東京工業大学 数学 講評 |2023年度大学入試数学

      2024/01/17

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●2023年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は東京工業大学です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2023年 大学入試数学の評価を書いていきます。

2023年大学入試(国公立)シリーズ。
東京工業大学です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。



また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。

※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。


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こちらも、原則習得のための参考書です。

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動画でも講評を行っています。内容は本エントリーとほぼ同じです。お好きな方をどうぞ^^

東京工業大学
(試験時間180分、5問、記述式)

1.全体総評~昨年よりは取りやすいものがある~

相変わらず全体にわたって重量級の東工大らしいセットですが、昨年に比べれば、確保できそうと思える問題があるため、わずかに易化と言っていいと思います。去年はどれも一筋縄ではいかなかったのですからね。

分野ですが、微積分が2つ、確率、整数、立体図形です。東大のような出題範囲ですね。今年は数IIIの割合がどこまで多くないですが、微積分は片方は発想的に、片方は計算的に厳しい。

また、小問に一切分かれていない問題が5題中3題あり、昔の東工大のような印象を受けました。


試験時間180分に対し、標準回答時間は205分。

2022年:230分

2020年:195分

2019年:225分

2018年:200分

2017年:200分

2016年:170分

2015年:195分

2014年:165分

2013年:175分

2012年:243分

2011年:330分(制限時間150分) 平均計算にはのぞきました。

2010年:130分(制限時間150分) 平均計算時には1.2倍しました。

2.合格ライン

第1問から発想が必要なため難しめ。上からの評価は簡単だが、下からの評価が思いつきにくく、厳しめ。個人的にはここが一番キツイ。
第2問は整数だが、これは取りたい。本セットならここが一番簡単かと。
第3問は確率と漸化式でキー問題。得意な人なら取れるだろうが、対策が薄いと手がつかないタイプ。
第4問は空間図形と体積。東工大受験者なら類題経験もあるはずだが、計算量はかなり多め。ある程度で切り上げて部分点狙いでいきたい。
第5問はキー問題。空間上における角の二等分「面」の処理経験があれば、ただメンドウな計算問題。経験がないと(1)から出来ない可能性もある。

第2問、第3問をまず取りたい。残りがどれもキツイなら、第4問の計算ゆっくりやって合わせるしかない。第1問と第5問は部分点狙いでも厳しそう(all or nothingに近い?)なので、55%ぐらいでしょうか。

3.各問の難易度

☆第1問【積分(数式)】定積分値の整数部分(CD,35分、Lv.3)

定積分値の整数部分を求めよという、非常にシンプルな問題です。シンプルがゆえに、何から手をつけていいかわからずに時間だけが過ぎていった人もいるかも。私も最初は途中で離脱しました。最初に波に乗れないとキツイので、早々に離脱です。

xの部分をなくすことで、上からの評価は簡単に行えます。2未満です。整数部分はおそらく1であろうと予想はつくので、あとはどのように1より大きいことを示すかです。

グラフが下に凸の単調減少関数であることを確認し(数式で証明必要)、よくやるような長方形階段をつくることを考えると、結構余りが出ます。値のうち大半がx=0付近の面積のはずなので、その部分をなるべく評価に使いたいと考えると、接線が思い浮かぶと思います。x=1における接線を考えると、無事に1を超えます。

 

特に下からの評価は思いつきにくく、個人的にはここが最も難しいと思います。もちろんこの後にもっと時間のかかる問題はありますが、時間がある程度あれば行ける問題だと思ったので。

 

※KATSUYAの解答時間は21:25です。下からの評価は思いつかずに離脱し、戻ってから接線を思いつきました。

 

☆第2問【整数】方程式の整数解(B、25分、Lv.2)

今年も2番は整数でした。今年の方が全然カンタンで、本セットの中でも一番マシな問題です。これは取りたい。

まず、整数解を求める問題では、因数分解できるならすることです。右辺も今回は出来ます。

 ULTIMATE Principle Piece 

 方程式の整数解全般:因数分解して約数候補

(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数 p.44 参照)

今回は思いっきりこれに当てはまります。右辺の86400は1日の秒数です(算数の授業では必ず覚えておくように言いますね)。これを知っていると素因数分解ちょっと早いかもです。

それでも約数の個数が多いので、候補を絞っていきます。候補を絞る代表的なパターンは次の3つです。

 Principle Piece 

 [1]正負 [2]大小 [3]奇偶

(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数 p.46 参照)

今回は(連続3整数の積)^2×(連続3整数の積)のような形が見えます。連続3整数の積になる数値って結構特別なので、ここからかなり絞ることが出来ます。

(x^3-x)^2の方はMAXでも(4・5・6)^2だと分かります。このあとはしばらく7が入ってしまうので不適で、次の8・9・10は2乗したら余裕で86400を超えます。

当てはまるものがこれで4つまで絞れたので、もう全調査ですね。残った数字の方も連続3整数の積としてあり得るかどうかを調査すれば終了となります。(x^3-x)^2の方は偶関数なので、プラスマイナスを忘れないようにしましょう。

本問は解説動画があります。


※KATSUYAの解答時間は17:06。東大京大阪大で出なかった整数が、東工大では出た。これは割とラク。

 

☆第3問【複素数平面+確率+数列】複素数の絶対値、偏角に関する確率と漸化式(C、35分、Lv.2)

2枚のカードに応じて複素数を作り、その積が特定の条件を満たす確率を求める問題です。後半は漸化式を用いるパターンで、そこまで単純な推移ではないので、出来が分かれるでしょう。

まずは6つの複素数を把握します。その絶対値や偏角が出れば、複素数平面の出番は終了です。

(1)は絶対値が5未満になる確率。絶対値は1か√3か2なので、1以外のものが出ると割とすぐに超えます。なので、絶対値1を引く回数をn回、n-1回と減らしながら場合分けしていくと良かったと思います。

(2)は2乗して実数となる条件なので、(1)と関係はなく、独立しています。偏角が0、90°、180°、270°になる確率ということで、こちらは漸化式を利用します。

確率と漸化式の基本原則は、n回目からn+1回目への遷移を見ることです。

今回は、n+1回目に偏角が0、90°、180°、270°になる確率を調べます。そうすると、それ以外に来ている場合も調べておかないといけません。求めたい部分以外の確率も設定する。これが2つ目の原則。

しかし、今回は全部であり得る偏角が30°おきなので全部で12か所もあり、すべて文字で置くのはさすがに現実的ではありません。ここが本問の難関ポイントだと思います。Qの位置が4か所まとまっていることから、その4か所から30°ずつ進んだところをすべて同じ文字で置いても、影響はないハズです。これを利用し、4か所ずつまとめて(90°)おきに同じ文字で設定すれば、文字は3つで済みますね。

これであとはn回目とn+1回目の関係式を作りましょう。Qに関する式だけ作れば解けます。その際に忘れてはいけないのが、確率はすべて足すと1になることですね。

本問は解説動画もあります。


※KATSUYAの解答時間は19:41です。これは得意な人からしたら普通よりちょっとむずいぐらいかと。ただ苦手だと(2)はきつそう。

 

☆第4問【積分法(体積)】かっぱ巻き(きゅうり抜き)の共通部分の体積(C、60分、Lv.2)

直円柱から角柱をくりぬいたような立体を2つ、軸が原点で交わるように垂直においたときの共通部分の体積です。かっぱ巻きのきゅうり抜きって感じです。(ごはんと海苔だけやないか^^;)

東工大受験者であれば類題経験はある程度あるでしょうから、断面を考えることは出来たでしょう。

円柱の式はy^2+z^2≦4、x^2+z^2≦4です。登場回数が多く、次数の高い文字で切るのが原則なので、z=一定で切ります。ここまでは出来たかと。

切っていくと、場合分けが全部で3つ要ることが分かりますので、かなりメンドウですが、z=一定出来れば境界線がすべて軸に平行になりますので、断面が長方形となり、まだ計算は楽な方です。

他の断面だとかなりキツく、円弧が入るため、中心角θを設定して置換積分を強いられる流れになります。こちらでも一応やってみましたが、かなり地獄です。

場合分けして断面まで出せれば、あとは積分するだけですが、積分計算もうまくやらないとまあまあメンドウです。t√4-t^2は第2置換積分(置換すると短くなるやつ)、√4-t^2は4分円の一部として出すと少しラク。

現実的には、体積の式まで書いたら一旦置いておくのもありかな、と思います。他を一通り見て、やれることがここしかなくなったら戻ってくる、という感じ。

※KATSUYAの解答時間は50:08です。一度最後まで出したのですが、自分が想定している体積よりかなり大きくなったため、「アヤシイ」となり、断面の一部の長さのミスを発見し、やり直しました。想定→中空が全くない場合の共通部分(←これはすぐ出せる)の半分以下ぐらいかな、という感じ。

 

☆第5問【空間ベクトル】4直線に接する球面(C、50分、Lv.3)

最後は空間ベクトルからで、4点が与えられていて、そこから4つ直線を考えます。その4つの直線全てに接するような球面の中心と半径を求める問題。

空間上における2直線から等距離にある点をどのようにとらえるかですが、未経験だと(1)も中途半端に終わり、(2)は下手すると1個しか出ないのでは。(全部で8個あります)

(1)は、ABとBCから等距離にある点ですが、平面だと角の2等分線で2本あります。これを空間でどうとらえるか。空間の場合はなす角のcosで捉えて、内積で捉えると分かりやすいです。PBAとPBCのなす角が、等しいかもしくは補角の関係にあります。これを利用し、内積の公式にあてはめれば2面ともすぐ出せたと思います。

なお、このやり方は平面でも使えます。ベクトルを学習済みなら、ぜひこの方法で角の二等分線を求めてみましょう。初見ではまず思いつかないと思いますので、これはちょっと厳しいかも。

同じ年に、慶應理工で全く同じ考え方出来る問題が出ています。(第2問最後です)

(2)は(1)さえ出来れば、ひたすらメンドウなだけです。同じようにBCとCD、CDとDAから等距離にある2面を求めます。どれも2面出ますので、2×2×2=8通りの連立3元方程式をひたすら解くだけとなります。うまく2つを選んである程度x,y,zの候補を絞って、残りに入れるのが効率的ですが、それでもかなりメンドウ。(そもそも、ここまでたどり着けるかどうかですが・・・)

距離はDAとの距離で計算するのがラクです。直線DA=x軸なので、y、zの座標だけで距離は決まります。

※KATSUYAの解答時間41:01。(1)は慶應理工にもあったな。二等分「面」は経験がないと2面とも式だ出せない人が多そう。(2)はひたすら頑張るだけ。途中でちょいちょい符号をミスり、やり直してだいたい40分ぐらい。方針がすんなりたってもかなり時間持ってかれた。

 

4.対策~論証力、段階を踏んで解決していく能力が必要~

例年の傾向だと、数IIIからは微積(2問)+複素数平面、整数、確率、空間ベクトルあたりから5問です。今年もほぼこんな感じでしたね。複素数平面は気持ち程度ですが^^;

東工大の問題は、普通なら小問になっているようなものを自分で見つけ出し、自分でそれを解くという作業を行わなければいけません。

なので、原則習得段階では、とにかく自分で問題と解法を両方思い出せるような状態になっておく必要があります。(数値とかまで完全に覚える必要はないです。初見問題の際に、ああ、似たような問題文のものがチャートのこの辺にあったなぁ、、、そんときってこうやって解いたよなぁ。ぐらいでOK)

その後の入試基礎演習入試標準演習の際にも、似たような問題と解法は常に見比べるようにしましょう。したがって、同じレベルの問題でも1冊だけ行うのではなく、複数行ったほうが解法の幅が広がると思います。

なお、拙著『Principle Piece』シリーズであれば、初習段階、原則習得段階はもちろん、入試基礎演習まで1冊で済ませられます^^

2018年の第5問のようなこと(ネタが同じ問題を11年越しに出題)が今後、起きないとは限りません。また、複素数平面は2005年以前のものでないと演習できないので、これらも10年分ぐらいチェックしておいてください。最新年から、20年分ぐらいはチェックしておきたいですね^^。

東工大の数学は単科長年のものがありますので、実力がUPしてきたらそちらで演習してもいいでしょう。

 

初期は、量をこなす演習:じっくり演習=8:2ぐらいがいいですが、少しずつじっくり演習にシフトすべきです。受験後期(秋以降)には、逆に試行錯誤を多めにし、4:6でもいいぐらいです。

以上です^^

■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)

数学A Chapter2~確率~ (第3問)

数学A Chapter3~整数~ (第2問)

数学B・C Chapter1~数列~ (第3問)←本書の確率と漸化式をやって入れば今年の問題のレベルでも大丈夫です。

数学B・C Chapter3B~空間ベクトル~ (第5問)

数学B・C Chapter4~複素数平面~ (第3問)

数学III Chapter5~積分法(数式編)~ (第1問)

数学III Chapter6~積分法(グラフ編)~ (第4問)

 

すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!

数学I・A ~原則のみ~

数学II~原則のみ~

数学B・C~原則のみ~

数学III~原則のみ~

※2023年末時点で販売中のものです。最新販売情報はこちらからどうぞ^^
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