慶應大学 薬学部 数学 講評 | 2023年大学入試数学

      2024/01/05

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●2023年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は慶応大学(薬学部)です。


2023年大学入試(私大)シリーズ。

慶応大学(薬学部)です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。

 

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慶応大学(薬学部)
(試験時間80分、3問、穴埋め型)

1.全体総評~一昔前の流れに戻してくるのか~

昨年は量が大きく増えましたが、今年はそこからさらに計算量が多くなり、かなり苦しいセットとなりました。

ただし、直近の4年ぐらいが軽かっただけで、それより前(2017年以前)はこれぐらいの量が平常運転でしたので(エントリー最下部の他年度のリンクを参照)、一昔前の通常運転に戻っているだけ、という見方も出来ます。

1つ1つの問題の難易度はそこまで高くなく、原則をするだけで解ける問題がほとんどです。ただし数値のキタナイ問題が多く、計算に時間がかかりますので、考え込んでいる時間はなさそうです。このあたりも一昔前と同じ傾向。


試験時間80分に対し、標準回答時間は164分【109分】

2022年は146分【100分】(←穴埋め考慮)

2021年は117分【78分】(←穴埋め考慮)

2020年は120分【82分】(←穴埋め考慮) 

2019年は116分【74分】(←穴埋め考慮) 

2018年は106分【71分】(←穴埋め考慮)

2017年は163分【110分】(←穴埋め考慮)

2016年は149分【97分】(←穴埋め考慮)

2015年は123分【82分】(←穴埋め考慮)

2.合格ライン

第1問:全部で小問が7つ、20個の穴埋め。ウ、エ、キ、コ、トあたりはキー問題か。あとは「ツ」なども時間はかかりそうだが、原則に従えば方針に迷うことはない。出来れば14個ぐらいが、計算的に厳しいか。もたしてるとここで80分かかる。

第2問はキー問題。あることに気づけばただのパターン問題。(1)どまりか、最後まで解けるかになりそう。

第3問はデータ分析で、ひたすら計算するだけ。時間さえあれば出来るはずだが、どれぐらい余ってるか。実は要領よくやれば(3)以外は比較的短時間で答えられる。

時間を確保して第3問に手をつけられたかどうかと、キー問題の出来具合が合否を分けそう。今年は計算量も多く、6割ぐらいでしょうか。

3.各問の難易度

第1問(1)・・・【数と式、整数】因数分解、整数解(AB、 9分【6分】、Lv.1)

今年は最初に整数問題が入りましたが、基本です。

共通因数でくくって因数分解します。因数も5つ、素因数分解すると素因数も5つなので、1つずつ割り振ります。

2以上という条件から、多項式が11、19のどちらかになることを利用して候補を絞りましょう。約数の候補が多いときは、まず典型3パターンで絞れないか確認します。

 Principle Piece 

 約数の候補を絞る典型3パターン 正負、大小、奇偶

(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数 p.46 参照)

※KATSUYAの解答時間は3:07です。

年度は違いますが、KO薬は整数解を求める問題が好きです。こちらの動画も参照のこと。

☆第1問(2)・・・【図形と式、三角比】折れ線の長さの最小、内接円の半径(B、 20分【12分】、Lv.2)

図形と式からで、折れ線の長さの最小値に関する問題ですが、少し設定がひねられているため、差がついたでしょう。

折れ線の最小値と言われたら折り返して伸ばすことが原則です。設定がひねられていても、まずは原則に従ってみましょう。そうすれば見えてきます。

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 折れ線は折り返して伸ばす → 直線に関する対称点を取る

(詳細は拙著シリーズ 数学II 図形と方程式 p.73 参照)

これにより、最小になるときは、BPと直線もなす角が45度であることが分かると思います。光の反射のような動きをするときが最小になります。なお、屈折のときもそれは同じで、最短の時間でたどり着くような経路を光は通ります(数IIIの微分で証明可能)。知っておいて損はないでしょう。

これにより、BPの傾きはtanの加法定理で出せます。2直線のなす角と言えば、tanの加法定理ですね。

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 2直線のなす角は tan の加法定理で攻める

(詳細は拙著シリーズ 数学II 三角関数 p.47 参照)

傾きと点Bの座標でBPの式、それと直線Lの式を連立してPも出せます。今回、APとBPは垂直なので、APの傾きもすぐにわかり、Aの座標も分かります。

3点とも分かったので、三角形は決まります。内接円の半径は面積媒介が原則です。

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 内接円絡みの問題→面積を媒介にする

(詳細は拙著シリーズ 数学I 三角比 p.51 参照)

直角三角形なので面積はすぐに出ます。答えの数値はかなりキタナイので不安になりますね。

 

※KATSUYAの解答時間は6:52です。

 

☆第1問(3)・・・【微分法】3次関数の決定、不等式成立条件(B、18分【12分】、Lv.2)

微分からです。係数を決定した後に、不等式成立条件を求めます。後半はごつく見えますが、整理すると結構キレイになります。

前半はいいでしょう。条件を式にして連立します。

後半は成立するとx^3-12cx+10≧0となります。これが0以上で成り立つ条件です。制限付きの不等式成立条件は最大・最小に帰着させます。

 Principle Piece 

 制限ありの不等式成立条件→最大・最小の問題に帰着

(詳細は拙著シリーズ 数学I 2次関数 p.65 参照)

増減を調べれば、極小値が最小値になることが分かりますので、その値が0以上であればOK。

あるいは、定数分離して視覚化も有効です。cのついている部分が1次なので、グラフで様子がつかみやすいです。

 Principle Piece 

 文字定数入りの方程式・不等式 → 定数分離で視覚化

(詳細は拙著シリーズ 数学II 微分法 p.42、数学I 2次関数 p.82 参照)

y=x^3+10というグラフと、y=12cxというグラフを見て、接するときがギリギリ成立するときです。原点を通るような接線なので、先に接点をおいて求めるんでしたね。

 ULTIMATE Principle Piece 

 曲線外から引いた接線→まず自分で接点をおく

(詳細は拙著シリーズ 数学II 微分法 p.15 参照)

これで接点が出れば傾きが出ます。12cがその傾きになります。

うまく式変形すると、3数の相加平均・相乗平均の関係を用いることも出来ます。穴埋めならこれが最短でしょう。

 

この問題は動画で解説しています(解法3通り)。

※KATSUYAの解答時間は3:24です。

 

第1問(4)・・・【空間図形】球面の切り口、線分の長さ(AB、15分【10分】、Lv.2)

空間図形の問題で、球面と平面の交線などを聞いてきます。後半は少し惑わせるような設定でした。

前半はy=2を代入するだけです。さすがに簡単ですね。

後半ですが、x=3も代入するとzも決まるので、AとBの位置は決まります。Pの位置は決まりませんので、「これでAE出るのか?」となりそうですが、実はPがどこにあろうとも、Eの位置は決まります。EがABを何:何に内分するかは決まりますので、Pはどこでもいいわけですね。

AE:EBを出すのはベクトルでもいいですし、メネラウスの定理でもOK。こちらも数値がキタナイ。。。

※KATUSYAの解答時間は4:47 です。

 

☆第1問(5)・・・【確率+数列】確率と漸化式(B、15分【10分】、Lv.2)

少し前に本学が好んで出していた確率と漸化式です。ここ数年は息をひそめていましたが、帰ってきました。以前に比べるとかなり簡単な方で、これは慶應薬なら取れないとマズイ。

確率と漸化式では、n回目からn+1回目の遷移を見ることが原則です。今回は状態が2つしかないので状態も把握しやすく、設定も単純です。漸化式はよく見る4型(特性方程式型)です。

この問題は動画で解説しています。初心者用の練習としていい問題です。


※KATUSYAの解答時間は3:22 です。これはかなりラクなパターン。

 

☆第1問(6)・・・【指数・対数】指数方程式が解をもたない条件(B、20分【13分】、Lv.2)

指数方程式の問題で、こちらも超典型問題です。

2^x+2^-xの置き換えでは、範囲は相加相乗の関係で出します。

 Principle Piece 

 ●^x+●^-x の置き換え→範囲は相加相乗で

(詳細は拙著シリーズ 数学II 指数関数・対数関数 p.15 参照)

これでtの範囲も出し、f(x)もtの式で表せます。真ん中まではスラスラ行きたいところ。

最後は、方程式がt≧2で解をもたない条件を求めます。解の存在範囲のパターン問題ではありますが、小問の中に押し込まれると結構メンドウ。出来る限り素早く解答したいですね。

「そもそも解がない」か、「持つとしても2未満で持つ」かです。

※KATSUYAの解答時間は5:57です。

 

 

第1問(7)・・・【整数】n進法、n-1で割り切れる条件など(AB、9分【6分】、Lv.2)

再び整数からです。最初と最後が両方とも整数からでした。

問題の表現は遠回しですが、考える式は4n^k+1という式です。

(1)はk=3として、これをn+1で割った余りを出すだけです。多項式として割ってもいいですが、余りー3と書かないように注意。余りは0~nまでで書きます。

(2)はkが分からないので割り算は出来ませんが、指数に文字が入っている場合は合同式が有効。≡±1を探すんでしたね。

 Principle Piece 

 指数にn→「≡±1」となるものを探す

(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数 p.29 参照)

n-1を法として考えると、n≡1となりますので、何乗しても≡1のままです。これに気づけば簡単に分かりますね。n-1が5の約数であればOKとなります。

※KATSUYAの解答時間は計3:01です。

 

☆第2問・・・【図形と式+積分】存在領域(媒介2変数)、面積(B、25分【16分】、Lv.2)

図形と式に関する問題で、x、yが円の内部をうごくときに(x-y,xy)がどこを動くかという問題。(2)で詰まると(3)も解けないのですが、(2)で気づけるかどうかなので、ここ差がついたかと思われます。

(1)は表現が無駄に遠回しですが、中心A、半径2の円です。

(2)がポイント。(xy、xy)ならよく見る問題ですよね。今回は、xとーyの対称式とみなすとうまくいきます。

求める点(X,Y)としておくと、x+(-y)=s、x(-y)=-tとなります。和と積から、解と係数の関係で2次方程式が作れます。その実数解条件が存在領域になりますね。

 Principle Piece 

 対称式絡みの領域は基本対称式を主役に

「暗黙の実数解条件」に注意

(詳細は拙著シリーズ 数学II 図形と方程式 p.96 参照)

(2)が出来れば、この領域と、元の円の式をx-y=s、xy=tで表したものの領域の共通部分が書けます。放物線同士なので、面積も6分の公式で楽勝です。なお、今年は積分はここだけですが、ここまで来れなかった人の方が多そうですね。

 

KATSUYAの解答時間は8:40です。x+yならよく見る問題でも、これは初見とたどり着かない可能性が高そう。ぜひ経験しておきたい問題。

 

第3問・・・【データ分析】平均値、標準偏差など(B、35分【20分】、Lv.2)

最後は2022年に引き続きデータ分析から。2020年にもKO薬では出題がありました。データ分析の単元からも少しずつ、いろんな大学で出題され始めています。ネタができ始めた?

2022年同様、データ系は時間をかけて計算すれば解ける問題が多いので、大目に時間を確保して確実に得点したいところです。

本問も計算すれば終わりの問題ですが、計算量が昨年よりさらに増えたので、

(1)はひたすら平均値を求めます。ただの20個の平均ではないところがまたメンドウで、属性ごとに何回も平均の計算をします。せめてXだけの人とか、まとめておいてほしかったですね。

(2)は第1四分位数と第3四分位数を答えるだけ。これが一番ラク。

(3)は相関係数です。データ数は少ないですが、このセット、この制限時間で相関係数の計算をまともにやらせるのは鬼ですね^^;

(4)はもう一度計算しなければならいのか、となりそうですが、ただの変数変換です。そこに気づければ(4)は(3)が出来なくても答えられます。どちらも線形変換(1次式による変換)なので、相関係数は変わりません。

 

※KATSUYAの解答時間は16:07です。半分ぐらい(3)にかかってる。(3)さぼって(4)答えられることに気づけば、試験場では(3)以外を答えるのが正解かも。(3)も、データの数値を考えると「マ」は予想がつく。要領が良ければ飛ばすのは「ホ」だけで済む。

 

4.対策~パターン問題を瞬時に見ぬき、素早く計算を~

見てお分かりの通り、原則が使える問題ばかりです。従って、まずは問題を見たらどの原則に当てはまる問題かを瞬時に見抜いて、すぐに手を動かせるぐらいの演習が必要です。そうでないと時間が足りません。

ここ最近は穏やかでしたが、また通常運転に戻りそうな流れです。これを見ている志望者は、間違いなく計算練習をしてくるでしょう。対策は難しい年のも含めて、「この難易度になる可能性もある」と思ってやっておいた方がいいでしょう。(2023年はまさにこれが当てはまりましたね)

レベル的には、原則習得入試基礎レベルまででも7,8割対応出来ますが、レベルの高い重要例題でもすぐに方針が立つぐらいやり込んでおくべきです。

 

最終段階は入試標準レベルまで欲しいですが、ここが第一志望の場合は、過去問を長年分手に入れて過去問演習を多めにやり、時間配分の作戦などを早めに立てましょう。

なお、拙著「Principle Pieceシリーズ」であれば「原則習得」「入試基礎演習」の両方の段階を兼ねていますので、この後にもう入試標準演習の問題集に接続可能です^^

 

変な難問が出るわけではない(出ても捨てて問題なし)なので、Iの絶対値付き2次関数、A・II・Bを中心にまんべんなく量をこなしましょう。

量をこなす演習:じっくり演習=8:2ぐらいですね。

以上です^^

■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)

数学I Chapter3~2次関数~ (第1問(6))

数学A Chapter2~確率~ (第1問(5))

数学A Chapter3~整数~ (第1問(1),(7))

数学I・A ~原則のみ~

 

数学II Chapter3~図形と式~ (第1問(2)、第2問)

数学II Chapter5~指数関数・対数関数~ (第1問(6))

数学II Chapter6~微分法~ (第1問(3))

数学II Chapter7~積分法~ (第2問)

数学II~原則のみ~

 

数学B・C Chapter1~数列~ (第1問(5))

数学B・C Chapter3B~空間ベクトル~ (第1問(4))

※2023年末時点で販売中のもののみ記載しています。最新販売情報はこちらからどうぞ^^

 

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