早稲田大学 理工学部 数学 講評| 2024年大学入試数学

      2024/02/21

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●2024年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は早稲田大学(理工学部)です。


2024年大学入試(私大)シリーズ。

早稲田大学(理工学部)です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。

また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。

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本学部については動画でも解説しています。こちらもぜひご覧になってみて下さい。

早稲田大学(理工学部)
(試験時間120分、5問、記述式)

1.全体総評~題材は典型題だが計算が繁雑でやや難~

昨年よりやや難化しました。扱っている題材は昨年の方が高度で良問だったと思います。今年は比較的ありふれた問題が多く方針は立つんですが、全体的に計算が繁雑で時間がかかるセットだったと思います。

よく言えば、「数学が得意な人はこれでも去年ぐらい取れて、苦手だったり計算が遅いと点数が稼ぎにくい」ということで、差が付きやすいセット。試験としてはうまく機能しています。

分野的には複素数平面が出ずで、微積系が2問。あとはベクトル。そして、なんと確率と漸化式系統から2問。ちょっと偏ってますが、おおむねAB(←ベクトルはBの扱い)Ⅲが中心です。難関大あるあるですね。



試験時間120分に対し、標準回答時間は150分

2023年:133分

2022年:145分

2021年:130分

2020年:140分

2019年:145分

2018年:160分

2017年:160分

2016年:135分

2015年:150分

2014年:135分

2.合格ライン

(全科目の合格最低点は、55%~60%程度)

第1問は全体の中では穏やかな方なので、これは取りたい(とか偉そうなこと言えないんですけど(後述))。

第2問と第4問キー問題。どちらも、場合の数・確率が絡む漸化式。テーマ的に必ず差が付く。苦手だとどっちも完答出来ないけど、得意ならどっちも得点源。

第3問は(2)までは難しくないので、そこで逃げるのが正解だったかもです。いろんな意味で(こちらも後述)。

第5問はキー問題。勉強量が反映される一番オーソドックスな問題です。計算も適度に多く(いや、結構多いか)、時間を残していないと(3)は取れなかったかもです。

第1問は取る。第2問、第4問がどっちもダメなら、残りを本気で取るしかない。60%~65%ぐらいでしょうか。

 

3.各問の難易度

☆第1問 【微分法(応用)】円と接線、面積の最小値(B、25分、Lv.2)

円に接する接線とx軸、y軸で作られる三角形の面積が最小になるときに関する問題です。

設定はS+Tですが、もちろん半円加えて三角形として考えます。接点を動かすことで接線は変わるので、接点を媒介変数で置くのがいいでしょう。

三角関数という道具があるので、角度を変数に設定することで長さを表せます。逆はムリです(高校数学では)。なので、角度を設定する方がラクです。

あとはx切片とy切片さえ正しく出せれば、三角形の面積を微分するだけです。微分計算は比較的メンドウですが、最大になるタイミングが有名角になることで安心材料となるでしょう。

※なお、(結果的に)私は接線の傾きを凡ミスし、切片が汚くなったため、「え?これ微分すんの?1番から?嫌やねんけど^^;」となっていったん飛ばしました。そして、後から違う角度を設定してみたらラクだったので、勝手に、置く場所がまずかったと思っていました。(角度の設定について動画をご覧下さい。) いけるんですね^^;

ということで解答時間は24:53です。目標解答時間ギリギリ。しょぱなから慌ててますねぇ。。。

 

☆第2問【場合の数+数列】場合の数と漸化式(C、30分、Lv.2)

今年は5題中2題が、この場合の数・確率と漸化式の問題でした。そのうちの1つ。こっちの方が難しいと思います。

確率と漸化式系統の問題はとにかくこちらの3点セットです。

 Principle Piece 

 [1]n回目からn+1回目を詳しく

 [2]求める必要のないところも置く

 [3]和が1、対称性なども活用

(拙著シリーズ 数学B・C 数列 p.78)

設定はn桁の数のうち3で割れるもの、割れないものに関する問題ですが、これは迷わず遷移図を書きましょう。[2]の元sくは使うまでもなく、今回は与えられています。これで(1)はいいでしょう。

(2)は添え字をnまで下げれば、anとbnの係数が等しくなります。これは[3]の原則の出番です。確率同様、全部で何通りあるかは求められます。3^nです。なので、an+bn=3^n-cnと変えればcnだけに出来ますね。

(3)は(2)を利用しますが、ここで差が付きそう。(2)の結果を見て、2つ飛ばせば別の文字1つで表せるので、他の文字のそうなのだろうと思って欲しいところ。そこで、2つ飛ばす作業を3回行えば、文字がaに戻ってくるのではないかと見通しが立ちます。あとはカリカリ計算するだけです。うまくc→b→aと戻ってきますね。

(4)は、mが1つずれれば添え字は6つずれますので、そのまま(3)が利用できます。指数型漸化式ですね。係数のー27か、定数項にある3の累乗で割り、うまく添え字と合わせます。

 Principle Piece 

 漸化式6型(指数) q^n+1かp^n+1で割って4型か階差型へ

(4型やp、qなどの詳細は拙著シリーズ 数学B・C 数列 p.40)

私は階差型が嫌いなので、定数項の方で割ります。今回は3の6m+1乗(添え字の大きい方に合わせる)で割って4型に帰着すれば出来ますね。数値がややこしいですが、だいたい1/3ぐらいある(これは確率になります)ことがこの置き換えで分かるので、感覚とも合うので、正解と思えるでしょう。こういったところで検算するのもあります。

 

※KATSUYAの解答時間は18:00です。思ったより貯金作れてないけど、まあOK。4番ではまた作れるはず。最後は割合的には大丈夫そう。m=0で0になることも確認してOK。

☆第3問【空間図形】四面体と図形的性質、八面体の体積など(C、40分、Lv.3)

空間図形からです。問題文や与えられた条件などからベクトルにすることは見えるとは思います。早稲田理工はベクトルを出すなら空間が多いようです。

(1)がもうベクトル使ってね、の流れですね。各辺の中点で交わるだろうと予想が付きます。ワークにもありますよね。こんな問題。

(2)からは長さの条件式があるので、内積も導入しなければいけない、と考えます。証明としては、PS,QT,RUがすべて等しいことを示すことになります。

空間ベクトルで内積絡みは、基本6量の意識ですね。

 Principle Piece 

 空間における位置ベクトルは基本6量を準備

(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 空間ベクトル p.36)

まだ条件式が(イコールの数が)2つなので全然求められませんが、まずは条件式を基本6量で表します。すると、内積3つが同じ値と分かります。

逆にそれ以上のことは分からないですが、これで求められるはずなので、PS、QT,RUの長さの2乗を表してみましょう。分からない部分(長さの2乗)はすべて共通で、残りの内積はすべて等しいことから、同じ値になると分かります。

(3)は結構難しいです。まず、八面体が四面体全体の半分であることを見抜きます。(動画で図とともに説明してます)よって、四面体OABCを出すことに注力します。そのためには、基本6量が欲しいですね。

さらに条件が4つ増えました。これで全部求まるはずです。(2)の条件とPS⊥OAから、内積3種は全部a^2/2となります。あとはOB,OCベクトルの長さだけです。これもPS⊥BCとBC=kから出せます。OB,OCの長さと(2)の条件から、今回の四面体は4辺が等しいパタパタ四面体型(拙著の表現ですみません)と分かります。

パタパタ四面体ときたら、ベクトルを用いるよりも対称面に着目する原則がラクです。

 Principle Piece 

 パタパタ四面体は対称面に着目する

(詳細は拙著シリーズ 数学I 三角比 p.86)

対称面である三角形OASの面積×BCの長さk÷1/3で出せます。ベクトルでもいいですが、二等辺三角形ばかりなので、高さなども簡単に出せます。最後に半分にするのを忘れずに。

(4)は出題当時、「最大値はない」とXで話題になりました。私もそれに関するアニメーションをポストし、フォロワー数にしてはかなりのビューを得ました。

こちらが、そのポストになります。aが大きくなれば、八面体の体積はいくらでも大きくなります。従って、実際に「最大値はない」が答えになります。

※なお、早稲田大学からも「問題文の設定に不備があった」と声明があり、受験生への配慮がなされることになったようです。

ないことを証明するには、aがどんな値でも四面体が存在することに言及する必要があります。パタパタ四面体の場合は、対称面の三角形があれば四面体は存在しますので、それを示すといいでしょう。なお、存在どころか、長さの2乗の大小関係から、鋭角三角形として存在することまで言えます。

 

※KATSUYAの解答時間31:24。やっぱり(4)を見て、(3)間違えてるのかな?と私も思い、多少時間を溶かしていますが、残り時間との兼ね合いもあり「いや、合ってるはずや」と思って、なしと書きました。どこで引けるかが肝心です。

第4問【確率+数列】確率と漸化式(B、25分、Lv.2)

第2問と同様に、漸化式絡みの問題です。こちらの方がラクだと思いますが、数値がキタナイので計算を合わせられるかどうかで差が出そうです。

(1)は気を付けて書き出しましょう。

(2)ですが、今回は遷移図を書こうにも状態が多いので、このタイプならこちらの原則に従います。

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 直前によって制限を受ける→頭かお尻に着目して漸化式を作る

(詳細は拙著シリーズ 数学A~集合と場合の数~ p.55)

今回はどちらに着目してもOKですが、最初に勝つか負けるかで分けると分かりやすかったと思います。

(3)は隣接3交換漸化式の原則に従って変形するだけ。こっちは誘導あるんですね。(2番の最後はないのに)

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 漸化式8-1:等比型を2つ作って差をとる

(詳細は拙著シリーズ 数学A~集合と場合の数~ p.55)

(4)は(3)により計算しますが、αとβが汚いのでくれぐれも慎重に。配点はここが断トツで大きいと思うので、これはなんとか取りたいですね。

※KATSUYAの解答時間15:04。こっちは貯金結構できた。なんか見たことある答えやし、多分合ってるやろ。検算する気にはならなかった。

☆第5問【積分法(応用)】媒介変数表示の概形と回転体の体積(B、30分、Lv.2)

最後は微積分総合。いつも最後は微積総合ですね。今年は媒介変数表示のグラフ問題。九大や神戸大が最後に持ってくる印象が強いですが、早稲田も持ってきました。

内容的には非常にオーソドックスで、媒介変数に関する原則の習得と、計算力を見る意味で、試験としてもベンリなんですよね。

(1)(2)はtで微分して増減を調べて変化表を書けばOK。なお、(1)だけならcostの2次式とみなしてもOK。

(3)は回転体。媒介変数表示絡みの面積、体積の問題では、まずこちらの原則に従います。

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 媒介変数表示絡みの求積 まず∫y dxで表し、「y」「dx」「区間」をtに置換する

(詳細は拙著シリーズ 数学III~積分法(グラフ編)~ p.11)

今回はxとdyに置換します。また、折り返しがあるので、その部分は分けて式にしておきます。その際に曲線の名前も分けておくと最初の式を書きやすいです。

tに置換すると、区間は繋がります。これはほぼ確定なのですが、断りなしにつないだ区間を書くのはマズイので、この手順を踏みましょう。

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 媒介変数表示の面積・体積計算→置換で区間は繋がる

(詳細は拙著シリーズ 数学III~積分法(グラフ編)~ p.58)

三角関数の次数の高い式が出てきて計算はツライですが、sint×(cosの式)になることが見抜ければ第2置換積分も使えます。区間もー1~1となり、偶関数だけになるので計算量をうまく減らせます。

 Principle Piece 

 (sinの式)cosx、(cosの式)sinxは第2置換積分の利用

(詳細は拙著シリーズ 数学III~積分法(数式編)~ p.19)

計算量が多くてツライですが、方針がすぐに立つならぜひ完答したいです。取れない人も一定数いるはずなので。

 

なお、軌跡はカージオイド(縦向き)です(拙著シリーズ 数学III~積分法(グラフ編)~ お持ちなら例題28参照)。半径aの円の外を、同じ半径aの円が転がります。今回はa=1。そのときの回転体の体積が8/3πa^3であると知っていればこちらも検算可能ですが、さすがに覚えている人は少ないでしょうし、そもそもカージオイドだと見抜けないと無理ですね。

※KATSUYAの解答時間は23:58です。展開をミスってそうだったので、因数定理やらで元の式の因数になることなどを確認。ちょっと慎重になりすぎたかな。さて、1番に戻らないと。

4.対策

今年は5問中2問が数IIIですが、たぶん少ない方です。例年はこれに複素数平面が加わって3問の事が多いです。これに、確率とベクトル関連が多い印象です。また、「示せ」が割と好きですね。

IAIIBは2年生の段階で出来れば、原則習得段階まで終え、3年生のはじめぐらいには入試基礎演習も終えて、実践的な入試標準問題をたくさんこなしておきたいです。今年もそうですが、東大などで過去に出た問題の類題が出ますので、たくさんの大学入試問題にあたりたいです。

なお、拙著『Principle Piece』シリーズで原則を習得しておけば、早稲田理工レベルの問題でもかなり対応できます^^それは今回の記事を見ても分かりますよね。原則だらけです。

過去問はもちろんですが、国立と併願の場合は、国立の2次対策がそのまま対策になると思います。入試標準演習までは最低でも行い、より高得点をめざすなら仕上げ段階までいっておきたいですね。

量をこなす演習:じっくり演習=6:4~7:3ぐらいですね。

以上です^^

■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)

数学I Chapter4~三角比~ (第3問)

数学A Chapter2~確率~ (第4問)

数学A Chapter1~集合と場合の数~ (第2問)

数学B・C Chapter1~数列~ (第2問、第4問)

数学B・C Chapter3B~空間ベクトル~ (第3問)

数学B・C Chapter4~複素数平面~ (普段は出やすいので、載せておきます!)

数学III Chapter4~微分法2~ (第1問)

数学III Chapter6~積分法(グラフ編)~ (第5問)

すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!

数学I・A ~原則のみ~

数学II~原則のみ~

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※2023年末時点で販売中のもののみ記載しています。最新販売情報はこちらからどうぞ^^

 

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