九州大学 理系数学 講評| 2023年度大学入試数学

      2024/01/18

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●2023年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は九州大学(理系)です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2023年 大学入試数学の評価を書いていきます。

2023年大学入試(国公立)シリーズ。
九州大学(理系)です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。





また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。

※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。

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YouTube開設しました。 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を紹介していこうと思います。

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九州大学(理系)
(試験時間150分、5問、記述式)

1.全体総評~過去最高難易度を維持~

2022年は講評を初めて以来最高の難易度でしたが、それに引けを取らないセットで、この難易度を維持する流れでしょうか。

マシなのは断トツで第1問ぐらいで、あとはどれも完答が難しい問題です。とはいっても、どれも小問に分かれているので、0点で終わることもないでしょうから、そこまで点数を取りにくいセットではありません。

内容的には数IIIの割合がさらに増えて4題、残りが2021年、2022年と同じベクトルと整数で、今年は1題でまとめて聞いてきました。ここ数年、範囲はかなり似ています。



試験時間150分に対し、標準回答時間は175分。

2022年:180分

2021年:135分

2020年:130分

2019年:140分

2018年:155分

2017年:145分

2016年:130分

2015年:140分

2014年:150分

2013年:135分

2012年:160分

2011年:130分

2010年:125分

2.合格ライン

第1問は複素数平面。断トツでマシな問題。唯一完答にたどり着きやすいもので、このセットでは完答必須。

第2問は最後の(4)の論証は難しいが、(3)までなら比較的わかりやすいので、(3)までは取りたい。

第3問も文字計算は多いが、(2)までは成分計算コツコツやるだけ。(3)も、rとsを文字で表すところまでは出来るはずが、そこから先は発想が必要で難しい。

第4問は昨年同様に数IIIの共テスタイルのような感じ。しかも去年よりも難しい。それでも、途中まではいける。(3)までは誘導も与えられて、計算もそこまできつくはない。(4)も(B)の証明はラク。最後のア、イも埋めるだけなら予想がつく。(D)はキツイ。

第5問はキー問題。受験生が一番とっつきやすいのが第1問とここ。(2)の計算が合わせられれば有利。

キー問題はほぼすべてになるが、捨てたところ以外でどれだけ正答率を上げられるか。最後の小問の配点次第だが、50%~55%ぐらいか。

 

3.各問の難易度

☆第1問【複素数平面】相反方程式、複素数平面上の三角形の形状(BC,20分、Lv.2)

今年の第1問は複素数平面からで、三角形の形状を答えるパターンです。よくある問題ですが、次数は大きめです。

(1)は相反方程式ですので、真ん中の次数で割ってx、1/xの対称式にしましょう。

 Principle Piece 

 相反方程式 → 真ん中の次数で割って x+1/x の式に

(詳細は拙著シリーズ 数学II 複素数と方程式 p. 54参照)

 

(2)は(1)からすると誘導が飛んでいますが、三角形の形状(原点なし)バージョンですので、こちらの原則が使えます。αを原点に持ってくるように平行移動しています。

 Principle Piece 

 三角形の形状(原点なし)→β-α、γ-αを置き換える

(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 複素数平面 p. 35参照)

例えば、αを原点に持ってくるように平行移動すれば、βはβーαに、γはγーαになります。主役交代で、これをs、tとでも置けば、残りβーγもs-tになります。ベクトルでいえば、ABベクトルとACベクトルを主役にしているだけで、発想としては当たり前です。

得られた式はs、tの同次式になります。同次式は比をとります。複素数平面の三角形の形状問題はほぼこれがセットです。

 ULTIMATE Principle Piece 

 同次式は比で置き換えると1文字減らせる

(詳細は拙著シリーズ 数学II 式と証明 p.65 参照)

これで(1)の方程式が得られますので、比がでます。複素数平面において比は極形式で表すことで、複素数平面上で2辺の比と夾角と読み替えられます。相似条件が決定する=三角形の形状が決定するということですね。

本問は解説動画があります。


※KATSUYAの解答時間は7:58です。最初なので波に乗ってくれという感じかな。でも差はつきそう。

 

☆第2問【数列と極限】漸化式と極限(C、35分、Lv.2)

漸化式で表された数列の極限で、初項に応じて収束・発散がどうか変わかを見る問題です。全部聞いてきているのでくどい部分もありますが、部分点はある程度取れます。最後は難しいかもです。

全体を通して、絶対値部分が正か負かがポイントになることが分かります。そこで負になることが一度でもあると、それ以降は0になるということです。

(1)はもうa_2=0となり、それ以降もずっと0です。

(2)はan>2が常に言えることが予想がつくと思います。すると、常に絶対値は同じ外れ方をするため、ただの4型の漸化式になりますので、等比型に帰着されます。

(3)から少し難易度上がりますが、まだ大丈夫でしょう。a_1が1~1.5の場合、a_2が1未満になります。1未満に1度でもなれば、その次からゼロになります。

(4)はa_1=1.9とかa_1=1.99とかでいくつか試すと、結局ゼロになることは分かると思いますが、説明するのが難しかったのではないでしょうか。2にどれだけ近かったとしても、その差が次々に広がっていくので、絶対値部分がいつか1を下回ると言えばOK。この手の問題は背理法がやりやすいです。

私は、2-α=βとおき、絶対値が正で外れる限りは、差のβがどんどん(公比2で)大きくなっていくことでいつかは1を下回るので、ずっと正で外れることはないという流れで述べました。

全く白紙は勿体ないので、とりあえず0になることだけでも適当に述べて逃げるのが正解だったかもですね。

 

※KATSUYAの解答時間は19:20です。(4)は慣れてないとキツイかも。受験生が嫌いそうな問題出してきたな。

 

☆第3問【ベクトル+整数】(C、35分、Lv.3)

ベクトルに関する等式を満たす整数が存在する条件を求める問題。最後の(3)は発想が必要で難しかったと思います。文系と一部共通ですが、理系の方がかなり難しいです。

(1)は、ただの1次独立であることの証明です。当たり前に近いため、意外とどう説明すべきか迷ったと思いますが、D=0だとm,nベクトルが平行なので、平行なベクトルしか表せないと言うのが良かったと思います。

あるいは、qベクトルを(x、y)とでもおいて実際にr、sを成分で表すと、連立方程式を解く過程でDで割ることになりますが、D=0だと特定の時しか成立しないと分かります。

(2)コツコツ計算するだけです。(2)は文系と共通。

(3)は(2)を利用するとr、sが比較的簡単に出せますが、直接で連立してもそこまで大変ではありません。そもそも、(1)のときに連立している人も多いハズ。そのr、sが常に整数になる条件です。分母にまたDが来ているので、おそらくD=±1だと予想はつくでしょうが、これも説明は難しかったかもです。

「すべての●●に対して」なので、特別な場合で成り立つことから必要条件を求め、それが十分でもあることを示すことに気づけるかどうかです。

 Principle Piece 

 任意の●で成立 → 必要条件から十分条件の流れ

(詳細は拙著シリーズ 数学I 論理と集合 p.33 参照)

単純なベクトルしては、q=(1,0)と(0,1)でしょう。すると、分子にa,b,c,dしか出てこないことが分かります。

ここからがもう一段階発想が必要。うまくかけ算して引くと分子もDに出来ますので、1/Dが整数となりますので、これでD=±1が必要となります。

「必要から十分」の流れは言われればという感じですが、うまく引き出せたかどうかです。難しいですね。

※KATSUYAの解答時間は25:59です。(3)で半分以上持ってかれてます。(1,0),(0,1)を代入すればいいことに気づけないとかなりキツイのでは。それとも他に方法あるのだろうか。

 

☆第4問 【微分法】条件を満たす関数の決定(C、45分、Lv.2)

昨年も第4問に数共テ数IIIバージョンのような問題が出ましたが、なんと今年も継続。これは継続される可能性が高そうです。

内容的には、加法定理のような性質を満たす関数は三角関数の他にどのようなものがあるのか、という問題です。誘導に従えば言っていることはそこまで難しいわけではないですが、最後は式変形が思いつかないとキツイと思います。

(1)はいいでしょう。x=y=0を入れてみれば分かります。「実数値関数」としっかり問題文にあるので、2乗は0以上であることを忘れずに。

(2)は、関数が具体的に何も与えられていないときの導関数ですから、導関数の定義で出します。

加法定理に類似した性質(A)、および(D)も使います。ここで、0=g(0)を持ち出せたかどうかです。微分係数の定義から、分子はf(h+●)ーf(●)のような形が欲しいですから、これを意識したいところ。ここは差がついたかもしれません。

(3)は(2)の証明が出来なくても、事実を利用することは出来ますので、それを利用すれば(2)ほど難しくはないです。単純に実部、虚部を計算するだけです。下線部②も使うと書いてあるので、微分してみようという発想になるでしょう。微分すると0になり、定数関数と分かりますので、0を代入すればOK。

(4)は(B)の証明は左辺と右辺にあてはめるだけなので、そこまで大したことはないですが、問題は(D)です。これがかなりキツイ。(2)と同様に導関数の定義に従うのですが、e^●の形が出てきてしまうので、ここで詰まった人が多いかと。

a^2f(x)-x^2f(a)/x-a のような式を変形するときに、同じ式a^2f(a)を足し引きして変形することをやったかと思いますが、この発想がまず必要。

 Principle Piece 

 同じ項を足し引きして強引に微分係数の定義式の形を

(詳細は拙著シリーズ 数学II 微分法 p.56 参照)

あとは何を足し引きするか。e^●絡みの極限は基本セット(4つ)があります。そのうちの1つ「e^●-1/●の極限が1になる」ことを思い出すと、e^●×f(0)を足し引きすれば、前後2項に分かれてうまくいくと分かります。

この要領で、(D)の証明は両方出来ますが、文字も繁雑で計算式も見づらく、そもそも発想も難しめなので捨て問でしょう。

最後のア、イは文章の事実を全部受けれればp(x)とq(x)がsinxとcosxなので、そこからfとgは出せます。(B)(D)の証明が全くできなくても答えだけは書いておいた方がいいでしょう。

※KATSUYAの解答時間は31:25です。A4の紙に無理やり書いてたら(4)がカオスに近くなったので書き直しました。

 

☆第5問 【微積分総合】媒介変数表示された曲線の概形(C、40分、Lv.2)

最後も微積分総合で、こちらはグラフ主体で、媒介変数表示された曲線と直線で囲まれた部分の面積を求めます。昨年も媒介変数系統の微積総合問題でした。

(1)は微分したうえで、dx/dt=0となるところになります。xの増減が変化するところは、接線がy軸に平行になります。なお、その前後でdy/dtの符号が一定であることは確認しておきましょう。同時に0になる場合は、接線はy軸に平行とは限りません。

(2)はx、yの変化表を書いてまず概形を書きます。面積に必要なのは交点ですので、x=yになる部分もおさえます。グラ今回はグラフを書くことで上下関係を押さえましょう。

積分方向ですが、xの方が増減して、yは増加し続けるので、y方向の方が早いでしょう。x方向でも出来ますが、計算が少し繁雑になるのと、t=7/12π(xの増減が変わるタイミング)で積分の式を変える必要があるのに注意。

y方向で積分する場合、媒介変数表示の面積は、まず∫xdyで書いておいて、積分区間、x、dyをtの式、dtの式に置き換えていきます。

 Principle Piece 

 媒介変数表示タイプの面積はまず∫ydx と書き、置換する

(詳細は拙著シリーズ 数学III 積分法(グラフ編) p.11 参照)

積分計算も昨年と似ていますね。三角関数の積分は、次数を1次に下げる和積や半角公式による変形が最優先。また、sin^3tの項のように、奇数乗は(cosの式)sintのように出来ますので、cosで置換しましょう。

 Principle Piece 

 三角関数の積分は次数を1次に下げてから

(詳細は拙著シリーズ 数学III 積分法(グラフ編) p.17 参照)


※KATSUYAの解答時間は28:20。去年も結構きつかったけど、今年も結構キツイ。受験生がとっつきやすいのは第1問とこの第5問ぐらい。この難易度で今後も来るんかな。。。

 

4.対策

頻出分野は、微積分、確率、整数で、ここに数B(ベクトルが多いかな)が絡みます。融合されていることが多いため、バランスが取れた出題と言えます。2021年は確率以外は全て出題されました。

これらの頻出分野の対策をしっかりしていれば、合格点は望めそうです。青チャートレベルの例題はしっかりマスターしましょう。公式の証明がたまに出ますので、基本から隅々まで見ておきましょう。

入試標準レベルまでこなしたら、過去問演習を行いましょう。九大の問題は独特な印象を受けますので、過去問を多く演習して、自分の中で傾向を掴んでいきましょう。単科長年タイプのものが効果的です。

今年のような難易度で出題されると厳しいものがありますが、誘導小問が多いので、特に取れるところをしっかりとる練習を、過去問できちんと時間を測って行いましょう。

 

 

量をこなす演習:じっくり演習=7:3ぐらいでしょう。

以上です^^

 

■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)

数学I Chapter2~論理と集合~ (第3問)

数学A Chapter3~整数~ (第3問)

数学II Chapter1~式と証明~ (第1問)

数学II Chapter2~複素数と方程式~ (第1問)

 

数学B・C Chapter1~数列~ (第2問)

数学B・C Chapter4~複素数平面~ (第1問)

数学III Chapter2~極限~ (第2問)

数学III Chapter3~微分法1~ (第4問)

数学III Chapter6~積分法(グラフ編)~ (第5問)

すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!

数学I・A ~原則のみ~

数学II~原則のみ~

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