大阪大学 理系 数学 講評| 2023年大学入試数学

      2024/02/08

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●2023年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は大阪大学(理系)です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2023年 大学入試数学の評価を書いていきます。

2023年大学入試(国公立)シリーズ。
大阪大学(理系)です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。


また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。

※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。

★お知らせ★

Principle Pieceシリーズの販売を再開しました^^ 原則習得のための参考書です。

YouTube開設しました。 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を紹介していこうと思います。

Twitter始めました こちらもよろしくお願いいたします^^

 

YouTubeでも紹介しています。内容はだいたい同じですので、お好きな方でどうぞ^^




大阪大学(理系)
(試験時間150分、5問、記述式)

1.全体総評~穏やか路線終了で難化~

昨年より難化し、2019年以前の難易度に戻りました。どの問題もすんなりとはいかず、解答までの道のりが長く、処理量も全体的に多め。ここ数年続いていた穏やか路線が終了した印象を受けます。

分野的には数IIIが2問と普段より少なく、ベクトルが2問、確率と漸化式です。整数は出ませんでした。ベクトルが2題というのは、かなり偏っている気が^^;

内容的には相変わらず良問が多く、ぜひ演習しておきたいセットですね。

 

試験時間150分に対し、標準回答時間は160分。

2022年:135分

2021年:130分

2020年:111分

2019年:165分

2018年:165分

2017年:150分

2016年:160分

2015年:165分

2014年:140分

2013年:145分

2012年:135分

2011年:170分

2010年:135分

 

2.合格ライン

第1問はキー問題。見掛け倒しなので取りたいが、意外とこれも敬遠した人多いかも。
第2問は(2)がキツイか。問題文の条件や(1)の結果をうまく利用できないと計算の前に挫折する可能性大。

第3問もキー問題。やることは一本道、でも道のりがかなり長い。ある程度書いて部分点は狙える。
第4問は(1)どまりでもいいかと。(2)は少しトリッキー。

第5問はこのセットなら一番マシ。他で振るわないならここで取る。

1番もなんとか、5番を取り、第2問か第3問で合わせて1完分ぐらいできれば。55%ぐらいでしょうか。

3.各問の難易度

☆第1問 【積分法+極限】不等式の証明と極限(B,30分、Lv.2)

数IIIからで、ある不等式を証明し、その不等式を定積分不等式に変えることで極限を求める問題。

問題の流れからハサミうちであることは想像がつくかと思いますが、最初の不等式の見た目がごついので避けた人もいるかもしれません。

不等式の真ん中のΣの部分を、等比数列の和としてとらえられればかなりすっきりします。残りの項と合わせるとさらに簡単になります。あとは不等式なので差を取りますが、微分するまでもなく、xの範囲を利用するだけで符号は確定します。

(2)は(1)を利用します。不等式の形からハサミうちのはずなので、不等式の真ん中と(2)の式をじっと見比べます。(1)のxが0~1なのもヒントで、0~1で積分すればいいと分かるでしょう。真ん中を積分したものの符号違いが出ます。

あとは左辺、右辺を積分して同じ値に収束する計算をするだけですね。

本問は解説動画もあります。ぜひ参考にしてみて下さい。


※KATSUYAの解答時間は8:52です。

 

☆第2問 【平面ベクトル】条件を満たす点OPベクトルの長さの最大・最小(BC、30分、Lv.3)

平面ベクトルからの出題で、文理共通問題です。理系は5題中2題がベクトルでしたが、どちらも難しめでした。

(1)はまともに計算しても0になることは分かります。平面ベクトルでは、2種の長さと内積の3種の数値が分かれば基本的には何でも出せると思っておきましょう。条件式も3つあるので、連立すれば出ます。

ただ、このまま次への準備なく(2)へ行くと、(2)は詰まる可能性が大きいでしょう。

以下、ベクトルの矢印表記省略します。

(1)の結果から、2OA+OBと2OB+OAは長さが1で、垂直なベクトルということになります。このような分かりやすい2ベクトルに主役を交代するということです。この2つのベクトルで、OAやOBも表します。

OPベクトルはsOA+tOBとするのではなく、s(2OA+OB)+t(OA+2OB)とします。2OA+OBをx軸方向に、2OB+OAをy軸方向にとれば、P座標平面上でそのまま(s、t)となります。

これを利用して、条件を満たすP(s,t)を図示すると、数値的にもかなりきれいな領域になります。半円部分です。あとは距離を調べるだけですので、こちらの原則を使えばOKですね^^

 Principle Piece 

 円周上の点との距離 → 円の中心に着目する

(詳細は拙著シリーズ 数学II 式と証明 p.75 参照)

最小値は中心との距離ー半径です。最大値は今回は端っこですね。

(1)の結果からOA、OBの長さや内積は出ていますので、変換してやらずにできないこともないですが、成分でやるにしても、そのまま行くにしても、存在領域を表すときに数値はかなり煩雑になると思います。(同じ半円にはなると思いますが)

本問は解説動画もあります。

※KATSUYAの解答時間は20:12です。最初は主役交代に気づかず。(2)でまともにやろうとして「いや、キツイ」となる。そもそも、「(1)は何のために?今んとこ完全に無視、今後も使う気がしない^^;」と思って、主役交代に気づきました。これはうまく持ってきたと思います。適度に気づきにくい。

 

☆第3問【微分法】接線が4本引けるような領域(BC、40分、Lv.2)

y=cosxのグラフに接線が4本引けるような部分を求める問題。やることは原則に従うだけなのですが、場合分けも多く道のりがかなり長いので、解き切れたかどうかがカギ。

聞き方が若干遠回しですが、おおむね接線の本数と同じなのは分かると思います。接点が違っても接線が同じになることがあるので、あえてこのような表現にしているのだと思います。今回は解として4つあれば(接線が3本になるときもありますが)OKということです。

接線の本数は接点を設定して解の個数に帰着します。数IIの原則ですが、もちろん数IIIでも使えます。

 ULTIMATE Principle Piece 

 接線の本数は接点をおいて解の個数へ帰着

(詳細は拙著シリーズ 数学II 微分法 p.48 参照)

今回は問題文でそもそもおいてくれていますので、接線の式を作って、それが(a,b)を通るとして方程式を作りましょう。あとは、方程式の解が4つあるかどうかです。微分して増減を調べ、4回またぐようにすればOKです。

aの値によって、3通りの場合分けが存在するため、増減表が3つ要ります。解くべき不等式(極大で正、極小で負)の数も多めなので、ここから先がかなり長いですが、これをミスなくやり切ればかなり有利になったでしょう。

 

※KATSUYAの解答時間32:10。最初の方程式の符号を1項だけミスり、それでもうまく計算できてしまったため、領域が存在しない部分が出る。いやさすがにおかしいと思い、最初から見直し。増減表がそこまで大幅な修正にならなくて助かる。あと10分は短くできた。


☆第4問【空間ベクトル】条件を満たすPの軌跡(C、35分、Lv.2)

再びベクトルから、今回は空間ベクトル。こちらも難易度高めで、下手すると(1)も手付かず、(2)は少しトリッキーで処理量も多く、本セットなら捨て問でいいと思います。

(1)は内積の図形的意味を普段から意識している人にとっては当たり前に近いものですので、手が止まることはないと思いますが、まともにQを出そうとするとかなり厳しいでしょう。垂直に引いた線が絡んだ内積の問題では、正射影ベクトルを持ち出すとほぼ計算なしで証明が出来ます。最近この流れがまあまあ多い気がします。

(2)は(1)を使うのだと思えるのですが、Qを成分で置いてしまうと泥沼にはまると思います。成分で計算するのはAP,AOだけで、AQの長さは(1)で使った図から、図形的に長さを出せます。

これによって(1)の条件式は、Qを設定することなく、x、yだけの式に代わりますので、これが軌跡となります。

成分を利用するところ、利用しないところが同じ式の中に入っているため、かなりトリッキーで手がつかない人の方が多かったと思います。軌跡の問題なので、原則的にも動点をQをs,t,uと置きたくなりますが、これでうまくいかないパターンでした。

 

※KATSUYAの解答時間は27:29です。最初成分で置きましたが、うまくいかず。一本取られたなと思う問題ですね。

 

☆第5問 【確率+数列】確率と漸化式(B、25分、Lv.2)

最後は確率と漸化式です。十分なレベルの問題ですが、本セットではここが一番マシという感じで、ここまでふるわなかった場合はここでおさえるしかありません。

bnの式は少しめんどくさそうに見えますが、実際にnが小さい数字で試してみると、どんな式になるのか見えやすいです。(1)では実験をさせるための誘導もあります。

(1)で気づいてほしいのが、a_1^2は7で割れないのですが、余りがいくつであっても、b2が7で割り切れるa2の目が6個のうち1個存在するということです。すなわち、a1でどんな目が出ても、2回目は1/6なわけですね。これが(2)でも活きてきますので、p2まで出させたのはいい誘導だと思います。

(2)は一般項を求めますが、確率と漸化式では、基本的にn回目からn+1回目の遷移を見ます。今回はまず、bnとbn+1の関係を見ましょう。Σの式のままだと見えにくいですが、n進法の桁にa1,a2・・・が配置されていると考えると分かりやすかったと思います。

関係式を元に、pn+1とpnの関係を考えますが、ここで先ほどの考え方を使います。bnが7で割り切れてしまうと、次にどんな目が出てもbn+1は7で割れません。

求めたい確率以外の確率も考えるのが原則なので、割り切れない場合も考えます。bnが7で割り切れない場合は、bn+1が7で割り切れるようなn+1回目の目は1つだけ存在します。

確率は足すと1になりますので、bnが7で割り切れない場合は1-pnです。これで漸化式が作れました。漸化式は4型なので特性方程式を利用して等比型に帰着させればOK。

本問は解説動画もあります。

※KATSUYAの解答時間10:42です。確率と漸化式は個人的にも好きなので、気持ちもラク。

 

4.対策

阪大は良問ぞろいです。融合型が多く、分野はまんべんなく出ます。中でも確率、整数、微積は頻出(2023年は整数出ず)なので、重点演習が必要。昔の傾向からすると、複素数平面は東大や京大に比べると頻度は少ないかもしれませんが、出てないわけではないので油断はできません。(2019年、2020年、2022年で複素数平面出てます)

阪大は微積で空間図形のことが多いので、空間図形の演習も必要です。図形的な感覚よりも、数式処理で考察できることを重視しましょう。感覚だけでは、積分計算に持ち込めませんので。

原則の習得は早めに終わらせ、早い段階で入試演習へ移行したいところです。阪大数学は下記のように単科長年タイプの本もありますので、傾向つかむ上でも早めに購入しておきましょう。本格的にやるのは秋以降でもOK。先に入試標準レベルまでは最低限行い、できれば仕上げ段階まで行いたいところです。

量をこなす演習:じっくり演習=7:3ぐらいでしょう。

 

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