東京工業大学 講評|2021年度大学入試数学
2022/04/27
●2021年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は東京工業大学です。
いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2021年 大学入試数学の評価を書いていきます。
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2021年大学入試(国公立)シリーズ。
東京工業大学です。
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。
したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。
東京工業大学
(試験時間180分、5問、記述式)
1.全体総評~創作問題が多く思考力重視~
東工大らしい創作問題の多いセットとなりました。裏を返せば典型問題がほとんどなかったため、差がかなりつきやすいセットだったと思われます。試験としては適切で、得意な人にとっては有利な試験でしたが、あまり得意でない人にはかなりキツかったかと。
分野は数IIIが2問、整数、ベクトル、数列で、ABIIIからの出題です。
試験時間180分に対し、標準回答時間は190分。
2020年:195分
2019年:225分
2018年:200分
2017年:200分
2016年:170分
2015年:195分
2014年:165分
2013年:175分
2012年:243分
2011年:330分(制限時間150分) 平均計算にはのぞきました。
2010年:130分(制限時間150分) 平均計算時には1.2倍しました。
10年平均:192.4分
2.合格ライン
第1問は全体のセットを考えると落としにくい。
第2問は(3)での議論による。とりあえず答えまで行って7割答案を目指す。
第3問は(1)(2)までは欲しい。(3)は難しい。
第4問も(3)は差がつきそう。(1)(2)までは取れるか。
第5問は(1)は出来るはず。(2)で気づかないと(3)も解けないので、厳しい。
第1問は押さえて、残りでどこまで取れるか。最後が出来ないと半分ない可能性もあるので、かき集めては55%ぐらいがラインではないでしょうか。
3.各問の難易度
☆第1問 【場合の数+数列】9の現れない自然数の個数、逆数の和(BC,25分、Lv.2)
場合の数の絡んだ、数列の和の問題です。う場合の数については易しいですが、後半をうまく評価できるかどうか。しょっぱなから発想重視の問題で、波に乗れた人とそうでない人に分かれたのではないかと。
(1)は最高位、それ以外で分ければすぐにわかりますね。
(2)は逆数の和です。例えば、3桁の数字の場合は、9の入ってない3桁の数字(648個)の逆数の和ですが、そんなものが正確に求められるとは思えません。この「そんなもん、正確に分かるかい!」という発想が大事。なので、3桁で最小の100にしてしまえば逆数は1/100となり、計算も楽です。
648個の逆数の和について、全部1/100にして648個足したものよりは小さくなります。これを用いると、ケタごとの和が評価できます。ケタが変わると、逆数が公比1/10、個数が公比9になるので和も等比数列です。和を求めると80ー●という形が得られるので、バッチシ決まるわけですね。
※KATSUYAの解答時間は8分です。80=8×10 10が公比9/10の等比級数の和であることから、すぐ思いついたので素早くできました。
第2問 【式と曲線】楕円と平行な2直線の交点(C、30分、Lv.2)
式と曲線からで平行な2直線と楕円と交わる4つの点が、正方形になる条件です。答えの予想はつくと思いますが、それ以外にないことを示すところが難しい。
(1)はいいでしょう。2次曲線との共有点条件は連立して判別式Dです。(2)も、交点のx座標の差が等しければOKです。x座標の差は解の公式で出して引くのが最もラクです。
(3)がポイント。結果的には各辺が楕円の軸と平行になるときしかないので、答えを書くことはできると思います。
これ以外ときにないのかどうかを求めるところがポイント。私は、楕円や2直線が(2)の条件下で原点対称であることから、PとR、QとSが原点対称であることを述べ、媒介変数表示をすることで求めました。具体的には
P(2cosθ、sinθ)→対称なR(-2cosθ、-sinθ)、
Q(2cosΦ、sinΦ)→対称なS(-2cosΦ、-sinΦ)
とおきます。平行四辺形であることは(2)から確定なので、正方形にするには「対角線が等しい」「対角線が垂直」の条件式を追加します。これでθとΦの関係式が何通りが出ますが、答えが1通りしかないことが分かります。
他には、2直線がx軸に平行でない場合は、隣り合う辺の傾きの積がー1にならない(-1/4で一定になります)ことなどから示す方法もありますが、いずれも発想と計算力もい必要な議論で、難しいです。
※KATSUYAの感想:解答時間22分。(3)の議論が結構長かったですね。
第3問 【整数+数列】二項係数(カタラン数)が素数となる条件(CD、50分、Lv.3)
二項係数を題材にした整数問題です。空間ベクトルからで、平面と直線の交点と、④点が同一平面上にある条件です。(2)は思いついたかどうかと、そのための計算をどのようにするかがカギになりますが、難しめですので後回しでもよかったですね。
(1)は素直に交点を出します。平面と直線との交点ですが、ACとPQはともにzx平面上なので、Tは結局、直線ACと直線PQの交点です。zx平面上で式を立てて連立するのが速いと思います。ABとPRも同様。
(2)ですが、nに関する証明なので帰納法が思い浮かぶと思います。n=kからk+1への式変形は、複雑ですが、示すべき不等式からムリヤリ変形していきます。
(3)は(2)の証明の仕方によって活かせるかどうかが変わりますが、いくつか計算してみると、n=4から先は素数にならないであろうと予想できます。
あとはanとan+1の関係式で、anが素数になるとすると・・・という議論で矛盾を導く方法でうまくいきますが、ここで背理法を用いるのは発想的に難しく、試験場ではn=2,3と答えだけ書いておいて後回しか捨て問ですね。
※KATSUYAの感想:解答時間32分。(3)はかなり考えましたが、anとan+1の関係式をじっと見て思いつきました。
☆第4問 【空間ベクトル】球面上にある4点の決定(C、45分、Lv.3)
球面上の4点に対して、式の値を最大にするような点を特定する問題です。こちらも(3)は発想が必要で、気づけば時間もそこまでかからずに解答できます。
(1)は等式の証明の方針で、どちらもがっつり展開して、係数kで調節しましょう。
(2)は、a→+b→+c→に関する2次式として平方完成すれば出ます。最大値を取る点の存在は、(3)まで解くことで保証されますので、その順番でいいと思います。別の点を探すのはかなりメンドウです。
(3)は未知数の数と条件式の数に着目できたかどうかです。未知数はAとBの座標で6つですが、条件式はOA=1、OB=1、最大値となるときはa→+b→+c→=3d→で各成分で3つ、計5つです。
一般に、未知数の数>方程式の数だと有限個に決まりませんが、決まるときもあります。a^2+b^2=0のときのように、2乗の和が0になるときは決まります。この事実を思い出して、今回の条件はかなり特殊な場合であると予想できます。
ここから、結局a→とb→が同じ向きに平行なので、まったく一致すると気づければ勝ちですね。
※KATSUYAの解答時間は22分です。(発想:7と√15。sinθとcosθで見かける数値。→成分の和の2乗和を計算して|a→+b→|=2と分かり、特殊な場合と判明。)
第5問 【積分法】2次関数。4次関数と円の共有点条件、y軸回転体(C、50分、Lv.2)
今年も最後は積分法の応用からです。か2次関数や4次関数に円が絡むので、かなり差がつきやすそうです。しかも(2)が求まらないと(3)の体積計算もできないので、(1)どまりの人も多そう。
(1)は出来るでしょう。放物線と円が原点以外で共有点を持たない条件で行けます。放物線の形状と円との位置関係から見ても、これで大丈夫でしょう。
(2)が難問。まず、x^4が正なので、(1)で求めた条件であれば(2)でもOKなことは明らかです。あとはこの条件と全く同じであることを示せるかどうか。感覚的には(これもムズイですが)、原点にめっちゃ近いところではx^2もx^2-x^4もほとんど変わらないので、a=1/2より少しでも大きいと逆転するだろうと思われます。
なので、数式的にも、そもそも条件を満たすaを出しにいく(積極法)のではなく、少なくともa>1/2であれば条件を満たさない(消極法)と言えばOKです(それでも、答えが(1)と同じだと予想がついていないと思いつかない方法なので、難しいと思います)。
(3)はy軸回転体です。x^2が表されればいいので、球の方はラクですし、4次関数側もそこまでしんどくはないです。ただし、球がお椀(問題文の最後以外の領域のことです)からはみ出る可能性があるので、場合分けが必要です。
※KATSUYAの解答時間は29分です。(3)の場合分けの計算よりも、(2)を思いつくのに一番かかっています。
4.対策~論証力、段階を踏んで解決していく能力が必要~
例年の傾向だと、数IIIからは微積+複素数平面、整数、確率、空間ベクトルあたりから5問です。今年はも微積、整数、空間ベクトルが出ました。楕円の出題は少し珍しいかもですね。
東工大の問題は例年、誘導を省いた問題が多いです。(ここ数年はまだまし)。普通なら小問になっているようなものを自分で見つけ出し、自分でそれを解くという作業を行わなければいけません。対策をするなら、誘導がない過去問のレベルに照準を合わせたほうがいいかもしれません。
原則習得段階では、小問になっているようなものについては、その手法をよく意識し、なるべく吸収していきましょう(増減を調べるのにこんな方法があるんだな、こういう立体のときは、x軸切断がラクなんだな など)。
その後の入試基礎演習、入試標準演習の際にも、似たような問題と解法は常に見比べるようにしましょう。したがって、同じレベルの問題でも1冊だけ行うのではなく、複数行ったほうが解法の幅が広がると思います。
また、2018年の第5問のようなこと(ネタが同じ問題を11年越しに出題)が今後、起きないとは限りません。また、複素数平面は2005年以前のものでないと演習できないので、これらも10年分ぐらいチェックしておいてください。最新年から、20年分ぐらいはチェックしておきたいですね^^。
東工大の数学は単科長年のものがありますので、実力がUPしてきたらそちらで演習してもいいでしょう。
初期は、量をこなす演習:じっくり演習=8:2ぐらいがいいですが、少しずつじっくり演習にシフトすべきです。受験後期(秋以降)には、逆に試行錯誤を多めにし、4:6でもいいぐらいです。
以上です^^
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