名古屋大学 理系 講評 | 2021年大学入試数学

      2022/03/10

●2021年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は名古屋大学(理系)です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2021年 大学入試数学の評価を書いていきます。


2021年大学入試(国公立)シリーズ。
名古屋大学(理系)です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。



また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。

※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。





名古屋大学(理系)
(試験時間150分、4問、記述式)

1.全体総評~数IIIからの出題がなく穏やかに~

やや易化です。コロナ渦による配慮でしょうか、数IIIからの出題がありませんでしたので、名大特有の重量級のイメージがないセットの印象です。

それでも第1問の微積(数II)や第3問の確率は計算量がそれなりに多めで、名大らしさが残っていますが、普段に比べるとマシだったと思います。

 


試験時間150分に対し、標準回答時間は125分。

2020年:135分

2019年:145分

2018年:125分

2017年:160分

2016年:200分(4番を捨てれば80分で済むが)

2015年:145分

2014年:140分

2013年:135分

2012年:150分

2011年:125分

2010年:135分

2.合格ライン

第1問はキー問題。最後まできっちり合わせるには計算力が必要。

第2問は全体のセットから考えると落としたくない。

第3問の確率は地道に計算するしかなく、数値的にもかなりしんどい。(1)は最低合わせたい。

第4問は漸化式でキー問題。(1)(2)まではなんとか正解したい。

第1問、第2問が両方おさえられると安心。残りで少しづつかき集めたい。

60%ぐらいでしょうか。

3.各問の難易度

☆第1問 【微積分総合】2つの放物線に接する2接線、面積(B,30分、Lv.2)

数IIの微積分総合問題で、2つの放物線の共通接線が2本ある条件下での交点や、面積に関する問題。計算量的にもかなりがっつりです。数IIIでないだけマシな方です。

(1)(2)でセット。2放物線の共通接線は、片方では接線の方程式を作り、それがもう片方の放物線に接するとして判別式=0に持ち込みます。

(2)では、その判別式=0をtの2次方程式とみて、そのtが2つあることが条件となります。なので、もう一度その式の判別式の符号が正になるように定めましょう。

(3)の(1)で作った判別式=0の解が接点になります。解は汚いのでα、βとおいて解と係数の関係利用ですね。交点は接線の式をα、βで2つ作って連立しましょう。

(4)は面積。境界にx=aが入っていますが、aは(3)の交点のx座標です。なので、求積する領域は放物線と2接線で囲まれる部分の左半分です。接線絡みの積分なので、被積分関数は(x-α)^2→そのまま積分して(x-α)^3/3の変形を利用するとラクです。

 

中点のaはきれいですが、αは汚いので、a=α+β/2にいったん戻してから計算したほうがいいと思います。このあたりの解法次第で煩雑になってミスしやすいですね。β-αが出てきたら、解の公式で出して引き算しましょう。

※なお、放物線と2接線なので「12分の3乗」系です。半分なので(β-α)^3/24となることを途中で確認できると安心。

(5)は(4)まで出ればその最大値を出すだけ。a^2の2次関数とみれば平方完成で、気づかなくても微分すれば出ます。

 

※KATSUYAの解答時間は19分。数IIの微積分がっつり。でも典型的な感じ。

 

☆第2問 【指数・対数+方程式】対数の大小、正負の判定(B、20分、Lv.2)

4つの値(3つは対数表記)の大小について考察し、それを利用して正負の判定をする問題。(3)は解と係数の関係利用に気づけるかどうかで、発想タイプなので差が出そう。

(1)は素直に掛け算してください。底がそろっていない場合は底の変換が最優先です。

(2)は大小比較です。γが1未満で最小なのはいいでしょう。α、β、δの大小ですが、(本質的ではないですが)、数値があるときは数値が真ん中のときが多いです。対数同士で比べるのが難しいので、間に具体的な数値を挟むことで対数<数値<対数と出来るバターンです。特に数値が1.5のパターンの大小は問題集でもよく見かけますので、頭に入れておきましょう。

なので、真ん中を1.5として考えると、2^(1.5)=2√2=√8<√9=3なのでαの方が大きく、3^(1.5)=3√3=√27>√25=5なのでβの方が小さいですね。

(3)は明らかに3次方程式の解と係数の関係を使いそうだな、と思いたいところです。pは(符号は気になりますが)そのまま、qは通分をして(1)を使うとαβ+βγ+γαが出るのでドンピシャ、定数項の1も(1)によってαβγとなります。全部の符号が+なので、f(x)=(x+α)(x+β)(x+γ)と出来るってことですね。

解と係数の関係として使うなら、ーα、-β、-γを解に持つ3次方程式と言えばOK。

因数分解に気づければ勝ちでしょう。あとはx=-1/2、-1,-3/2を代入します。(2)で用いた大小関係や、さらに1/2とγ(他は1より大きいので比較不要)の比較もすると、γ<1/2<1<β<2/3<αの序列が出来ます。

先に述べておけばあとは各因数の符号を調べるだけで行けますね。

 

※KATSUYAの解答時間7分。これは思いつけば計算もしんどくないので名大としてはかなり易しめか。

第3問 【確率】マスの移動(C、40分、Lv.2)

ルールに従ってマス目を移動し、最終的にそのマスを通った確率を求める問題。ルールは例も書いてあるので、つかめればそこまでややこしいわけではないですが、計算はうまくやってもまあまあメンドウで、うまくやらないと相当メンドウです。(2)のp11あたりで挫折した人が多そうですが、p5までしっかり正答することが最低限だと思います。

(1)に限らず、どの場所でも、いきなりそのマス目に置く確率がそもそも1/12だけありますので、そこだけ注意ですね。なので、「いきなり2におく」「1に置く→2へ移動」の2パターンですね。

(2)からかなり計算はメンドウ。p5を求めますが、結局p3やp4も出しておく方が得だと気づけば少しラクになりますが、ただでさえ大変そうなので、余計なところを出そうと思えるかどうかは微妙なところかと。

例えば、p3を出したければ「最初から3」「1→3」「1→2→3」「2→3」の4通りです。しかし、p2を使うと気づけば、後半の2つはまとめることができます。これで順番にp4、p5と求めていくと計算が少しだけ見やすくなります(それでも十分嫌ですが・・・)

p11についても同様。結局p6、p7、p10まで出すことで計算は見やすいです。p7やp10の計算にもp6は使えたりするので、順番に出すメリットに気づいた人はこのやり方で進めれたでしょう。

なお、私はp,5やp11をまともに当たったので相当大変でした^^;

(3)はさらにp9とp12を出す問題です。まともに計算に当たっていると心が折れるレベルです。右下の4つについては確率を足せば1であること、p12は真下移動以外にプロセスがないので、p9は余事象で求めれることに気づかない場合は、諦めるのが正解でしょう。

特にまともにあたっていると、(2)でかなり心折れます(経験者は語る^^;)。

 

※KATSUYAの解答時間は34分です。まともに計算しましたが、途中を出すことに気づくかどうかは個人的には微妙かな、と感じました。なので、p5ぐらいまで出して後回しがいいかと。微積とは違う種類の計算で、これはこれで精神削られますね。

 

☆第4問 【漸化式+整数】ガウス記号を含む漸化式(C、35分、Lv.2)

今年も第4問に漸化式。昨年は確率絡み、今年は整数絡みです。飛び飛びの数値を扱う数Aと数Bの融合って感じですね。

(1)はガウスの部分がポイント。+1/2を足すことで整数部分が変わるかどうかなので、0.5が境目です。

(2)の表現ですが、anの小数部分が0.5以上ってことです。これはガウスの部分の情報に直結します。小数部分が0.5以上なので、0.5を足せば繰り上がって整数部分は変わります。なので、漸化式のガウス部分は[an]+1としてOKです。

これでan+1-anを計算しましょう。an-[an]という項が出ますが、ガウス関連ではx-1<[x]x≦xの利用によって、99%以上はうまくいきます。ガウスの問題を見たら、すぐにどこかにメモするぐらいの勢いでいいでしょう。

(3)は(2)の結果が否定されている感じなので、対偶をを取ることでanの小数部分が0.5未満と言えます。したがって、0.5を足しても繰り上がらないので、[an]のままです。これで前半の証明は終わり。

後半は難しいかもしれません。3[an]ー2anのanの部分を逆にガウスで評価していきます。(ガウス記号に関する漸化式なので、ガウス記号を外すのはマズイです)。

出た不等式は、先ほどのx-1<[x]x≦xの不等式を、xを中心に書き直した[x]≦x≦[x]+1の形です。これで[an+1]=[an]-1となり、ガウスなら等差数列だと言えます。

(4)は(3)まで行ければ行けると思います。(3)の条件が満たされる場合は、ガウス部分は等差数列で初項=[a]=0なので、一般項-n+1です。これを代入するとan+1=-2an-3n+3です。nの多項式型なので、an-αn-βの形を無理やり作って等比型に帰着するんでしたね。

長い証明を経て、ようやく普段やったことのある漸化式にありつけるという流れでした。最後までありつくのは結構しんどいかもですね。


※KATSUYAの解答時間は27分です。(3)の評価の仕方で結構まよったが、ガウスを残さないといけないと気づいたところでうまく最後までいきました。

 

4.対策

今年は数IIIではなく数IIの微積でしたが、頻出分野は数IIIの微積、確率(漸化式と絡むことが多い)、整数の論証系です。(III、A、Bといった印象)

どれも計算量もあり、かつ発想もある程度必要なものが多いです。出題分野も似ている東大レベルで練習を積んでおいてもいいぐらいでしょう。

BレベルとCレベルが5分5分ぐらいで出題されます。Bレベルを落とさないことを最優先に、さらに上のせしていきましょう。Cレベル以上を意識しすぎると、逆効果。Cレベルは、3割とれればいい、ぐらいの気持ちでいるほうがいいでしょう。それよりも、D以上を嗅ぎ分ける能力が本学では必要です。2019年の第4問のようなものを、避けられることも重要。過去問で嗅ぎ分けの練習をしましょう。

最終段階では、仕上げ段階まで行っておきたいですが、ここまで行ったとしても点数につながらない問題も出るかもしれません。本学の場合、他の科目を犠牲にしてまで数学に時間を取られることのないようにしましょう。合計で合格すればいいのです。

単科長年タイプの過去問もありますので、ある程度のレベルに達したと感じたら、これに絞って研究するのもいいかもしれません。

※名大理系数学は大竹先生が書いておられます。私も高校生のときにご指導いただいた先生で、個人的には非常にオススメです。


量をこなす演習:じっくり演習=8:2(入試演習初期)→6:4(仕上げ期)ぐらいでシフトしていくといいでしょう。

以上です^^

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