慶應大学 医学部 数学 講評| 2023年大学入試数学
2024/01/05
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●2023年度大学入試数学評価を書いていきます。今回慶応大学(医学部)です。
2023年大学入試(私大)シリーズ。
慶応大学(医学部)です。
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。
したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。
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YouTubeチャンネルです 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を紹介していこうと思います。
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慶応大学(医学部)
(試験時間100分、4問、ハイブリッド型)
1.全体総評~過去10年ぐらいでみても最易か~
易化です。2010年から解いて講評をUPしていますが、それ以来最も易しいと言えます。もちろん、計算量の多い問題はあります。それでも方針に詰まるような問題が少ないため、考え込んで手が動かずにギブアップ兼タイムアップということはないでしょう。
今年は、解き切らなくてタイムアップのパターンの人が多そうです。
なお、今年も論証問題が出題されず、すべて穴埋めの問題でした。
試験時間100分に対し、
標準回答時間は133分【91分】(←穴埋め考慮)制限時間内なのは調査以来初めてです
2022年は169分【111分】
2021年は203分【123分】
2020年:177分【113分】
2019年:164分【106分】
2018年:197分【124分】
2017年:185分【128分】
2016年:200分【125分】
2015年:213分【115分】
2014年:165分
※本エントリーの【 】内は、慶応医学部受験者層のレベルを考慮していますので、その他の大学に比べて短めです。それでも、100分をオーバーすることがほとんどです^^;
2.合格ライン(科目全体では60%)
第1問は小問が1つ減っていますが、個数は9個のまま。今年も易しめでしたが、(2)は意外と手がとまるか?
第2問の確率も例年に比べてラク。(1)さえ間違えなければ(4)までは最低でも欲しい。(5)はキー問題。
第3問はいろいろ独立して聞かれているので時間はかかる。(4)は差がつきそう。(5)は計算がメンドウだが、慶應医なので正解したい。
第4問はキー問題。θからtの式への変換がすっとできないと、後半を中心にまあまあメンドウ。
今年は70%あっても不安なぐらいです。この時間と難易度であれば、合計で3完以上してくる受験生も多そう。
3.各問の難易度
第1問(1) 【三角比 or ベクトル】内分点が満たす条件式(B,8分【5分】、Lv.2)
三角形の内分点について、長さの条件式を求める問題です。三角比として解くか、ベクトルとして解くか。
今回のような聞き方であれば、ベクトルが速いと思います。AB,ACベクトルを基本ベクトルにすると、現れる項は長さの2乗と内積ですが、左辺からは内積は現れませんので、右辺も内積が現れないようにする必要があります。
これによってBD^2の係数が決まり、右辺を計算すれば左辺も係数が決まります。
三角比で計算する場合は、∠ADBと∠ADCのcosを余弦定理で表し、符号違いであることを式にするとうまくいきます。この状況の図形においてよくやる手法です。(拙著シリーズ 『数学I 三角比』をお持ちの方は p.73の例題36 参照)
☆第1問(2) 【複素数平面】複素数平面上での方程式の解(AB,10分【7分】、Lv.1)
複素数平面からで、複素数係数の2次方程式の解を複素数平面上にとったときの長さや中点などを聞いています。
係数が複素数で少し戸惑ったかもですが、ただの2次方程式です。z^4=-1のような形に出来れば極形式を使えるので、平方完成の要領で 4(z+1/2)^2=1+√3iと出来れば、z+1/2を極形式であらわせます。
距離であれば+1/2があっても関係ないですし、z+1/2としては原点対称(中点が原点)ですので、中点も簡単です。垂直二等分線の傾きも、+1/2の差は影響ありません。
教科書や問題集にも載っていないので、うまくひねってきたと思います。複素数平面は数式による変形と図形的意味のつながりを理解する単元です。それを普段から意識していたかどうかですね。
第1問(3) 【微積分総合】接線の方程式、面積(AB,10分【6分】、Lv.1)
微積分総合と聞くとムズそうですが、接線の式と面積を求めるだけです。
接線はいいでしょう。面積はxlog(x^2+1)の積分です。対数が相手なら、先にxを変形します。
xを変形するときに、(x^1+1)/2としておくと、部分積分の後ろがラクになります。そこまで見越してサクッと変形したいところですね。
※KATSUYAの解答時間は計9:37です。今年も最初は全体的にラクな問題が多かった。理工の方が全然ムズイ・・・
第2問 【確率】日本シリーズパターンと確率(B、25分【18分】、Lv.2)
今年もいつも通り2番は確率です。腕相撲で先に2勝したほうが勝ちというものですが、今年の確率はかなりラクな方だと思います。
(1)が基本ですが、ここで間違えると2番全滅ですので、慎重に。日本シリーズパターンは、何試合目で勝負が終わるかで場合分けします。
(詳細は拙著シリーズ 数学A 集合と場合の数 p.9 参照)
あとは反復試行の考え方ですね。
(2)では、1試合1試合を反復試行とみなせばいけますね。2点、1点、0点(負け)の確率を先に出したのが(1)ですので、これを利用します。
(3)も、Bは一度も勝っていないので、Aが2点、1点を何回獲得したかが分かります。回数も自分で求めて反復試行です。
(詳細は拙著シリーズ 数学A 確率 p.22 参照)
(4)も同じです。2点、1点、0点が何回ずつあればいいかを考えます。今回は2通り考えられますが、これも全然ラク。同じ年の商学部の4番にも似たような問題ありましたが、そっちの方が計算メンドウです。
(5)は、あることに気づきたいです。AとBは対称ですから、a4<b4の確率も同じです。従って、同じになるa4=b4の場合を求めて1から引いて2で割ればいいことになります。
a4=b4の場合であればまだ数えやすいですね。2人とも(2点、2点)(2点、1点)(1点、1点)の場合を考えるだけです。並べ方の総数が真ん中だけ違うので注意。
※KATSUYAの解答時間は12:46です。今年はちょっと簡単すぎるような気がします。例年はもっともっとムズイ。
第3問 【微積分総合+極限など】接線と点列、軌跡、面積(B、35分【25分】、Lv.2)
曲線上の点における接線を引き、再び交わる点からまた接線を引くという作業を繰り返す問題です。よくある題材ですね。
関数は単純なのでそこまで計算はしんどくないですが、極限やら重心の軌跡やら鋭角三角形になる条件やら面積やら、いろいろ聞いてきます。その代わり、芋づる式にはなりません。
(1)(2)は最初からa_nで計算した方がいいです。規則的に点や図形を作る問題は、a_1とa_2を聞いてくることが多いですが、a_1からa_2を求めるためにやる作業はnとn+1でやっても同じです。記述式だと2度手間ですので、最初からnとn+1でやりましょう。
聞き方からしても明らかに等比数列です。これで一気に出来ますね。接点以外の交点を求めるときは、x=anが重解になることを利用してサボると簡単ですね。3次関数のときによく使う原則です。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 微分法 p.60 参照)
公比が出れば級数も出ます。
(3)も(1)で関係が出せていれば、x座標とy座標をa_1だけで表せますので、媒介変数a_1を消しましょう。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 図形と方程式 p.52 参照)
(4)はちょっとメンドウですが、鈍角になる可能性のある所が2ヶ所ありますので、その2ヶ所について2乗の和と残りの長さの2乗を使えばOK。ベクトルの内積の符号を条件にしても解けます。
(5)は面積です。こちらも(1)の関係さえ正しく出せていれば解けます。S1は台形。S2はS1をくっつけた形で出すと簡単だと思いますが、最後にS1を引くのを忘れずに。(私、忘れました^^;)
※KATSUYAの感想:解答時間17:14。最後の面積は完全にケアレスミス。5:14って書いてしまいました。穴埋めだと一番勿体ないミスです。
☆第4問 【式と曲線+微分法】極方程式、面積や周りの最大値など(BC、45分【30分】、Lv.2)
最後は慶應医らしい数IIIの微積分総合。式と曲線の内容が少し入りつつ、数IIIの微分が中心。旧IIICの融合問題で、それなりに重いです。
(1)はさすがにすぐに出ると思います。円どうしが接する問題では、接点と中心、中心と中心を結ぶと見通しが一気によくなります。OP=r、PQが半径でrsinθとなり、一直線になって和が1です。
tについては、tanθ/2であることが見抜ければ一瞬で式変形できます。(拙著シリーズ 『数学II 三角関数』をお持ちの方は 例題38 参照)
本学のように穴埋めであれば結果を使えますので、覚えておくことは必須レベルの準公式です。過去にもこれを使うと一気に時短出来る問題は、慶應医学部で出ていました。
(2)は面積をθの式で表して微分すればすぐに出ます。三角方程式の処理能力も問われます。種類をそろえることが最優先で、2乗は相互関係で乗り換え可能であることを利用しましょう。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 三角関数 p.50、80 参照)
(詳細は拙著シリーズ 数学I 三角比 p.24 参照)
「お」も、15°系の値を知っていれば瞬殺。15度系も私大なら必須と思った方がいいです。
(3)はさらに円を増やしますが、明らかにx軸上に中心がありますので、中心(-1+b,0)として式を作ります。外接条件d=r+r’を使いましょう。Pもxy座標にしてtで表します。この際にもtanθ/2の準公式は役に立ちます。
最後までたどり着くのはそれなりにメンドウです。
最後は(4)が出れば出るでしょう。半径の和の式をまた微分して最大値を出し、2π倍すればOKです。
全体を通してやることは明確ですが、微分計算が2回あり、計算量は多かったです。でもこれで例年ぐらいだと思います。
※KATSUYAの解答時間は29:41です。(3)を求めるときに、C2の半径をrcosθと勘違いして計算してしまう。それでもそれなりにきれいな答えになるので、(4)へ進むも、微分がやばいことに。θ出せなくない?となったのでやり直し。(3)(4)ほぼ解きなおしでロス。まあ気づいただけマシとしよう。
4.対策~癖と計算力の多さに慣れる~
傾向、形式ともに癖の強いセットです。ここ最近は出てませんが、確率と漸化式は名物で、微積と極限もボリュームの大きいものが出ます。計算力、演習ともに必要です。
高校2年生の段階でも、典型パターンの7割が習得済みであることが望ましいです。共通テストですでに7,8割とれるようなレベルにいないと厳しいでしょう。本学受験生の高2で、数IIIにまだ手がついていない人は、いますぐ独習してください。そんなペースでは本学部の試験には耐えれません。
高3に入ったときには原則習得段階は終えて、入試問題演習に入りたいところです。夏以降はさらにレベル高めの入試演習、を行い、仕上げ段階まで行ってから過去問、といった感じでしょう。理工学部もレベルや出題内容(確率と漸化式はかなり似ています)、形式が似ているので、使えます。
量をこなす演習:じっくり演習=6:4ぐらいでしょう。3年生になったらできる限りじっくり演習したいです。2時間でも考え込んでしまってもOKです。
ただし、あらゆる手段(明らかに計算すると途方もなく時間がかかりそうでも、それで押し通してみる!)で手を動かしてみることです。答えにたどり着かなくても、計算力は着実にUPしていきます。普段の練習から「これ計算するん?無理やろ~」と思ってあきらめるのはNGです。そんな計算は慶應医であれば平気で出ます。
以上です^^
■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)■
数学I Chapter4~三角比~ (第1問(1),第3問)
数学A Chapter2~確率~ (第2問)
数学II Chapter3~図形と式~ (第3問)
数学II Chapter4~三角関数~ (第3問)
数学B・C Chapter4~複素数平面~ (第1問(2))
数学B・C Chapter5~式と曲線~ (第4問)
数学III Chapter2~極限~ (第2問)
数学III Chapter3~微分法1~ (第1問(3))
数学III Chapter4~微分法2~ (第4問)
数学III Chapter6~積分法(グラフ編)~ (第1問(3),第3問)
(旧)数IIIからはほぼすべて出題されてますね。重い。。。
すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!
数学III~原則のみ~
※2023年6月末時点で販売中のもののみ記載しています。最新販売情報はこちらからどうぞ^^
■他年度の、本大学の入試数学■
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