慶應大学 理工学部 | 2018年大学入試数学

   

●2018年大学入試数学評価を書いていきます。今回は慶応大学(理工学部)です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2018年 大学入試数学の評価を書いていきます。

※入試シーズン中は、コメントの返信が大幅に遅れることがあります。ご了承ください。



2018年大学入試(私大)シリーズ。

慶応大学(理工学部)です。





問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。


また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。




慶応大学(理工学部)
(試験時間120分、5問、ハイブリッド型)

1.全体総評~後半がかなり厳しく全体として難化~

難易度より難化です。前半の3番までは手のつきそうなタイプですが、後半の2問は難易度・計算量ともにかなり厳しいです。全体としては難化でしょう。大問として見通しの立つところはなるべく多く、後半は出来るところまでつまみ食いで精一杯でしょう。


試験時間120分に対し、
標準回答時間は222分【158分】(←穴埋め考慮)

2017年:200分【135分】(←穴埋め考慮)

2016年:183分【134分】(穴埋め考慮)

2015年:186分【139分】(←穴埋め考慮)

2014年:156分、2013年:180分 

2.合格ライン

第1問は穴埋めの4つはパターンなので欲しい。(3)の記述はキー問題で差がつきそう。
第2問は6つの穴埋め。5つなら合格ライン。
第3問もレベルは高いが、パターン。本学受験者ならここは欲しい。
第4問、第5問は時間的にも厳しい。第4問、第5問ともに(1)までつまみ食いでもなんとか

60%弱でも数学はボーダーになりそうです。半分をなんとか取りたいですね。



3.各問の難易度

第1問(1)・・・【複素数と方程式】相反方程式(B、10分【6分】、Lv.2)

昨年と違って今年の最初は割とラク。ここら辺はまったく傾向が固定されませんね^^;

係数が対称になっているので相反方程式で、問題文通りx+1/x=yで置き換えます。式自体は、真ん中の次数であるx^2で割ると見えますね。

 

☆第1問(2)・・・【数と式など】対称式と実数条件(B、12分【8分】、Lv.2)

分野はあいまいですが、対称式と実数解条件から、分数不等式を解く条件となります。

和と積を設定している場合は、実数解条件がつきまといます。s^2ー4tの式は分数不等式なので、こちらの原則を当てはめましょう。数IIIの原則ですが、知っておいたほうがいいです。

Principle Piece III-2

 分数式の不等式 → (分母)^2を両辺にかける

(拙著シリーズ(白) 数学III 関数 p.8)

分母の式の正負が判定できないので、2乗をかければ不等号の向きを維持したまま解けます。4次不等式ですが、2次不等式の要領でグラフとx軸との上下関係で考えれば範囲は出せます。(そもそも交点も2個しかありません)

☆第1問(3)・・・【複素数と方程式】整式の割り算、ω絡み(B、20分、Lv.2)

今年はここに記述を1つ持ってきました。なお、医学部も昨年この位置に持ってきてます。

証明はx^3-1、x^3nー1などがあるので、ω絡みの問題だと気づきたいです。(x-1)(x^n-1)はどちらの式にも共通して現れますので、残りの整式どうしで考えます。

x^2+x+1で割り算をすることになりますので、ωの出番となります。

Principle Piece II-26

 x^2+x+1で割った余りはωと因数定理の出番

(拙著シリーズ(白) 数学II 複素数と方程式 p.32-33)

そしてω絡みの問題では、こちらの原則を使います。

Principle Piece II-25

 ω絡みの式では3で割った余りで場合分け

(拙著シリーズ(白) 数学II 複素数と方程式 p.32-33)

問題文にも3で割ったあまりの話がありますし、ここで逆にω利用のパターンに気づいて欲しいところですね。

☆第2問・・・【確率+数列】点の移動、Σ計算(B、35分【24分】、Lv.2)

2年連続で、漸化式が絡まない確率でしたが、2年連続で確率計算に「シグマを取る」パターンになりました。

設定自体はKO理工にしてはかなり簡単です。(2)は「または」なので余事象が数えやすく、(0、ー1)か(0、ー3)に到達する場合しかありません。

(3)は4回になりましたが、4回で到達する座標を見ていくと規則性が見えます。1つ飛びというイメージですね。これえがイメージできれば、(4)(は簡単なので取れる)もあわせて5つのボーダー達成です。

(6)が本問のメインです(試験ではまず飛ばすでしょうが)。k回目で始めて達成する確率をk=2、3、・・・n-1 でシグマをとります。その直後にy方向に動かないと(確率2/3)、x方向に動くとx=2には戻ってこれません。

式は等差×等比になりますので、こちらはパターンですね^^

Principle Piece B-5

 等差×等比は (1-公比)S を考える

(拙著シリーズ(白) 数学B 数列 p.19-20)

 

☆第3問・・・【積分法】定積分と漸化式(BC、35分【25分】、Lv.2)

定積分と漸化式で、題材としてはもっとも有名なタイプとなります。

x=sinθに置き換えることで、最初の積分は瞬殺でう、。次も置換積分をすることで有名な形が見えます。この形に限らず、定積分の漸化式ではこちらの原則をに従いましょう。

Principle Piece III-64

 定積分の漸化式は部分積分で攻める

(拙著シリーズ(白) 数学III 積分法 p.66-68)

(2)はan、an-1 の式を書いてみれば、分子・分母がどんどん約分出来ることが分かります。真ん中がごそっと消える和の計算みたいなものです。

(3)は証明ですが、これは経験がないと難しいでしょう。{an}が減少数列であることを示すことで、ハサミ打ちに持っていくことができます。このとき(1)も利用します。

(4)は(2)と(3)を使えば可能です。記述だと割と式変形を考えさせられますが、穴埋めならおおざっぱに「nが大きければanとan_1は等しい」とすればよく、「ス」にルートつけてから√n をかけた式で極限を取れば答えは出せます。

随分前だと思いますが、同じKO理工でほぼ同じネタが出ているので、理工受験者は対策済みと見たほうがいいでしょう。

☆第4問・・・【空間ベクトル】条件式を満たす図形、内積、交線、距離、体積など(C、50分【35分】、Lv.3)

今年も空間ベクトルです。2016年、2017年と連続で、同じテクニック(原則)で7割ほど取れる問題が出題されていましたが、今年は大革命を起こしてしまいました。全体的に原則が通用しづらくなっており、難易度がUPしています。差がつかなくて難易度を上げてきたのでしょうか^^;(2016年。2017年も簡単ではないんですけどね・・・)

まず、図形Sは円錐曲面となりますが、曲面が出てくると、空間ベクトルの典型的なテクニックは通用しにくくなりますので、個人的にはしょっぱなに嫌な予感がしました。

曲面が出てきた場合は図形をイメージしにくいので、とにかく条件式を立てて勝負するしかありません。例えば最初では、Bが図形S上にあるというのは、|OB(→) |=OA(→)・OB(→) が成り立つということです。これと|OB(→)|=6 だけで求められるはずなのです。

次は、交点です。直線AB上にあることについては、1-s、sのお決まりの係数が使えます。

Principle Piece B-35

 交点は1-s、sを2つ作って連立

(拙著シリーズ(白) 数学B ベクトル p.34-35)

本問は片方が曲面なので、2つ作ることはできず、再び|OC(→) |=OA(→)・OC(→) に当てはめます。これでsを決めることになります。

OD・OBについても、S上にある条件式|OD(→) |=OA(→)・OD(→)と、条件式OC(→)・OD(→)=0、|OC(→)|=|OD(→)|を用いるだけで出せるはずです。(1)からやりなれない計算が続きます。

出来た人は徐々に波に乗れそうですが、今度は計算量の多さに苦しめられます。QはS上、かつ平面ABD上なのでこれを式にしましょう。平面ABD上にあることは、係数の和=1で行けます。

(3)はさらに苦しめられます。(2)でだした条件式のもとで、|OQ(→)|の最大値を出します。QはS上なのでOA(→)・OQ(→)の最大値と同じです。こちらだと1次式なので、=k とおいて連立し、実数解条件に持ち込めます。ここで実数解条件の利用まで聞いてくるあたりが、計算量も多くKO理工らしい。s、tや係数も汚いです。

最後にトドメをさされます。体積なので、Eから平面OCDに垂線をおろします。これは原則通りです。

Principle Piece B-56

 平面への垂線ベクトル

 [1] 1-s-t,s,tの係数を作る

 [2] 平面を含む2ベクトルと垂直

(拙著シリーズ(白) 数学B ベクトル p.75)

ここまでの計算量の多さに加えて係数が汚い上に、この計算ですので、今回はここまでたどり着いた人は皆無に近いと思います。私もかなりHP(MPもかな)を奪われましたね^^; 30分ぐらいかかりました。

 

 

第5問・・・【図形と式+式と曲線+積分法】軌跡、極方程式、弧長、面積(D、60分【40分】、Lv.3)

第4問に続き、文字も入っていて計算の煩雑な図形問題です。また、条件が最初はわかりにくいですが、文章を全て読めばやるべきことは分かります。

(1)はアポロニウスの円なので、穴埋めなら裏ワザで行くほうがいいでしょう。内分点と外分点を直径とする円として求めましょう。

計算で行うなら、こちらの原則に従ってコツコツやるしかありません。

Principle Piece II-51

 Pの軌跡を求めるにはP(x、y)とおく

(拙著シリーズ(白) 数学II 図形と式 p.45)

次は円外からの接線なので、こちらも原則を用います。先に接点を置きましょう。

Principle Piece II-42

 円外の点からの接線 

[1] 接線を設定して、通る点を代入

[2] 接点が円上にある

(拙著シリーズ(白) 数学II 図形と式 p.34)

文字「v」が入った状態ですので計算は比較的煩雑です。

(2)は、円ではない部分をどうやって求めるかです。「マ」極方程式における弧長を求める式を入れるだけです。本学受験者なら答えだけさっと書けたと思いますが、知らなくても x=f(θ)cosθ、y=f(θ)sinθで媒介変数としての弧長公式に代入すればOK。 試験場ではここまででしょう。

「ミ」「ム」は考え方も難しく、かつ計算量もかなりあります。αやβを出すには、「任意のθ1で成立する」という考え方をする必要がありますので、θ1=θ0 などの特殊な値から必要条件で出していくことになります。方程式として見てしまうと、まったく手がつきません。

α、βが出たらv=√2を代入して面積ですが、極方程式の面積に扇形の一部が混じったりと、こちらも試験では最後までたどり着くのは至難の技。今年は後半はかなりキツイですね。


4.対策~質の高い演習に加え、計算力の強化を~

標準問題を素早く解くには、入試の頻出パターンをなるべく早い段階で習得する必要があります。青チャートIAIIBは高2までに出来ればマスターしてしまいたいところ。分野的には、「微積分」に加え、「確率と漸化式」が頻出。確率については、今年のようにシグマ計算をさせて出すものも、KO理工ではよく見ます。

また、IIIの方も高3の夏までには一通り全分野が終了していないと、このレベルに対応できません。受験者層を考えると、高2までにIIIを終えている高校も多くあります。学校の進度が遅いような場合は、自分でやりましょう。教科書ガイドと青チャートがあれば進められます。

また、青チャートのようなものが終わったら、早めに入試演習に入りましょう。本学部の数学で点数をしっかり取るには、最終段階としては仕上げレベルまで必要です。こちらを解く際にも、本番の穴埋めのようにスピードを上げて解きましょう。

計算量が多い問題もよく出ます。多少拙いやり方で計算量が増えても、ゴリ押しする能力も必要です。

量をこなす演習:じっくり演習=7:3ぐらいですね。

以上です^^

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■関連する拙著シリーズ■

★ 数学I 数と式 (第1問(2))

★ 数学II 複素数と方程式 (第1問(1)(3))

★ 数学A 確率 (第2問)

★ 数学B ベクトル (第4問)

★ 数学III 積分法 (第3問)

★ 数学III 極限 (第3問)

★ 数学III 式と曲線 (第5問)

★ 数学II 図形と式 (第5問)

★ 数学II 積分法の応用 (第5問)

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