慶應大学 医学部 講評| 2022年大学入試数学

      2022/12/18

●2022年度大学入試数学評価を書いていきます。今回慶応大学(医学部)です。

2022年大学入試(私大)シリーズ。
慶応大学(医学部)です。



問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。

また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。



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慶応大学(医学部)
(試験時間100分、4問、ハイブリッド型)

1.全体総評~後半を中心に計算量が多いが前半が穏やか~

難易度は昨年よりやや易化という感じです。後半は相変わらず計算量が多めですが、前半の小問など、昨年に比べると手が付けやすいものもありましたので、点数的には今年の方が伸びそうな気がします。特に小問は昨年に比べると時間がかからずに済む問題が多めです。

なお、今年は論証問題が出題されず、すべて穴埋めの問題でした。



試験時間100分に対し、
標準回答時間は169分【111分】(←穴埋め考慮)ここ10年ぐらいを見ると、これでも穏やかな方です^^;

2021年は203分【123分】

2020年:177分【113分】

2019年:164分【106分】

2018年:197分【124分】

2017年:185分【128分】

2016年:200分【125分】 

2015年:213分【115分】

2014年:165分

※本エントリーの【 】内は、慶応医学部受験者層のレベルを考慮していますので、その他の大学に比べて短めです。それでも、100分をオーバーしていますけど^^;

2.合格ライン(科目全体では60%)

第1問は9個あります。今年は易しめでしたので、後半の難易度を考えると落とせない。

第2問の確率も状況の把握はメンドウだがいつもに比べるとラク。穴埋めを活かしてどんどん計算していきたいところ。

第3問はキー問題。「あい」はいいでしょうが、「うえおか」を間違えると「き」は厳しい。「け」もかなりメンドウ。

第4問もキー問題。こちらは微積分でやることは分かるが2文字が絡むのでとにかく計算がメンドウ。「あいう」までは欲しい。

今年は前半で出来る限り稼ぎ(8~9割)、後半で合計4割ぐらい取るという戦略がいいでしょう。平均して60%~65%ぐらいですね。

 

3.各問の難易度

第1問(1) 【数と式】絶対値のついた方程式(AB,6分【3分】、Lv.2)

絶対値が2重に入った方程式ですが、KO医学部としてはかなり簡単な方だと思います。

|x|ー1の式全体にもう一回絶対値がついています。全体に絶対値がついている場合は、グラフのx軸より下を折り返しましょう。グラフで視覚化すれば交点が4つあることも分かるので、各直線の式=x+2を4回解くだけですね。

 

 

※KATSUYAの解答時間は1:24です。

 

第1問(2) 【複素数と方程式】5次式の因数分解(AB,6分【3分】、Lv.1)

5次式の因数分解ですが、3つの積に因数分解できると書いてあるので、こちらもKO医としてはかなり易しめ。

3つに因数分解できると分かっているなら、少なくとも1つは1次式です。さらに整数係数、最高次も係数1の多項式とかいてあります。これが1次式なら、整数解があることになりますので、x=ー1がほぼ確定します。

因数定理の代入候補は、定数項の約数/最高次の約数です。すると1かー1しかありませんので、+の項しかないならx=ー1ということになりますね。

x+1で割れると分かれば、組み立て除法で商を出しましょう。4次、2次など偶数項しかありませんので、ムリヤリ2乗の差を作って因数分解するパターンですね。

他にも、複素数平面の知識を使って、1の6乗根のうち1以外の5つの解を持つような式なので、ー1は単独で、あとは共役複素数同士で2次方程式を2つ作るという方法もあります。

 

※KATSUYAの解答時間は0:32です。複素数平面の知識でやりました。

 

第1問(3) 【対数】対数不等式(B,10分【5分】、Lv.1)

意図的にややこしく表現してありますが、ただの対数不等式の問題です。

最初は真数条件です。2/3と√(2/3)の大小は、さすがに本学受験者であればひっかからないでしょう。有理化しても明らかに後者の方が大きいです。

後半は対数不等式です。対数方程式・不等式の問題では、まずは底をそろえます。f(x)の底を9に合わせるのがいいでしょう。右辺がゼロなので、片方を移項すれば、あとは真数の比較で済みます。3次不等式になりますが、こちらも因数定理で因数分解しましょう。

※KATSUYAの解答時間は3:46です。不等号の向き勘違いして、答案に合わないんやけど^^;ってなって1分ほどロス。

 

第1問(4) 【数列+関数】漸化式、合成関数(AB,12分【6分】、Lv.1)

簡単な合成関数に関する関係式から漸化式を導き、一般項を出す問題です。ただの計算問題で、今年の小問集合は全部穏やかでしたね。

n+1とnの合成関数の関係式から、(a_n+1)x+(b_n+1)=a_nf_1(x)+b_1ということですので、右辺を整理して●x+■のような形にしましょう。

anは等比型なので等比数列の一般項で瞬殺bnは階差型なので階差数列から元の数列を求める公式でこちらも一発ですね。

 

※KATSUYAの解答時間は2:49です。今年の小問は落とせないかな。

 

第2問 【確率】玉の入れ替え(B、35分【24分】、Lv.2)

昨年は確率がなく、データ分析でしたが、今年は確率が戻ってきました。前半は文字が多く、後半は状況わけや設定の変更が多いので混乱しそうですが、やることは例年の確率に比べて穏やかなので、これも完答に近い状態で抜けたいところです。

(1)の最初の極限がこの大問で一番メンドウだと思います。確率の式はすぐに書けると思いますが、極限をどうやってとるか。組み合わせの式を階乗の式に書き換えて、分子と分母が何の階乗になるかを求めます。

すると、分母も分子もnの次数が同じであることが分かりますので、nの最高次で分子分母を割ると極限が出せます。式がごついので何をすればいいかわかりにくいですが、最も基本的な手法で答えれます。kCiは、kとiが固定なのでそのまま置いておけばいいでしょう。

「い」の方が全然カンタンです。k=3,i=1を代入してコツコツ計算しましょう。ここは階乗の式は約分して残さずに表せますので、残さないように。

※KO医学部の特徴ですが、穴埋めに書いていい式の許容範囲が大きいので、結果に確信を持ってないと不安になりますね^^;

(2)以降は、玉を入れ替えます。最初に、Aには赤1個、白n-1個、Bには赤2個、白n-2個のように整理しておくとやりやすいでしょう。

操作を1回行えば、Aの赤玉は1個増えるか、1個へるか、そのままです。各場合に対して、AからとBからで何色を取り出せばいいかを考えれば、確率は出ます。その後、赤を取り出す確率は●/nで出せます。数値はもっと簡単なものですが、教科書にも載っているタイプの考え方です。

次の条件付き確率も、分母が「とき」の手前、分子が「とき」の前後ですから、分母は「う」の確率、分子も「う」を出す過程で計算している項を取り出します。ベイズの確率のタイプとプロセスは似ており、分母を出す過程で分子も出せているパターンですね。

(3)では、1度で赤玉の個数は最大1しか変化しないことを利用します。すると、1→1→2→3、1→2→2→3、1→2→3→3です。答案にするとかなりメンドウですが、式を書くだけなら、各操作後のAとBの袋の組成と、そこから何を取り出すかを考えればできます。

ダーっと式を書いて、あとは慎重に計算しましょう。2(n-1)(n-2)でくくれることに気づけば結構ラクです。

(4)は(3)より簡単です。Aに赤が全部入っているなら、Aからは白だけを、Bからは赤2個と白1個を取り出すだけですので、状況の場合分けも不要です。

※KATSUYAの解答時間は20:56です。最初の「あ」が一番考えました。二項係絡みならlogとって区分求積かな、などなど。ここでほとんど持っていかれてます。試験会場なら「い」以降に先に手をつけるべきで、時間のかけ方としては不適切でしたね。

 

☆第3問 【複素数平面+2次曲線】回転先の座標、内トロコイド、極方程式(C、50分【35分】、Lv.3)

数IIIの微積分や極限以外の分野の融合問題。回転の考え方や、サイクロイド系のパラメータ表示、極方程式も聞いてきます。さらに文字のまま計算させられるので、非常に計算が繁雑です。

(1)は原点以外を中心とした回転です。回転には複素数平面がうってつけなので、複素数平面を利用しましょう。平行移動して中心を原点に→回転→また平行移動の手順で出しましょう。教科書にも公式が載っていますが、文字も多いので、意味を考えれば暗記する必要はありません。

(2)は内サイクロイドなのですが、それを回転だけで表現するとどうなるか、という意味です。若干問題文不足な気がしますが、接点の場所まで含めて再現するにはどんな操作が必要かいいかということなのでしょう。(図形の再現だけなら、なら、原点を中心にβ回転させれば済みます)。

回転させる前、その接点がどこにあったかですが、円の半径が半分なので、角度は2βのところです。これを(a,0)に来るように持ってきてから原点を中心にβ回転させればOKですね。

(3)は内トロコイドの問題。(2)の誘導に乗れば簡単にQのパラメータ表示ができまます(誘導に乗らなくても出来てほしいところですが)。軌跡は楕円となります。なお、回る円の半径が半分の場合、内トロコイドは楕円になるそうです。(私も知りませんでした)

(4)は、外側の円の方を動かすという設定で見慣れないです。いろいろなサイクロイド(アステロイドなど)の媒介変数表示を、きちんと自分で手を動かして求めているかどうかが勝負の分かれ目になったでしょう。慣れていないとこれはキツイと思います。

サイクロイド系のパラメーター問題は、とにかくベクトルで辿ることです。その際、どこでもいいので適当にθを設定します。それから、まず円の中心に向かい、そこから(acos●、asin●)だけ進めばOKなはずです。あとは、図形を丁寧に書いて●を求めることに注力してください。

今回は、円Kの中心→円Cの中心→円Cの円周上とたどると分かりやすかったと思います。あとは、ORのなす角と設定したθの関係式を出せばOKです。

(4)は相当演習量を積んでいないと厳しいと思います。

 

※KATSUYAの感想:解答時間24:35。文字計算が相変わらず多い上に、後半は考え方もハイレベル。(4)は自分も演習量不足が露呈した気がしますね。かなり何回も書き直しました。

 

第4問 【微積分総合】放物線上の点との距離の関数の極値条件など、曲線の長さ(C、50分【35分】、Lv.3)

最後は数IIIの微積分総合です。第3問と第4問で、数IIIはほぼ全部出たことになります。こちらも2文字が含まれ、計算は繁雑です。

関数g(x)自体はいたって単純で、放物線y=x^2上の点と定点との距離の2乗ですが、この定点が(a,b)と2文字なので、一気にメンドウになります。

最後は数IIIの微積分総合です。第3問と第4問で、数IIIはほぼ全部出たことになります。こちらも2文字が含まれ、計算は繁雑です。

関数g(x)自体はいたって単純で、放物線y=x^2上の点と定点との距離の2乗ですが、この定点が(a,b)と2文字なので、一気にメンドウになります。

(あ)は常に下に凸ということなので2回微分して常に正ならOK。(いう)もそのままの流れで出せます。

(え)も、3次関数g’(x)の解の個数なので、パターンはパターンですが、文字が2文字あるせいで計算はかなりメンドウです。それでも、いつも通り導関数の判別式と、極値の積の符号を利用します。

まず、「あ」の条件とも一致しますが、g''(x)≧0だとg’(x)は単調増加です。そうでない場合は極値を持ち、極値の積が正であれば(極値の符号が一致すれば)解は1個となります。また、ちょうど0のときも重解で2個になりますが、今回はこれも入ります。

極値がまた複雑な式ですが、2b-1=tとでも置き換えるだけでもだいぶ見やすいと思います。これをbについて解けばOK。F(a)は数式から明らかに1/2を超えているので、1/2以下と合わせてb≦F(a)ということですね。

b=F(a)と等号が成り立つときは、1つが重解で1つが解です。重解の前後で増減は変わりませんので、もう一つの解のときに最小になるということですね。a,bに数値が入っていればそこまでしんどくないのですが、本問はかなりメンドウです。

最後は曲線の長さです。y=f(x)で与えられているので、∫√1+f'(x)^2dxの積分をしたくなりますが、これだとうまくいきません。y=・・・の式を、x=h(y)になおし、∫√1+h'(y)^2dyで計算すればうまくいきます。

この公式で出せる曲線の式は限られており、3/2乗のような式が入っているときは代表例で、教科書の例題もだいたいこれです。このようなことを普段から意識しているか(あるいは指導教官に教えてもらえているか)で、「あ、x=・・・にすればいいのか」と思えるかどうかが決まりますね。

 

※KATSUYAの解答時間は21:55です。ただの極値条件のはずやけど、文字がはいるだけでこんなにメンドウになる。最後の曲線はすぐにx=・・・にできました。

 

4.対策~癖と計算力の多さに慣れる~

傾向、形式ともに癖の強いセットです。今年は出ませんでしたが、確率と漸化式は名物で、微積と極限もボリュームの大きいものが出ます。計算力、演習ともに必要です。
高校2年生の段階でも、典型パターンの7割が習得済みであることが望ましいです。センターは余裕で9割とれるようなレベルにいないと厳しいでしょう。本学受験生の高2で、数IIIにまだ手がついていない人は、いますぐ独習してください。そんなペースでは本学部の試験には耐えれません。教科書ガイドと青チャがあれば進められます。
高3に入ったら、もう入試問題演習に入りたいところです。夏以降はさらにレベル高めの入試演習、を行い、仕上げ段階まで行ってから過去問、といった感じでしょう。理工学部もレベルや出題内容(確率と漸化式はかなり似ています)、形式が似ているので、使えます。

量をこなす演習:じっくり演習=6:4ぐらいでしょう。3年生になったらできる限りじっくり演習したいです。2時間でも考え込んでしまってもOKです。ただし、あらゆる手段(計算がかかると分かっていても、それで押し通してみる!)で手を動かしてみることです。答えにたどり着かなくても、計算力は着実にUPしていきます。普段の練習から「これ計算するん?無理やろ~」と思ってあきらめるのはNGです。

以上です^^

 

■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)

数学I Chapter1~数と式~ (第1問(1))

数学A Chapter2~確率~ (第2問)

数学I・A ~原則のみ~

数学II Chapter2~複素数と方程式~ (第1問(2))

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