大阪大学 理系 数学 講評| 2024年大学入試数学
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●2024年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は大阪大学(理系)です。
いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2024年 大学入試数学の評価を書いていきます。
2024年大学入試(国公立)シリーズ。
大阪大学(理系)です。
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。
したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。
★お知らせ★
Principle Pieceシリーズの販売を再開しました^^ 原則習得のための参考書です。
YouTube開設しました。 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を紹介していこうと思います。
Twitter始めました こちらもよろしくお願いいたします^^
※YouTubeでも紹介しています。内容はだいたい同じですので、お好きな方でどうぞ^^
大阪大学(理系)
(試験時間150分、5問、記述式)
1.全体総評~さらにやや難化して厳しいセットに~
穏やか路線を終了させた去年からさらに逃げ道が少なくなり、難化です。どの問題も題材のレベルが高めですんなりとはいかず、唯一方針もたちやすい4番ががっつり数Ⅲの積分というセットです。
全体的には数Ⅲの割合が多く(1番、2番、4番)、残りは数Bのベクトルと数Aの整数。難関大の頻出構成です。
試験時間150分に対し、標準回答時間は160分。(計算量はそんなに多くはない)
2023年:160分
2022年:135分
2021年:130分
2020年:111分
2019年:165分
2018年:165分
2017年:150分
2016年:160分
2015年:165分
2014年:140分
2013年:145分
2012年:135分
2011年:170分
2010年:135分
2.合格ライン
第1問からキー問題。経験がないと(1)止まりになると思われる。経験がある人にとっては得点源でサービス問題に。
第2問は最難問で手つかずの人が多いと思われる。実は昨年も阪大理系2番で使った原則を使うが、気づきにくい。
第3問もかなり抽象的なのでキツイかも。もし出来たらかなり有利になりそう。
第4問が題材的には一番マシで、方針に迷わない。計算はメンドウだが、これを落とすわけにはいかない。
第5問は(1)は取れる。(2)がキー問題か。も(1)を使ってある程度答案はかけるはず。部分点狙いで7割ぐらいは確保したい。
後半の4番、5番の7割ぐらいをとり、1番の(1)はおさえる。ここで1番が完答出来れば安心。そうなる第1問が合否を分けそう。今年は半分強ぐらいでもそこまで悲観しなくていいのではないかと。
3.各問の難易度
☆第1問【極限】方程式の解と極限(BC,25分、Lv.2)
方程式の解の極限に関する問題です。レベル高めではありますが、典型的な題材なので、出来る人からするともっとも簡単に見えますが、演習経験がほとんどないと(1)どまりの可能性もあります。
(1)は、明らかに具体的に解が求まるとは思えません。解を持つことさえ言えればいいわけですから、中間値の定理の合わせ技ですね。
(詳細は拙著シリーズ 数学III 極限 p.55 参照)
今回はただ1つ持つということなので、単調性との合わせ技です。指数関数の部分がメインで効いてくるのは分かるでしょう。
(2)から意外とキツイかも。まず(3)の聞かれ方からして、答えがゼロだろうと思って欲しいです。もしゼロじゃなかったら、聞く意味ほとんどないですよね^^;
正であることは確定ですから、ものすごくxが小さいところですでにf(x)が負だと言えればよさそうです。なので、具体的に例えばx=●/nのような数値を入れればいいわけですね。結構よく使う手法です。初見ならぜひ覚えておきましょう。同じ2024年では、同志社理工(2月10日)の4番でも出ています。
※なお、eについての評価を使っていいのかどうか微妙なところですが、円周率も3~4ぐらいは断りなく使うこともありますので、2~3ぐらいなら使っていいとは思います。(使わなくても出来ます)
(3)はna_nですが、指数部分にガッツリ入ってます。なのでe^(na_n)=・・・に直せば、(2)から極限値も分かり、logをとればOKです。
※KATSUYAの解答時間は9:56です。まあ、経験があればどうってことはないハズ。(2)は適当な小さい値を代入するってところが経験がないと難しいかも。
☆第2問【複素数平面】条件下における複素数の存在領域など(CD、45分、Lv.3)
複素数平面からの出題ですが、本セット最難問です。(1)が手がつかずに白紙に近い人が多かったことでしょう
与えられている不等式条件は|α+β-2|、|iα+βー2|に関する条件ですが、このカタマリなら簡単に軌跡は分かるわけです。従って、これを主役にすることが出来たかどうか。いわゆる主役交代です。ベクトルの原則ですが、複素数平面もベクトルの考え方と似ていますので、当然使えます。
(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 平面ベクトル p.68 参照)
これを聞いて「え?」と思った方もいるかもしれません。
そうです。何と阪大は去年もこの原則を使う問題を出しています。そしてなんと私は、その問題を2023年の良問第1位にしたんです。
2023年の良問BEST1と同じ原則を使うものを、また同じ阪大が出したということです。阪大もきっと良問だと思ったのではないでしょうか。そこで今年も出したと。
ただし、今年は誘導がまったくなく、イチから自分で気づかないとダメなパターンですので、おそらく去年ほどは差がつかないでしょう。多分みんな出来てないです^^;
本題に戻ります。絶対値の中身をいったん別の2文字z1、z2でおき、αとβをその2文字で表します。そうすれば軌跡の様子がつかみやすい複素数でf(1+i)も表せます。
z1、z2は別々に、そして自由に円の周と内部を動くので、1文字固定ですね。
(詳細は拙著シリーズ 数学I 2次関数 p.100 参照)
(2)はαとβを特定する問題ですが、方程式が1つしかないのに文字が2つ特定されるのは特殊な状況だとまずは気づきたいところ。不等式条件はたくさんありますが、不等式では文字へ減らせません。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 式と証明 p.34 参照)
特殊な場合の代表例は、不等式で等号が成立するときになります。今回でいえば、(1)の軌跡のふち、円周に当たる場合です。同じ向きに限界まで長さを取らないと、ふちに充てることは出来ません。不等式条件で両方等号が成り立ち、さらに同じ向きで伸ばすので、それは三角不等式の等号成立条件と言えます。
0という値も、軌跡のふちですので、z1とz2が特定されるパターンです。あとは元の主役αとβに直すだけですね。
※KATSUYAの解答時間は29:21です。実は最初は方針が立たず、飛ばして最後に解きました。ふと条件式を見て主役交代が思い浮かびましたが、同時に「え?また阪大このパターンだしたんか」と思いながら解いてました^^; 良問第1位にしたのは正しかった!
☆第3問【空間(ベクトル)】ねじれ2直線両方に直交する直線の存在(C、30分、Lv.2)
空間内にあるねじれ2直線について、両方に直交する直線がただ1つ存在することを示す問題。イメージは何となく湧くと思うし、当たり前っちゃ当たり前のような気もしますが、そういうものほど証明するのが難しい。そして数値が全く与えられていないため、かなりの受験生が苦戦したと思います。
何を使って解くか、方針も迷ってしまいそうですが、
普段通り、2直線上の点P,Qを、1文字ずつ使ってベクトル方程式の要領で表して、PQベクトルが2直線の両方に垂直するという式を作るだけです。そうすれば、「ただ連立方程式がただ1つの解を持つ条件」に帰着されます。
連立方程式を直線の方程式だと思えば、その2直線が平行でない条件に帰着されます。そのときに、元の2直線l、mがねじれの位置にあることががっつり効いてきます。
自分でほぼイチから設定しないといけない分、かなり厳しかったかもしれません。京大とか東工大に出そうな問題って感じでしたね。
※KATSUYAの解答時間19:19。「結局ベクトル方程式で設定するのがいいのかなぁ」ってなるまでに、私もいろいろ考えました。数Aの図形の性質を使ってうまく説明できないかな、なと。文字ばっかりで物理の計算している感じ。
☆第4問【積分法(グラフ編)】y軸回転体の体積(トーラス型)(B、25分、Lv.2)
数Ⅲの積分法の応用からで、中心が軸からずれた円を回転させる問題です。がっつり数Ⅲですが、本問が一番方針が立ちやすくマシな問題でしょう。これがマシに見えるセットってなるとやっぱり今年の阪大はキツイですね。
(1)は円の左側だけをx=・・・にして回転体の体積公式にあてはめるだけ。全然余裕ですね。
(2)も同じ。左側と右側でx=・・・の式を別々に表すだけですね。トーラス型はまさにそのひな型です。
(詳細は拙著シリーズ 数学III 積分法(グラフ編) p.25 参照 拙著にある例題の方が難しいです^^;)
aの値は結構キタナイですが、V1もV2も積分計算はそこまで複雑ではないので、コツコツ計算してなんとしても合わせたいですね。
※KATSUYAの解答時間は14:44です。まあこれは解けるか。aキタナイな^^;答えのおおよその値を確認して図で確認してみる。まあ、2倍ぐらいっぽいしあってるやろ。(→コンピュータで確認。合ってました)
第5問【場合の数+整数】互いに素なものの個数(B、25分、Lv.2)
最後は数Aの問題です。題材はよくみかける、いわゆるオイラー関数と呼ばれるものが題材の問題です。
(1)はまさにオイラー関数そのものです。pでもqでもrでも割り切れない数ですから、3つの集合のベン図の外を出すだけです。
(2)も(1)を利用するだけですし、方針は立つとは思うのですが、うまく議論しないと結構答案量が膨れます。なので、(他で振るわなかった場合)うまく議論して解き切るか、時間を使ってでもがんばって書き切るかががポイントになるかもです。
具体的には、1つの素因数、2つの素因数、3つの素因数から成る場合について調べます。(4つ以上だとダメなのはすぐ分かる)
1つの場合はすぐに素因数が2でないとダメだと分かります。2つの場合も、うまく議論すれば2,3のみじゃないとダメだと分かりますが、そこまで気づかなくても、片方が2であることにさえ気づけば、サイアクしらみつぶしです。(結構多いですけど^^;)
3つの場合はそもそもそんなに候補がないので、こちらもサイアク2・3・5のとき、2・3・7のとき、、、などとしらみつぶしに探せばなんとかなります。
ウマく議論するには例えば2個の場合だとp-1、q-1の約数候補が1、p、q、pqのどれかであることと、大小関係等からサクッと決められます。3つの場合もほぼ同じ。
※KATSUYAの解答時間19:23です。よくある題材。(2)は割合的に何分の1みたいにならないとアカンってことから、まあ2と3以外入ったらダメだろうと予想がついたので、上記の通り素因数の数で分けて議論して終了。
4.対策
阪大は良問ぞろいです。融合型が多く、分野はまんべんなく出ます。中でも確率、整数、微積は頻出(今年は確率出ず)なので、重点演習が必要。昔の傾向からすると、複素数平面は東大や京大に比べると頻度は少ないかもしれませんが、出てないわけではないので油断はできません。(2019年、2020年、2022年、そして今年は出ました。)
阪大は微積で空間図形のことが多いので、空間図形の演習も必要です。図形的な感覚よりも、数式処理で考察できることを重視しましょう。感覚だけでは、積分計算に持ち込めませんので。
原則の習得は早めに終わらせ、早い段階で入試演習へ移行したいところです。阪大数学は下記のように単科長年タイプの本もありますので、傾向つかむ上でも早めに購入しておきましょう。本格的にやるのは秋以降でもOK。先に入試標準レベルまでは最低限行い、できれば仕上げ段階まで行いたいところです。
量をこなす演習:じっくり演習=7:3ぐらいでしょう。