慶應大学 薬学部 数学 講評 | 2024年大学入試数学
2024/10/19
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●2024年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は慶応大学(薬学部)です。
2024年大学入試(私大)シリーズ。
慶応大学(薬学部)です。
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。
したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。
※動画でも解説しています。ブログでは説明しにくい部分も説明しています(そのせいで長い^^;)ので、ぜひご覧ください。
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YouTubeチャンネルです 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を紹介していこうと思います。
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慶応大学(薬学部)
(試験時間80分、3問、穴埋め型)
※来年から数学は100分になります(2024/04/19 大学側より発表)。ご注意ください。
1.全体総評~予想通りでした~
昨年、一昔前の量の多かったころに戻すのか、というサブタイトルを付けましたが、その通りになってしまいました。悪い予想ほどよく当たる気がする(←あんま予想すんのやめようかな・・・)。昨年同様に量は多いままです。
1つ1つの問題の難易度はそこまで高くなく、原則をするだけで解ける問題がほとんどです。ただ、とにかく答えのキタナイ問題が多く、計算に時間がかかります。不安もあり、本番で実力が発揮しにくいセットです。
試験時間80分に対し、標準回答時間は160分【104分】
2023年は164分【109分】(←穴埋め考慮)
2022年は146分【100分】(←穴埋め考慮)
2021年は117分【78分】(←穴埋め考慮)
2020年は120分【82分】(←穴埋め考慮)
2019年は116分【74分】(←穴埋め考慮)
2018年は106分【71分】(←穴埋め考慮)
2017年は163分【110分】(←穴埋め考慮)
2016年は149分【97分】(←穴埋め考慮)
2015年は123分【82分】(←穴埋め考慮)
2.合格ライン
第1問:昨年から1つ減って小問が6つ。(1)(3)は絶対おさえ、(6)も取る。(4)と(5)は難しいかも。(2)はただの計算だが、速報の解答でミスしているサイトもあるぐらいなので、計算合うかどうかで合否を分けそう。
第2問はキー問題。(2)の(i)が出来るかどうか。これが出来れば(ii)は取れるので。
第3問は確率。残り時間的にも厳しい中で、情報量も多くMP(精神面)にダメージを追っている状況でどこまで取れるか。最後は文句なし捨て問ですが、それ以外は実は意外とラク。
毎年のことですが、第1問に時間をかけすぎないかどうかが大事。ある程度で逃げて、第2問で完答、第3問最後以外を取ればまずまず。6割ぐらいでしょうか。
3.各問の難易度
第1問(1)【数列】等差数列・等比数列(AB、 10分【7分】、Lv.1)
今年は最初に数列です。ワークにもあるタイプなので、おさえたい。
等差数列3項を並び替えると等比数列になるという問題です。
3項の場合は真ん中に着目して式を作りましょう。
(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 数列 p.14 参照)
等差数列は初項と公差があれば決定しますが、そのうち初項は分かっているので、未知数は公差1つだけです。今回の条件にあてはめれば、公差は出せるはずと思えますよね。
(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 数列 p.3 参照)
拙著では、こういった根本的な部分もしっかり言葉で明記しています。
なお、等差にも等比にもなる3項の比率は1:-2:4のときのみです。私はこれで勘で当てました。
公差が出れば一般項も和が負になるタイミングも出せます。
※KATSUYAの解答時間は2:18です。勘がうまく当たったのでラッキー。
☆第1問(2)【微分法】3次関数の係数決定、実数解の個数(AB、 18分【12分】、Lv.2)
微分法からで、極値条件などから係数を決定し、方程式の解の個数について聞いてきます。手法は基本ですが、計算がややこしい。検算などいろいろ学べます。
最初は係数決定。条件は2つに見えますが(2つに見えるように書いてある?)、条件は3つありますので、a,b,cは決まります。
極値条件はこちらの原則を意識します。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 微分法 p.22 参照)
(2)は方程式の解の個数ですが、文字定数が定数項だけなので定数分離がラクです。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 微分法 p.42 参照)
今回はx^3+x^2-5x+2の極値が答えになりますが、計算がまあまあメンドウ。どこかで見た速報サイトも間違っていました。
※間違えたことを責める意図はありません。速報を出すだけでもありがたいことです。プラスの方が大きい。むしろ責める人がいるなら、「じゃあお前が出してみろ」といいたいですね。文句を言うだけなら幼稚園児でも出来る。
それはさておき、3次関数ではこのようなことはしばしばあります。このようなときでも答えを確信できるための裏ワザ(検算方法)があります。動画で説明しましたので、ぜひ見てみて下さい。
ということで、私は自分が出した答えは合っていると確信しています。(数学ソフトでも確認済み)
※KATSUYAの解答時間は9:10です。最初の連立で計算ミスって、問題の条件に合わないな^^;って5分ぐらいロスしてます。
☆第1問(3)【図形と方程式】不等式成立と最大・最小(AB、12分【8分】、Lv.2)
不等式条件下での最大・最小の問題です。こちらは本セットで最も瞬時に方針が立ちそうな問題。
この原則一択ですね。(ちなみに、なんでか説明できますか?不明なら動画へどうぞ)
(詳細は拙著シリーズ 数学II 図形と方程式 p.64 理由も書いてあります)
そして、求めたい式を=kとおいて視覚化するところまでセットです。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 図形と方程式 p.65)
今回は=kとおくと、kが原点との距離の2乗になりますので、最も近いところ(接する点)と遠いところ((-8,0))を特定して終わりです。
なお、視覚化して求めるタイプの問題では、ある程度グラフは正確に書くことを強くおススメします。スケールをミスると、近いか遠いかを見間違えることもあります。
※ある程度正確にグラフを書くコツなども動画で説明しています。
※KATSUYAの解答時間は3:41です。これはラク。
☆第1問(4)【空間図形】ベクトルの長さ、角度の三角比(BC、25分【16分】、Lv.2)
空間図形の問題です。第1問の中では難しい方だと思います。設定がいろいろ意地悪(?)で、解法の選択をミスりやすくなっています。
ベクトル表記があるのでベクトルの問題に見えますが、実際はほぼ三角比の空間の問題です。座標とかを無視すれば。鉄塔の高さを求める問題のときの図に似てますよね?
これに気づくと、頭を切り替えて、次の原則で分かる長さをどんどん求められます。ベクトルの事は忘れます。
(詳細は拙著シリーズ 数学I 三角比 p.64)
△OABは1:2:√3の直角三角形ですから、3辺とも決まります。次に△ABCに乗り換えます。2角と1辺が分かっていればこちらもすべて出せます。これで最初のBCはOK。
△ABCのACが出たら、△OACに乗り換えて三平方の定理でOC^2も出ます。
最後のtanθは、tも相まってかなりうざいです。tも求まりますが、値がキタナイから聞いていないだけです。このあたりも解答しにくい原因になっていると思います。
三角形をさらに乗り換えて△OBCは3辺とも分かっている状態ですので、∠COBのcosは出せます。この角がθと等しいことに気づくかどうかもちょっと難しめ。座標からして、θがどこかの角度に視覚化されると思えないとキツイです。
なお、気づいてもさらにcosを2乗して相互関係に持ち込むので、計算は結構メンドウです。捨ててもよかったかもですね。
※KATUSYAの解答時間は9:02 です。どうにもベクトルではやりづらいな、と思えたのが逆に救いだった。
第1問(5)【整数】整数解、素数絡み(BC、25分【16分】、Lv.2)
今年も整数解を求める問題が出ました。KO薬は整数解求める問題好きです。左辺が因数分解出来るパターンも好きです。今年もそうでした。
左辺が因数分解出来るところまではいいと思いますが、あとは約数候補がどうなるか。pが素数のおかげで絞れはしますが、因数が3つある(←a-b、a+bまで分解した場合)ので結構多め。候補を絞る典型3パターンの原則が使えない確認です。
(詳細は拙著シリーズ 数学A 整数 p.46)
今回は、a+bが1より大きい正の数なので、pかp^2のどっちかです。それぞれの場合で、a-bが範囲的に2通りずつ考えられる(大小を利用)ので、4通りに絞れます。整数解問題で4通り。うん、しらみつぶしですよね。
見てると簡単そうですが、多分正答率低いと思います。本問も捨ててもよかったでしょう。
※KATUSYAの解答時間は9:10 実は上の思考にいたるまで悩んでます。候補めっちゃあるけどって困ってましたが、やはり原則が助けになりました。解説だけ見ると簡単にやってそうに見えますが。。。
☆第1問(6)【データ分析】和の範囲(B、15分【10分】、Lv.2)
最後はデータから。昨年の第3問に続き、今年もデータの分析の出題あり。薬のデータや患者のデータ等を題材にして、今後も出るような気がします。
今回のデータはかなり抽象的な問題です。こういう問題は差が付きやすい。普段から一般的なことを意識しているかどうかです。
私が教えているときは耳にタコができるほど聞かせていることですが、箱ひげ図や、それに現れる指標(中央値や四分位数など)だけでは、大したことは分からんってことです。
今回でいえば、最大値と中央値の間の値なんて、何も分からんってことです。みんな最大値6ばっかりかもしれないし、中央値3ばっかりかもしれんってこと。最小値も同様。
(1)も(2)もこれで解けます。
※KATSUYAの解答時間は3:20です。私が教えている子たちなら簡単やったやろうなぁ。しつこいぐらい言ってるからなぁ。
第2問【図形と式+積分】円と放物線が接する条件、面積(B、25分【16分】、Lv.2)
今年も図形と方程式に積分が絡んだ問題です。今年の方が文字が発想は要らないですが、計算はメンドウですね。
(1)は簡単ですね。Pをとって傾きを求めるだけです。
(2)の(i)は差がつくと思います。残していいのはθなので、先にθを使ってQの座標を表しておきます。放物線上にあることで1つ式が作れます。
もう一つは、その点の放物線の接線の傾きと、円の接線の傾きが一致することです。前者は微分で、後者は接線の公式で出します。これで式は2つできますから、a,bの連立で両方出ますね。
最後は(i)が出来れば出せます。係数も分数ばっかりで計算は相変わらずですが、放物線と直線なのでただの6分の公式がつ使えますね。
(詳細は拙著シリーズ 数学II 積分法 p.30 参照)
放物線の係数a=1/6をかけるのを忘れがちなので、気を付けて。ここまで出来ていたら勿体ない。図がある程度正確なら、面積がでかすぎると分かるはずです。
KATSUYAの解答時間は11:35です。今年の方がメンドウかな。去年はどっちかっていうと個人的に好きなタイプやっただけかな。
第3問【確率】ウイルス保有率、症状発生率、条件付確率など(BC、35分【20分】、Lv.2)
最後は確率です。昨年はデータですが、今年は確率を持ってきました。ここ最近3番は薬学部関連(?)の内容を題材にした問題が多いですね。確率は意表を突かれたかもですが。
今年も情報量が多く、見るからに計算もメンドそうな感じですが、実は10万人という母数の大きさが親切。これを使って、具体的な人数を出せば最後以外は比較的簡単に出せます。
なお、書いてなくても大きめ(0多めの)の数字で設定します。割合の分母に3とかあったら、30万人とかでやります。教え子によれば、学校の先生も教えてくれるやり方みたいですね。
拙著ではもちろん原則で明記しています。工場の不良品系の問題のときの原則です。
(詳細は拙著シリーズ 数学A 確率 p.35 参照)
書くとかなり長いので、詳しくは動画をご覧ください。(1)(2)はただの算数の問題だと分かります。
(3)は腹痛の話なので、10万人を一度整理しなおします。最初はただの反復試行の計算です。人数で整理する子にたどり着けば、ここまでは結構ラクです。
最後は条件付き確率。もちろんこちらの原則に従います。
(詳細は拙著シリーズ 数学A 確率 p.27 参照)
ですが、分子の計算がツライ。少なくとも1つがあるので、余事象を用いる原則も使います。
(詳細は拙著シリーズ 数学A 集合と場合の数 p.13 参照)
これを利用すると、分子は、「1人のみ腹痛」ー「1のみ腹痛かつ3人ともY非保有」です。後者は、腹痛の人はY非保有でないといけないことにも注意が必要。
計算も繁雑なので、制限時間が今の2倍ない限り捨て問でしょう。
※KATSUYAの解答時間は15:19です。去年よりかかってない。去年そんなめんどくさかったんや。あんまり覚えていないです。10万人という設定があるのがまだマシ。
4.対策~パターン問題を瞬時に見ぬき、素早く計算を~
見てお分かりの通り、原則が使える問題ばかりです。従って、まずは問題を見たらどの原則に当てはまる問題かを瞬時に見抜いて、すぐに手を動かせるぐらいの演習が必要です。そうでないと時間が足りません。
ここ最近は穏やかでしたが、また通常運転に戻りそうな流れです。これを見ている志望者は、間違いなく計算練習をしてくるでしょう。対策は難しい年のも含めて、「この難易度になる可能性もある」と思ってやっておいた方がいいでしょう。(2023年はまさにこれが当てはまりましたね)
レベル的には、原則習得、入試基礎レベルまででも7,8割対応出来ますが、レベルの高い重要例題でもすぐに方針が立つぐらいやり込んでおくべきです。
最終段階は入試標準レベルまで欲しいですが、ここが第一志望の場合は、過去問を長年分手に入れて過去問演習を多めにやり、時間配分の作戦などを早めに立てましょう。
なお、拙著「Principle Pieceシリーズ」であれば「原則習得」「入試基礎演習」の両方の段階を兼ねていますので、この後にもう入試標準演習の問題集に接続可能です^^
変な難問が出るわけではない(出ても捨てて問題なし)なので、Iの絶対値付き2次関数、A・II・Bを中心にまんべんなく量をこなしましょう。
量をこなす演習:じっくり演習=8:2ぐらいですね。
以上です^^
■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)■
数学I Chapter4~三角比~ (第1問(4))
数学A Chapter2~確率~ (第3問)
数学A Chapter3~整数~ (第1問(5))
数学II Chapter3~図形と式~ (第1問(3)、第2問)
数学II Chapter6~微分法~ (第1問(2))
数学II Chapter7~積分法~ (第2問)
数学B・C Chapter1~数列~ (第1問(1))
数学B・C Chapter3B~空間ベクトル~ (第1問(4))
※2023年末時点で販売中のもののみ記載しています。最新販売情報はこちらからどうぞ^^
■他年度の、本大学の入試数学■
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Principle Pieceシリーズの販売を再開しました^^ 原則習得のための参考書です。
YouTube開設しました。 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を紹介していこうと思います。
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