慶應大学 理工学部 数学 講評|2023年大学入試数学

      2024/01/05

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●2023年大学入試数学評価を書いていきます。今回は慶応大学(理工学部)です。


2023年大学入試(私大)シリーズ。

慶応大学(理工学部)です。



問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。

また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。

 

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慶応大学(理工学部)
(試験時間120分、5問、ハイブリッド型)

1.全体総評~どれも手はつくが完答には苦労する~

昨年より難化しましたが、うまく最後を捨ててまんべんなく手をつければ、比較的点数は取りやすいセットだったのではないでしょうか。最後までたどり着くのは難しい問題が多いですが、時間のかかる問題はほとんどが大問の最後に偏っており、問題間、そして同じ問題の中でも難易の差が大きいセットでした。

内容的には数IIIが3問、確率と漸化式、ベクトル、整数ですので、確率+BIII(ビーサン)出題の傾向は相変わらずですね。



試験時間120分に対し、標準回答時間は200分【144分】(←穴埋め考慮)

2021年:137分【99分】(←穴埋め考慮)

2021年:175分【136分】(←穴埋め考慮)

2020年:173分【120分】(←穴埋め考慮)

2019年:154分【112分】(←穴埋め考慮)

2018年:222分【158分】(←穴埋め考慮)

2017年:200分【135分】(←穴埋め考慮)

2016年:183分【134分】(穴埋め考慮)

2015年:186分【139分】(←穴埋め考慮)

2014年:156分、2013年:180分 

2.合格ライン

第1問は記述だが、ここが最も簡単なので、ここで点数も時間も貯金。

第2問は(3)は気づかないでベクトルなどで計算使用するとかなり厳しい。(2)までで逃げるのが正解。

第3問の確率も(2)までは本学部受験者なら出来てほしい。(3)は厳しい。「コ」が出来れば御の字。「サ」は本セット最難問で捨て問。

第4問が最も差が付きそうでキー問題。誘導に従えば最後まで行けるが、そのためには計算力も発想力も必要なため、どこまで行けたか。(1)が意外と詰まるが、それでも(2)以降は出来る。

第5問は2問構成。(1)は最後は出がつかない人が多いかと。それ以外は計算はメンドウだが、本学部受験者ならできてほしい。(2)は取りたい。

うまく全体に手をつければ65%ぐらい取れるか。最後のせいで時間のかかる問題が多いので、最後を捨てれば時間は多少余るはず。

 

3.各問の難易度

第1問(1)・・・【微分法】微分係数の定義(A、3分、Lv.1)

微分係数の定義に従って計算するだけです。慶應理工とは思えない易しい問題。さすがに足をすくわれる人はいないのではないかと。

 

第1問(2)・・・【微分法】微分可能性(A、4分、Lv.1)

微分可能でないことを証明する問題で、こちらも教科書レベル。

微分係数の式において、左方極限と右方極限が違う値になることを言えばOKですね。

 

☆第1問(3)・・・【微分法の応用】平均値の定理、単調減少の証明(AB、5分、Lv.1)

導関数が負なら単調減少であることを証明せよという問題。当たり前のことほど証明が難しいです

今回は「平均値の定理を用いて」と書いてあるので、方針に迷うこともなかったと思います。平均値の定理は、「間にある」が不等式の源になることを意識しておきましょう。
※KATSUYAはの解答時間は計6:49です。さすがに簡単な気がする。証明できない学部生が意外に多くて、試験になると判断した?

 

☆第2問・・・【空間図形】台形の面積など(C、40分【28分】、Lv.2)

空間上に置かれた台形の長さや面積などを求める問題です。こ(2)まではやることも明確で解きやすいですが、(3)はあることに気づかないと、計算でやろうとすると泥沼にはまります。やばそうと思ったらパスするのが正解でしょう。

(1)の最初はcosの値。空間でなす角を聞かれたら、ベクトルの公式を使いましょう。台形でOA=4BCなので、面積はOABの5/4倍とするのがラクです。OABもベクトルでの三角形の面積公式でもいいし、cos出したのでsin出して三角比の面積公式でもOK。ACは台形で図形的にアプローチして出してもいいし、Cの座標をkで表せるので、2点間の距離公式でもOK。

(2)は、円に内接する台形は等脚台形ですので、OB=ACとするだけです。記述なら証明する必要がありますが、円周角などに着目すればすぐにわかります。

(3)は気づかなければ捨て問でしょう。OB=ACなので、これを底辺とみなし、高さが等しければOK。従って、直線OBと直線ACから等距離にあるのが点Pです。これが2次元なら、角の二等分線になります。立体では、そのまま角の二等分面(OABCに垂直な面)になるだけです。

さらにOADが二等辺三角形であることも考えると、考えている平面はOAに平行です。(もう一つは、OAの垂直二等分面です。)結局求める高さは、台形の高さの4/3倍ということです。

※KATSUYAの解答時間は14:06です。最後は気づかないと無理か。問題文にヒントらしきものはあるが、さすがに初見では二等分線の応用には気づかないかと。

 

☆第3問・・・【確率+数列】条件付確率、確率と漸化式など(CD、60分【40分】、Lv.3)

KO理工の3番は今年も確率です。ここの確率は基本的にレベルが高く、今年はその中でも高い方です。最後は本セット最難問でしょう。

ルールは少しややこしめですが、少ない方を補充するときは等しくなるまで補充するということです。

(1)はそのあとの条件付き確率もあるので、16通りとも書き出すのが正解だったと思います。なお、「カ」は最後の問題の「コ」を正しく出せれば、n=4を代入するだけです。条件付き確率は、あてはまるものに対して、5~7回目をさらに数えていかないといけません。過不足も発生しやすく、差が付きそうですね。

(2)は典型的確率と漸化式の問題で、原則を学習するのにもってこいの適度な難易度の問題。ここでしっかりおさらいしましょう。

まず、問題文にあるように、確率と漸化式では、n回目からn+1回目への遷移を見ます。

その際に、「AがBより多い」以外に、「BがAより多い」や「AとBが等しい」という状態も考えておかないと遷移図は書けませんので、求める確率以外のものを設定します。

今回は状態が3つですが、対称性を利用することで、「AがBより多い」と「BがAより多い」確率は同じです。さらに、確率は足すと1になりますので、A=Bの確率は1-2pnとおけます。

 

これらの原則をきっちり適用すれば、漸化式が簡単に作れます。漸化式は4型ですので、特性方程式を作ればOK。

 

(3)は難問です。試験場では捨てるのが正解でしょう。「コ」は強引に数えられなくもないですがそれでも出来れば御の字です。「サ」はさらに難問です。表から裏に代わるタイミング(その逆)がどのように起こればよいかに着目しますが、それでも、n個、n-1個、n-2個と別々に考えないと立式もままならず、発想的にもかなり厳しいと思います。

こちらも漸化式を立てて解くことはできますが、先ほどよりもはるかに難しいため、どちらにしても捨て問でしょう。

 

※KATSUYAの解答時間は14:20+22:00です。最後の「サ」を飛ばして一旦逃げ、後で戻ってきました。漸化式でやりましたが、かなり試行錯誤しました。

 

☆第4問・・・【極限+積分法(数式)】定積分と漸化式、極限(C、40分【26分】、Lv.2)

n乗絡みの定積分を漸化式で表し、それを利用して級数の極限を求める問題て、難関大では頻出のテーマですが、計算、発想ともに必要なので差はつきそう。

(1)ただの不等式成立条件ですが、意外とここで詰まったのではないでしょうか。数式処理するなら、絶対値付きなので2乗して差を取ります。

 Principle Piece 

 不等式証明3 → 根号、絶対値絡みは2乗の差

(詳細は拙著シリーズ 数学II 式と証明 p.43 参照)

2乗同士なので因数分解出来ます。cosxに関する不等式が得られますが、b=0のときだけ記述であれば別で調べることに注意。あとは正でも負でも、2次の係数は正になります。

cosxの単調性を利用すれば、そのままでも行けなくはないです。bが正、0、負で分ければ比較的ラクにわかるでしょう。あるいはグラフで視覚化するのもありです。

 

(2)は(1)を利用してハサミうちになることは予想がつくと思います。a_nの被積分関数にb^nをつけて、そのまま(1)の不等式を利用すれば分母がごそっと消えます。分子は(cosの式)×sinなので、置換積分ですね。積分値は1/nとなりますので、ハサミうちです。

(3)は具体的に計算します。分母の微分が分子になるパターンですから、logのパターンです。

(4)はメインの1つです。n絡みの定積分で漸化式を作る場合は、部分積分を行います。何と何の積とみなすかですが、分子と分母で分ければやりやすいと思います。a_n=…からはじめて、さきに分子を積分すれば指数は1上がります。分母は積分は難しいですが微分は簡単です。これで分母の指数も上がりますので、a_n+1が見えます。これをa_n+1=…に直しましょう。

(5)は(2)(3)(4)を全て用いますが、これは発想も必要なので差がついたでしょう。まず、(4)で得られた漸化式を見て、b=1/2を代入し、さらにb^{n+1}をかけようという発想になれるかどうか。普段は指数型の漸化式のときにやる式変形ですが、今回は級数の形とにらめっこして、個々にたどり着く必要があります。(2)でa_nにb^nをかけていることもヒントになります。

これにより、級数の和が、式変形した漸化式の階差になり、望遠鏡型で和が出せます。これと、(2)の結果も合わせれば、b^1・a_1が極限になるということですね。

KATSUYAの解答時間は17:42です。これは誘導も比較的丁寧なので、2番3番に比べるとまだマシ。これでもマシな方というのがまた恐ろしい^^;これが一番差が付きそう。

 

☆第5問(1)・・・【複素数平面】等式を満たす軌跡(C、40分【26分】、Lv.3)

今年は第5問が2問構成で、最初は複素数平面です。設定は単純ですが、文字なので計算は繁雑です。後半の直線はあまり触れないと思われますので詰まった人がほとんどかと思われます。

まずは教科書レベルの式変形を行います。2乗して共役複素数を使って式変形していきます。|α|^2-4が|z|^2の係数なので、これがあるかいないかで円か直線かが決まりますね。円の場合は、(z-●)とその共役に無理やり因数分解しますが、係数が文字ばっかりなので結構メンドウ。なお、阪大理系にも似たような問題がありましたね。

直線になるときは結構難しかったのではないでしょうか。円にならない理由は、zの係数が等しくなるからです。その場合の軌跡は2点A,Bを結ぶ垂直二等分線としてあらわされますので、それをうまく利用します。

原点から垂直に下ろした垂線の足がzですが、その垂線がABと平行になります。この条件と、最初の条件式を連立して、zバーを消去します。複素数平面で直線同士を連立するときは、zバーの消去が原則です。

答えも汚く、検算できるような式ではないので、なかなか難しい問題でしたね。「テ」以外を答えて逃げるのが正解でしょう。

 

 

※KATSUYAの解答時間は16:33です。円だけなら確かにそんなに難しくはないけど、直線でここまで聞いてくるのキツイ^^;

 

☆第5問(2)・・・【整数】自然数となる条件(B、18分【12分】、Lv.2)

最後は整数問題で、ややこしそうに見えますが、結局1/a+1/b+1/cが自然数になるようなa,b,cを決めるということです。

あり得るとしたら1,2,3しかありませんね。そこまで決まれば、よくあるパターン問題になりますね。

3文字以上のときは大小関係を利用して範囲を絞りましょう。問題文に設定されていることも多いです。

 Principle Piece 

 方程式の整数解7:3文字タイプは大小評価をする

(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数 p.87 参照)

1文字絞れれば、あとは2文字のタイプなので、(x-●)(y-●)=◇のようにムリヤリ因数分解するタイプになりますね。

 Principle Piece 

 方程式の整数解1:ムリヤリ (x-●)(y-▲)=■ にする

(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数 p.45 参照)

最大になるのは、2,3,6のときです。よく見かける組ですね。

※KATSUYAの解答時間は3:23です。なんか、難易の差激しくないか^^;

4.対策~質の高い演習に加え、計算力の強化を~

標準問題を素早く解くには、入試の頻出パターンをなるべく早い段階で習得する必要があります。原則習得用の参考書のIAIIBは高2中に出来ればマスターし、入試基礎演習レベルまではある程度こなしたい。分野的には、「微積分」に加え、最近影を潜めていますが「確率と漸化式」も要注意。確率については、ここ最近はシグマ計算をさせて出すものも、KO理工ではよく見ます。

また、IIIの方も教科書やワークの学習は高2中に、高3の夏までにはチャートが一通り終了していないと、このレベルに対応できません。受験者層を考えると、高2までにIIIを終えている高校も多くあります。

学校の進度が遅いような場合は、自分でやりましょう。初習用の参考書を1つ用意し、その参考書をベースに単元ごとに習得し、1単元終わったらそこを原則習得用の問題集で学習します。学校で先に教科書が配られているなら、ガイドを買えばOK。

なお、拙著『Principle Piece』シリーズであれば、初習段階、原則習得段階はもちろん、入試基礎演習まで1冊で済ませられます^^

また、原則習得が終わったら、入試演習段階に入りましょう。本学部の数学で点数をしっかり取るには、最終段階としては仕上げレベルまで必要です。こちらを解く際にも、本番の穴埋めのようにスピードを上げて解きましょう。

計算量が多い問題もよく出ます。多少拙いやり方で計算量が増えても、ゴリ押しする能力も必要です。

KO医学部の問題も形式が似ていますし、出題内容も似ています(確率、2021年の円絡みなど)。理工より少し難しいですが、余裕があれば医学部の過去問も解いておきたいですね。

量をこなす演習:じっくり演習=7:3ぐらいですね。

以上です^^

 

 

■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)

数学A Chapter2~確率~ (第3問)

数学A Chapter3~整数~ (第5問(2))

 

数学B・C Chapter1~数列~ (第3問)

数学B・C Chapter3B~空間ベクトル~ (第2問)

数学B・C Chapter4~複素数平面~ (第5問(1))

数学III Chapter3~微分法1~ (第1問)

数学III Chapter5~積分法(数式編)~ (第4問)

※数IIはほぼ出てないんですねぇ。。。

 

すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!

数学I・A ~原則のみ~

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