東京工業大学 数学 講評 |2024年度大学入試数学

   

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●2024年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は東京工業大学です。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです^^いよいよ、2次試験シーズンがやってきました。すでにお馴染みになってきたかもしれませんが、やっていきます。
2024年 大学入試数学の評価を書いていきます。

2024年大学入試(国公立)シリーズ。
東京工業大学です。

問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。
また☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。

また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。

※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。

したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。


同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。

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東工大は動画でも講評を行っています。内容は本エントリーとほぼ同じです。お好きな方をどうぞ^^

東京工業大学
(試験時間180分、5問、記述式)

1.全体総評~手が付けられる問題が増えてやや易化~

2022年、2023年と厳しいセットでしたが、今年は易化だと思います。計算量は相変わらず多いですが、小問に分かれている問題が多く、手が付けやすい問題が増えたと思います。小問の無い第5問も普段に比べるとラクでした。

内容的には数Ⅲがほぼ全問題に絡み、前半で微積、後半は極限と複素数平面です。として確率と漸化式が今年も出ましたが、今年のは去年よりムズイ。立体図形は出ませんでした。

試験時間180分に対し、標準回答時間は170分。めずらしく時間制限内ですね。

2023年:205分

2022年:230分

2020年:195分

2019年:225分

2018年:200分

2017年:200分

2016年:170分

2015年:195分

2014年:165分

2013年:175分

2012年:243分

2011年:330分(制限時間150分)

2010年:130分(制限時間150分)

2.合格ライン~今年は少し高めか~

第1問は今年は東工大としてはラクな方。これは押さえたい。

第2問は見慣れないかもしれないが、刻まれているので順番にやれば(3)までは割とすんなりいけるはず。(4)はこれまでの事実をうまく組み合わせるので、差がつくかも。

第3問はキー問題。がちの文字計算問題です。文字計算の煩雑さに負けずに出来たかどうかですね。

第4問は確率と漸化式でですが、今年は差はつかないと思います。(1)(2)は出来る人が多いでしょう。そして(3)はまず無理でしょう。方針があってても計算がかなりキツイ・・・

第5問は唯一の小問なしの問題で、意外とキー問題?虚数解のときの議論はあることに気づけばすぐだが・・・

第1問は確保。比較的マシなはず第5問も取りたい。第2問、第4問も最後以外は確保。これで6割ぐらいあるはず。第2問の最後の計算を完遂出来るか、第3問は(1)で計算が合えば全部確保できるはずなので勝ち確でしょう。今年は65%ぐらい欲しいところです。

3.各問の難易度

☆第1問【微分法の応用】条件を満たす点の軌跡上の点における接線(B,25分、Lv.2)

放物線とy軸の両方に接する円の中心の軌跡と、その軌跡のある点における接線の傾きを求める問題です。東工大にしては方針が立ちやすく、取りたい問題。放物線と円のネタは東大でも文理ともに出ています。

放物線と円が接するパターンは、単純な場合(中心も放物線もy軸上にあり、式処理オンリーで行ける場合)以外は、「接点から法線方向に半径分辿って中心へ」で解決します。(原則には入れてないけど、2024年だけで3回見てるし、追加してもいいかもなぁ^^;) 

今回は、半径をtとおくとx座標もtです。接点(a,a^2/2)から法線方向(-a,1)に長さtだけ行けばx成分はtになるはずです。これでtをaで表せます。そしたらy成分も出ますね。

先にy成分を特定する方法もあります。接線のy切片と接点までの距離は、y切片とy軸の接点までの距離と同じですので、y座標出して、y成分の方程式でtを出すという方法ですね。

前者の方法でやって、y成分はこの方法で検算というのもアリ。私はそうしました。

x,y成分がともにaで表されれば、(1)(2)ともに出せますね。軌跡の方程式等は聞かれていないので、aを消去する必要はありません。

※KATSUYAの解答時間は14:12です。東工大にしてはかなり標準的というか、典型的。まあ最初やしこんなもんかな。

☆第2問【微積分総合】関数方程式、弧長(BC、30分、Lv.3)

具体的に与えられていない2つの関数に関する関係式から、いろいろな値を求めたり証明する問題。ちょっと見た目で嫌な感じはしますが、小問に分かれており、誘導は丁寧なので難易度はそこまで高くないです。最後以外はたいしたことないので、欲しいところ。

(1)は素直に微分してみましょう。最初の関係式からただちに0と分かります。

(2)も言われた通りに微分してみます。1-g(t)^2なるものとf(t)^2なるものが出ます。(1)から、p(t)が定数関数であること、かつその値が1であることを見抜きたいですが、比較的分かりやすい形をしていので大丈夫でしょう。

(3)は(2)とg(0)からg(t)が決まり、極限も簡単に出せます。めっちゃ刻んできますね。

(4)は差がつくかも。これまでの事実や条件式を総動員します。弧長は公式通りまず書いてみましょう。するとp(t)が見えますので、f(t)^2だけ残ります。さらにこれを、関数の分かるg(t)の方に変え、1-g(t)^2と出来ます。具体的に計算していくと根号は外れます。被積分関数はe^tの分数式のようになりますね。

この手のタイプは、e^t=uとでも置き換えると見慣れた形になることが殆どです。

 Principle Piece 

 分母にe^xに関する式 → e^x=t と置換

(詳細は拙著シリーズ 数学III 積分法(数式編) p.82 参照)

出来た分数関数はいわゆるtan置換型(拙著では分数関数5型)ですね。

 

 Principle Piece 

 分数関数5型:x+●=▲tanθに置換する

(詳細は拙著シリーズ 数学III 積分法(数式編) p.39 参照。分数関数は体系的に収録してます!!)

これで被積分関数はかなり簡単になります。あとは区間。下端は0→e^0=1→θ=π/4と分かります。

上端ですね。Tがf(T)=g(T)を満たすので、p(t)=1と合わせて、g(T)^2=1/2です。T>0ですから、g(T)>0です。これでg(T)は確定し、e^Tも確定します。あとは、この値からθが67.5°であると見抜けるかどうかです。(もちろん記述なので半角等で示す)

やはり、三角関数は「準」有名角(15°系、18°系(sin、cosだけでOK)、22.5°系(tanだけでOK))も頭に入れておいた方がいいですね。難関大以上を志望するなら、解きながら頭に入れましょう。社会の一問一答のように覚えるのはおススメしません。忘れます。

(4)は手順が長いので差が付きそうですね。

※なお、(f(t),g(t))は単位円周上の一部を動きます。f(t)とg(t)の形から、上の置換 e^t=tanθによってあの例の式に帰着出来て、sin2θ、cos2θの形が見えると思います。

※KATSUYAの解答時間は20:55。(4)で14分ぐらい持ってかれた。方針書くだけでも長いので、実際に計算するとかなり長いです。

☆第3問【図形と式、極限】点列、面積と極限(BC、45分、Lv.2)

2本の直線を考え、その間を縦タテヨコに動きながら点列を作る問題。こちらも題材的には見かけるものですが、文字ばっかりで計算が相当キツイ(2024年の中で一番キツかったかも)。(1)さえ合えば(2)も(3)も合うので、ガチで計算力が物を言う問題。

最初で最後の関門の(1)。コツコツやるしかありません。Cnの座標を設定し→An→Cn+1とすれば、漸化式が作れます。文字ばっかりでかなりきついですが、y座標の方について出来る漸化式はただの4型ですので、特性方程式を作って頑張って一般項を出すしかありません。移動が縦方向と横方向だけなので、1つでも出れば芋づる式にすべて出せます。

式も複雑すぎて、合ってるかどうかも不安ですが、a=1、b=2とかでも入れて検算するしかありません。私も途中で1度ミスってることが分かり、全部見直して修正しました。

K塾さんの解法はうまいと思います。確かに、図形を一定の規則で描いていくので、うまく等比数列を見つけるという原則に忠実に従っています。

 Principle Piece 

 図形と級数の問題は相似(等比)的に変化する可能性大

(詳細は拙著シリーズ 数学III 極限 p.24 参照)

解いているときは直線の交点として出すことしか頭が回っていませんでしたが、これが楽でしょう。

大変な(1)が出来れば、(2)と(3)はそんなに複雑な計算ではありませんので、(1)が出来た人へのご褒美ということでしょう。


※KATSUYAの解答時間は30:10です。(1)途中でミスったときは1回捨てようかと思ったけど、まだそんなに時間使ってないし、見直しました。キツかった。(3)はAnの極限がkとlの交点になることで確かめて終了。今年は制限時間を考えると余裕があるから、これが合否分けるかも・・・

☆第4問【確率+数列】確率と漸化式(D、50分、Lv.3)

昨年に引きづ付き、確率と漸化式からの出題です。(1)(2)は東工大にしてはやさしめですが、(3)はmを固定した状態で、その中で漸化式を作ることに気づかないと困難で、かなり厳しいと思います。おそらく多くの人が(2)どまりで、差はつかないでしょう。

(1)(2)はこちらの原則に従えば簡単に求めることが出来ます。いつも通り3点原則セットです。

 Principle Piece 

 確率と漸化式 原則3点セット  [1] n回目とn+1回目の遷移

[2] 求める必要のない部分も文字で  [3] 和が1、対称性も活かす

(詳細は拙著シリーズ 数学B・C 数列 p.78 参照)

どちらも状態は偶数回、奇数回しかないので、遷移図を書くまでもなく簡単に漸化式は立てられます。(1)は4型、(2)はnも絡みますが、拙著でいう10型です。nやn+●などを両辺にかけたり割ったりして、うまく1ズレを作ります。

 Principle Piece 

 漸化式10型:両辺にn+●をかける or 割る

(拙著シリーズ 数学B・C 数列 p.51 参照 どういうときにかけるべきか割るべきかなども詳細に書いてます)

(3)は本セット断トツの最難問でしょう。同じように考えると、Z(3m)→Z(3m+3)とやりたくなりますが、mを動かすと、硬貨の確率が最初から全部変わります。これが本問を難しくしています。

ですので、mを固定したうえで、1~m、m+1~2m、2m+1~3mでそれぞれ奇数枚出る確率を同じように漸化式で求め(ただしmは固定し、kなどを新たにおいて漸化式を作る。多分ここが難しい)、それを組み合わせて確率を求めます。(ここも計算がかなり煩雑で、かつうまく式変形するのは発想がいる。1/2を足し引きするという発想がないと進まない)

すなおに(1)のように漸化式を作る方法もありますが、そのときもmを固定し、3k→3k+3として(k=1,2,・・・m-1)漸化式を作ります(そうでないと、硬貨で表が出る確率が変わるので)。すると4型になりますが、特性方程式の解の部分がマジでえぐくなります(因数分解までこぎつけるかどうか)が、発想は不要です。

その形にたどり着けば、あとはe絡みの極限のパターンだと分かります。基本4パターンを意識ですね。

 Principle Piece 

 eの定義絡みの基本パターン4つ

(拙著シリーズ 数学Ⅲ 微分法1 p.47 参照 詳細な式は本書をご覧ください)

もっとスマートにやる方法もありますが、とても思いつく方法ではありませんので、詳しくは述べません。述べちゃうと「そんなのもやらないとダメなの?」と思われてそれに時間を割く受験生が出そうなので。やらなくてOK(優先順位は超低い)です。

※高校数学を超える内容や背景を利用してスマートに解くことを自慢げにXにポストする人はいますが、そういうものに魅かれるのは極めて危険です。現時点(新高3時点)で合計の模試判定が余裕でA判定(数学以外もすでに余裕な実力の人ってことです)ぐらいの人ならまあいいと思いますが、そうでないなら、そういったものに手を出すのはマジで危険です。まずやるべきは、どの科目も最低限の基礎力を身に着けることです。受験科目は数学だけではないことを今一度思い出して!

※KATSUYAの解答時間は32:22です。(1)(2)はほぼ瞬殺で、(3)は最初私もmを動かしてしまい、「いや、前の硬貨にもえいきょうするからダメだ」となり、m固定で上記青字の方法でやりました。これはエグイ。捨て問ですね・・・^^;

☆第5問【複素数(平面)と方程式+(整数?)】解がすべて1の乗根となる2次方程式(B、20分、Lv.2)

最後は複素数と方程式(複素数平面)からで、解がすべて1のn乗根になるような2次方程式を考える問題。小問に分かれてない唯一の問題ですが、おそらくこれが一番簡単。

絶対値が1になることは確定ですから、実数だろうが虚数だろうが解は複素数平面上の単位円周上です。解と係数の関係から、解の和は-aですから、aは-2~2まで絞れます。

虚数解なら解は共役なのでb=1も決まりますし、実数解なら1の重解、-1の重解、±1ですね。後は実際に解がn乗根になっていることを確認しましょう。全部当てはまるはずです。

※KATSUYAの解答時間12:11。第4問で結構時間食ったから終わるか不安でしたが、肩透かしでした。なんで最後が簡単なんや^^;

4.対策~論証力、段階を踏んで解決していく能力が必要~

例年の傾向だと、数IIIからは微積(2問)+複素数平面、整数、確率、空間ベクトルあたりから5問です。今年は空間ベクトルはなく、図形からの出題でしたね。確率と漸化式は2年連続。

東工大の問題は、普通なら小問になっているようなものを自分で見つけ出し、自分でそれを解くという作業を行わなければいけません。

なので、原則習得段階では、とにかく自分で問題と解法を両方思い出せるような状態になっておく必要があります。(数値とかまで完全に覚える必要はないです。初見問題の際に、ああ、似たような問題文のものがチャートのこの辺にあったなぁ、、、そんときってこうやって解いたよなぁ。ぐらいでOK)

その後の入試基礎演習入試標準演習の際にも、似たような問題と解法は常に見比べるようにしましょう。したがって、同じレベルの問題でも1冊だけ行うのではなく、複数行ったほうが解法の幅が広がると思います。

なお、拙著『Principle Piece』シリーズであれば、初習段階、原則習得段階はもちろん、入試基礎演習まで1冊で済ませられます^^

2018年の第5問のようなこと(ネタが同じ問題を11年越しに出題)が今後、起きないとは限りません。また、複素数平面は2005年以前のものでないと演習できないので、これらも10年分ぐらいチェックしておいてください。最新年から、20年分ぐらいはチェックしておきたいですね^^。

東工大の数学は単科長年のものがありますので、実力がUPしてきたらそちらで演習してもいいでしょう。

初期は、量をこなす演習:じっくり演習=8:2ぐらいがいいですが、少しずつじっくり演習にシフトすべきです。受験後期(秋以降)には、逆に試行錯誤を多めにし、4:6でもいいぐらいです。

以上です^^

■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)

数学A Chapter2~確率~ (第4問)

数学A Chapter3~整数~ (第5問?)

数学B・C Chapter1~数列~ (第4問)

数学B・C Chapter4~複素数平面~ (第5問)

数学III Chapter2~極限~ (第3問)

数学III Chapter4~微分法2~ (第1問)

数学III Chapter5~積分法(数式編)~ (第2問)

数学III Chapter6~積分法(グラフ編)~ (第2問)

 

すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!

数学I・A ~原則のみ~

数学II~原則のみ~

数学B・C~原則のみ~

数学III~原則のみ~

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