重に。

(3)は面積を求めて、それを微分するだけです。2t+1が因数として残ることは明らかなので、うまく計算を減らす変形を心がけたいですね。

(4)の極限はテクニック不要。指数部分が0になるだけです。(2)(3)で面積計算があっていれば行けます。

 

※KATSUYAの解答時間11分。いろいろ組み合わせてきたか。(4)はおまけに近いけど、(2)(3)で芋づるになるから計算力勝負って感じ。原則を使うところも特になし。

☆第2問 【確率】赤りんごと青りんごの取り出し方(B、25分、Lv.2)

袋から取り出した色のりんごをかごから追加していく問題。ポリアの壺とルール的には同じです。

(1)はただの計算です。ポリアの壺のルールですので、2/5であることはわかる人には分かりますが、(2)を出すために丁寧に場合分けしましょう。(2)は原因の確率の要領で、分子は場合分けのどこかで計算済みの数値になります。(Principle Piece A-39 数学A  確率  p.32)

(3)は赤を1回、青を2回とることになりますが、どんな順番で取ったとしても、全部掛け算をすれば分母が(a+b)(a+b+1)(a+b+2)になり、分子はa×b×(b+1)となることに気づけば、(4)に活かせます。

(4)は(3)に気づけば、式と答えにはたどり着けるかと思います。「1ずれ」を起こしやすいので注意。例えば分母の最後はc+d-1です。(3)と比べても分かります。

説明としては、1回の試行ごとに袋は1個ずつ増えること、赤や青は(1回目にとるときは1個、2回目にとる時は2個、)k回目にとるときはk個になっていることなどを書いておけば大丈夫かと。

  ※KATSUYAの解答時間12分。ポリアの壺のタイプ?(1)は2/5か。(2)は(1)で分けてあるからさくっと。(3)(4)を見て、ポリアあんまり関係ないわ^^; と思う。(3)の計算過程で順番は無関係と分かったので、あとは(4)でそれを説明し、終了。c=2,d=3を入れて(3)と比較して検算。あってたので終了。

☆第3問 【複素数平面+ベクトル】内積と複素数、内積の値(C、45分、Lv.3)

複素数平面にベクトルが絡む問題で、後半を中心に難易度がかなり高めです。昨年に引きつづき見た目もごつい、今年は実際もごついです(苦笑)

(1)は計算するだけです。ベクトルの内積が複素数の与式に対応していることは知っておいて損はありません。

ベクトルでは「|a→|と|b→|と内積」が分かれば何でも分かるように、複素数平面では「|α|、|β|、与式(分母2は不要)」が分かれば何でも分かるという認識は持っておいた方がいいでしょう。

(2)からは難しいです。Aが任意におけることから。正n角形の頂点の1つを(1,0)で置いても一般性を失いません。n乗根と結びつけるためには、この配置にしておかないと(a)も厳しいかもです。

(a)は実は、Aはどこでも(単位円周上でなくでも)OKです。n個の頂点をz0、z1・・・などとおけば、これらはみなx^n=1の解になりますので、和は0になります。

(b)も2乗を展開すると、真ん中の項は残りますが、その他の項は和が0になります。

この要領で(c)もやってほしいのでしょうが、一般のpで議論するには2項定理の考え方が必要で、展開式の殆どの項が(a)や(b)と同じ要領で消えていきます。pが偶数の場合のみ、いわゆる「ど真ん中」の項は残りますが、点Aを表す複素数が入っていないので、Aによらないわけですね。

p=3,4あたりでもう少し試して、Aによらないと分かるカラクリが見えればよかったですね。小さい数字で試してみることは大事。(Principle Piece A-39 数学A  確率  p.32)

 ※KATSUYAの解答時間25分。(1)は知っている事実の証明。(2)は(1)を利用することになりそう。n角形の頂点はn乗根と結びつくような配置にして大丈夫と。これで解と結びつけそう。(a)(b)はこれで行けると。(c)はどうする?p=3,4あたりで試し、仕組みを理解する。一般になると、やはり2項展開しないと説明は難しいか。偶数だと真ん中だけ残ることを説明して終了。試験なら(2)は後回しやな。

☆第4問 【数列+極限】等式の証明、級数の和と発散の証明(BC、30分、Lv.2)

等式の証明と、級数の和に関する問題です。(1)は直接関係ないですが、(2)をやると逆に気づくかもです。

(1)はまさに、真ん中をごっそり消す時に用いる式のひな型です。シグマの計算は、公式にあてはめるか、等差×等比のような形でない限りは、真ん中をごっそり消すしか方法がありません。(Principle Piece B-7 数学B  数列  p.23-24)

k(k+1)(k+2)={k(k+1)(k+2)(k+3)-(k-1)k(k+1)(k+2)}÷4 などとやります。

(2)は部分分数分解です。演習量の関係で、分母にあるほうが実は出来たりしますので、これを利用して逆に(1)に気づきたいです。

(3)はa≧2であれば部分分数分解の要領で和を出し、極限を求めます。a=1のときは発散になりますが、その証明は出来たでしょうか。積分の不等式の要領でlognより大きいことを示す方法が教科書的でしょう。

特殊な方法としてはn=2のm乗のときで評価する方法などもあります。

n=8のとき、式>1+1/2+(1/4+1/4)(1/8+1/8+1/8+1/8)

などと、分母を2の累乗に変えてしまうと数値は減りますが、( )内は全て1/2なので、これを一般化して発散が証明できます。

※KATSUYAの解答時間18分。(1)はひな型やん。さくっと終了。(2)も部分分数分解か。(1)の意味はなんだ^^; (2)の後の方がやりやすいような。(3)は(2)利用。いやまて、a=1のときはダメだわ。発散だわ。問題文の意味理解。証明は積分で。

☆第5問 【ベクトル】座標平面に接する球、平面との距離など(BC、30分、Lv.2)

昨年に引き続き、球を題材とした空間ベクトル。九大は空間ベクトルというか球が好きな印象がありますね。難易度も高めです。

(1)は九大受験者なら出来てほしい。円の問題で「x軸、y軸に接する」と言われたら何をしたかです。中心の座標がそのまま半径の情報に関係します。あとは符号だけ注意しましょう。中心が(1,1,1)でも、(1,-1,-1)でも、半径1なら条件に合います。

(2)は(1)が出ればと言う感じですが、直線や平面の方程式は発展事項のため、演習量が少ないと難しいかもです。どこまで前提にしていいか分かりませんが、直線の方向ベクトル(7,4,4)が出れば、これを法線ベクトルに持つ平面は、平面ベクトルのときの要領で、7x+4y+4z=d(原点通るのでd=0)としてOKでしょう。

(3)も、点と平面の距離を用いてよいかどうかですが、平面の方程式をわざわざ書かせているので、私はOKだと判断しました。半径より長ければOKです。

(4)は(3)で距離を出していれば実は簡単。直線lは平面に垂直なので、l上で中心を動かしたら、動かした分だけ平面との距離も変わりますね。

(5)はもはやベクトルというよりは相似を用いる問題。2球が内接する円錐ということなので、中心を通る平面で切断しましょう。(Principle Piece I-53 数学I  三角比  p.40)  

これで2円と共通外接線の話に帰着されます。中心と接点、中心と中心(結べば直線lになりますが)は結ぶのが原則ですよね。(Principle Piece A-90 数学A  平面図形  p.47)

※KATSUYAの解答時間20分。(1)で片方の球の座標ミスった(11/3→10/3としていた)ので、途中から計算がめちゃ煩雑に。さすがに変かな^^;これで(5)までやらせるのはキツイと思い、見直してほぼ最初から解きなおし。平面の方程式の係数7,4,4なら2乗和81やし、合ってるやろ。13分ぐらいで行けたような気がするなぁ。

4.対策

九大後期は数A(確率)数B(空間ベクトル)数III(全体的に)を中心に計算量の多い問題が目立ちます。

手法としては標準的なものが多く、問題文から適切に解釈できれば、それらの組み合わせで解ける問題です。教科書程度ではもちろん足りませんが、一通りの手法を終了させたら、入試基礎レベルへ移行し、その後、もう少し手間のかかる問題の演習へと進みましょう。

なお、後期では難しめの論証が九大では散見されます(今年は複素数平面の後半)が、これが出来るようになることよりも、取れる問題でしっかり取ることが大事です。



量をこなす演習:じっくり演習=7:3ぐらいでしょう。

以上です^^

 

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■関連する拙著シリーズ■

★ 数学A 確率 (第2問)

★ 数学B ベクトル (第5問)

★ 数学B 数列 (第4問)

★ 数学III 複素数平面 (第3問)

★ 数学III 微分法 (第1問)

★ 数学III 微分法の応用 (第1問)

★ 数学III 積分法 (使うなら第4問)

★ 数学III 積分法の応用 (第1問)

※全く変えてません。2018年と殆ど出題同じでした。

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